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コンパクトだけど頼もしくてやさしい!ルノーのMTモデル「トゥインゴS」試乗記

2020.05.16

 マニュアルトランスミッション(MT)のクルマは、今や絶滅危惧種といってもいい存在だ。それをルノージャポンは、最もコンパクトな「トゥインゴ」の、ほぼほぼスタンダードなモデルに“あえて”導入した。つまり、サスペンションやタイヤなどがスポーティーに仕上げられているモデルゆえ、MTを採用したのではない。車名の「トゥインゴS」の“S”にスポーツモデルという意味を持たせているわけではないという。

 が、やってることがニクい。エンジンの排気量は、スタンダートの897cc 3気筒ターボから1ℓ 3気筒自然吸気となり、92PS/135Nmから73PS/95Nmと、数値的にはパワーもトルクもダウンした。一方で、車重は50kg軽くなって950kgと、より軽量なボディーを速さやトルクを自らのシフト操作で増減させれば……。実際にカタログスペックも忘れる愉しさが得られた。

走りで仕立ての良さを味わえるクルマ

 このモデルで3代目となる「トゥインゴ」は、2014年に日本市場に導入。ボディーサイズは全長3645mm×全幅1650mm×全高1545mm、ホイールベースは2490mm。車重950〜1040kg。これは、例えばホンダの新型「フィット(FF)」とボディーサイズは近いが、「トゥインゴ」のほうがやや小ぶりだ。しかも、最小回転半径4.3mは、軽自動車並みだ。日本でも極めて扱いやすいコンパクトカーであることは間違いない。

 室内の広さも後席スペースを含め、ボディーサイズを有意義に使えるが、ラゲージは少々狭く、さらに特徴的だ。「トゥインゴ」はリヤエンジン/リヤ駆動(RR)方式を採用。ラゲージ下にエンジンが搭載されており、もちろん専用の遮断フォームで覆われてはいるものの、少々温かくなりやすい傾向がある。しかし、後席を含むスペースはアレンジ可能。ユニークな走行性能を持つコンパクトモデルは貴重であり、そのくらいのことは目をつぶろうという方々からATモデルは老若男女問わず支持されている。

 そもそも「トゥインゴ」の仕立ての良さが、この仕様をより魅力的にしているともいえる。まずは、内外装のデザインと品質。外装はコンパクトなボディーを実にコンパクトに見せて、他とは異なる個性と力強さも併せ持つ。ボディーカラーにもこだわれば、ますますこのコンパクトな「トゥインゴ」を積極的に選ぶ価値も上がりそうだ。

 インテリアは決して凝ってはいない。必要十分な装備は搭載されているが、オーディオ関係は自分のスマホを使って、Apple CarPlayやAndroid Auto内のナビや音楽、通話機能などを使用。これは「トゥインゴ」だからというわけではなく、フランス車の中でも大衆車系はとくにナビゲーションシステムが普及する前にスマホを活用するスタイルが一般化している。そこで、センターパネルの下には、USBポートが2つ、AUX入力が1つ、備えられている。

 極めてミニマルなインテリアとして用意されている前席は、個人的に“バーバーパパ”シェイプと呼ばせていただきたい。その一体感とサポートは十分であり、ポジションもとりやすい。後席はシンプルなラブソファーのようだ。参考までに、後席足元スペースも想像以上に保たれている。シートのファブリックもトリムの樹脂パーツ使いも、少しも高級とは言えないけれど、気取らないオシャレ感はもう彼らのセンスとしか言いようがない。

 例えば、シートはベースにライトグレー、縁取りにグレー、背面にダークグレーを使い、その色や配分、素材が生み出すバランスと良品ぶりだ。そして室内のムードが作る世界観は絶妙。輸入車選びの醍醐味がココだと思う。だから、フランス車がいいとか、ルノーのクルマを選びたいとか、「トゥインゴで」ではなく「トゥインゴを」買おうとか、固有名詞をつけて選びたくなるのではないだろうか。

 そして、仕立ての良さを走りで味わう。今や多くのクルマの、特にコンパクト系の駆動方式はFF(前輪駆動)だ。なのに、このクルマはあえてRRを採用し、「トゥインゴS」はさらに5MTを採用している。ちょっとマニアックな紹介を加えておくと、サスペンションはベースモデル同様、フロントはマクファーソンストラット式、リヤはド・デオン式(軽量とタイヤの路面追従性がメリット)を装着。ブレーキ性能含め、スペック的に不足はない。

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