土用の丑の日にはうなぎを食べるのが習わしですが、うなぎ以外にも風情を満喫できる身近な食材がたくさんあります。土用の丑の日にふさわしいメニューでパワーを充電して、盛夏もエネルギッシュに乗り越えましょう。
土用の丑の日とは?
土用の丑の日といえば『夏ごろにうなぎを食べる日』として広く知られていますが、実は夏以外にも存在します。本来の土用の丑の日とはどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
土用は二十四節季のうちの一つ
土用とは、二十四節気の四立である『立春』『立夏』『立秋』『立冬』の前18日間もしくは19日間のことです。例えば、2019年は立秋が8月8日なので、その前の7月20日~8月7日が『夏の土用』に当たります。
「土用の丑の日に当たる『日』はいつ?」という疑問を解決してくれるのが十二支の『丑』です。十二支といえば干支のイメージがありますが、日にちを数えるためにも用いられています。12日周期で十二支が割り振られており、土用の期間中に丑の日に当たる日が土用の丑の日です。
うなぎを食べる理由
季節の変わり目には、古くから伝わる風習があります。夏の土用は梅雨明け時期に当たることから、衣類や調度品などの湿気をとるために『土用の虫干し』が行われるようになりました。
土用の丑の日にうなぎを食べるようになった理由は諸説あります。一つは、江戸時代に平賀源内がうなぎ屋の広告として考案したのが発端という説です。他にも、万葉集で大伴家持が友人にうなぎをすすめる歌があり、古くから注目されてきた食材であることがうかがえます。
土用の丑の日に食べたいうなぎ以外の食材
土用の丑の日にはうなぎを食べるのが定番ですが、うなぎ以外にも風情を感じられる食材がたくさんあります。梅雨明けの土用の丑の日にぴったりな食材を取り入れて、暑い夏もハツラツと乗り切りましょう。
頭文字に「う」の付くものを食べよう
土用の丑の日に食べるものといえばうなぎが定番です。しかし中には高価な食材とあって手が出しにくいと感じる人や、単純に味が苦手な人もいるでしょう。
土用の丑の日にちなんだ食材は、うなぎだけではありません。うなぎ以外にも「う」の付く食べ物を食べて英気を養い、無病息災を祈願してきた歴史があります。
身近な「う」の付く食材として挙げられるのは、すいかやきゅうりなどの「瓜」類です。おなかも心も満たしてくれる宇治金時やういろうといった甘いスイーツを味わってもよいでしょう。
食欲アップに効果的「梅干し」
梅干しも土用の丑の日に食べたいものの一つです。梅雨が明けて天気がよくなってきた時期に、梅を天日干しすることを『土用干し』といいます。「木火土金水」のすべての気を入れるために土用の時期に干す説もあり、梅干しは土用と縁が深い食材です。
『梅はその日の難逃れ』といって、朝食べるとその日の難を逃れることができるという古くから伝わることわざもあります。梅干しで食欲に火を付けて、元気に夏を乗り越えるパワーをチャージしてはいかがでしょうか。
消化が早く胃腸に優しい「うどん」
疲れているときにもスルッと食べられるうどんも、土用の丑の日にぴったりです。うどんはモチモチした弾力とは裏腹に、麺類の中でも消化が早いとされています。
スムーズに消化できる秘密は『油』の有無です。中華麺やそうめんは油が使われているのに対し、うどんは油を一切含んでいません。
ただし、よく噛まずに飲み込んでしまうと消化が遅くなってしまいます。うどんに限らずしっかり噛んで食べることを心がけて、暑さに負けない体を目指しましょう。
土用餅や土用しじみ、土用卵もおすすめ
土用の丑の日らしい1日を過ごしたいなら、「土用」の名が付く食べ物をチェックしてみましょう。
夏の土用につく餅である土用餅は、デザートにもってこいです。夏の悪病災難を退けるために、江戸時代から親しまれてきたとされています。
夏が旬の土用しじみも有名です。『土用しじみは腹薬』という言葉もあるように、昔の人もしじみから栄養を補給していたのでしょう。土用に産み落とされた卵である土用卵も、うなぎと同様に精がつく食材として食べられてきた歴史があります。
うなぎの「代用魚」の人気も拡大中
年々存在感を増しているのが、うなぎの代わりに食べる魚や加工品です。うなぎよりもリーズナブルで気軽に食べられるだけでなく、絶滅危惧のうなぎを守ることにもつながります。本物さながらの味を再現した蒲焼きも要チェックです。
代用魚が注目されるワケ
近年では、うなぎの代用魚が注目を集めています。代用魚とは、もともと食べられてきた魚と味が似ており、代用できる魚介類のことです。うなぎの代用魚には、アナゴやパンガシウスなどが挙げられます。
代用魚を採用する理由は、資源の保護です。うなぎの稚魚の漁獲量が減少しており、価格が高騰し続けています。14年にはニホンウナギが絶滅危惧種に指定され、存亡が危ぶまれているのが現状です。
参考:限りある資源を大切に、食品ロスからウナギを守る取組|消費者庁
うなぎ以外の蒲焼きを代替品に
うなぎ以外の食材を蒲焼きにして、土用の丑の日を満喫する人も増えています。うなぎと味が似ている『なまず』は蒲焼きにぴったりです。うなぎの池入れ数が減ったことで、代わりになまずの養殖を始めた生産者もいます。
SNSでは、食品加工技術を使ってうなぎの蒲焼きを模した『ウナカマ』が話題です。味や口の中でほぐれる食感だけでなく、皮や表面の凹凸も再現されています。
構成/編集部