社会人になると、人とのお付き合いにはさまざまなマナーが伴います。そこで、お中元を初めて贈るときにも困らない、贈る時期やマナーについて解説します。また、お中元におすすめのアイテムや、お礼状の文例も知っておくと何かと便利でしょう。
そもそもお中元とは
子どものころ、夏になると、両親の職場関係や親戚などからギフトがたくさん届いてワクワクした経験がある人も多いはずです。
お中元とは、日ごろからお世話になっている人に贈る夏のギフトです。「いつもありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」という気持ちを伝えます。
近年はお中元の習慣も減少傾向にあるようです。それでもいざ新社会人となったり、結婚して世帯主になったりするときには、自分が贈ったり贈られたりする機会も十分考えられます。
社会人として、マナーを知っておくためにも、まずお中元のルーツとお歳暮との違いを見てみましょう。
お中元の起源
お中元のルーツは中国にあり、もとは道教においてさまざまな罪が許される『贖罪(しょくざい)の日』でした。その後、仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と結びつき、『先祖を崇拝する日』へと変化したとされます。
日本では、先祖供養と併せて、この日に親類縁者へお供え物を配るようになり、そこから現在のような『日ごろお世話になっている人へ感謝を込めて贈り物をする』形へと変遷するのです。
お歳暮との違い
お中元もお歳暮も、『感謝の気持ちを品物に託して贈る』という点は共通していますが、贈る時期・由来・目的が異なります。
お中元は、上記の通り中国の道教・仏教の行事にルーツをたどれます。贈る時期は夏であり、目的は1年のうち『上半期』の感謝の気持ちを贈ることです。
対して、お歳暮は日本古来の神道行事『御霊祭(ごりょうまつり・みたままつり)』に由来するといわれます。『御霊祭』とは、年の暮れから正月にかけて行われる、先祖の霊をまつる行事です。
そのため、贈る時期は冬であり、『1年間』の感謝を伝えることが目的とされます。
お中元を贈るのはいつからいつまで?
一口に夏と言っても、地域によって贈る時期が異なります。
近年では時期を早めて7月上旬に贈ることが標準化されつつあるようです。しかしながら、伝統を重んじる地域や家族、また年配者に贈る場合などは、やはり現地の風習にのっとる方が無難でしょう。
エリア別での贈答期間を見ていきます。
関東・東北などの例
関東・東北地方では、7月上旬から15日までの2週間に贈るのが一般的とされます。中には少し早めに6月下旬に贈る人もいるようです。
北陸では、エリアによって贈る時期が異なります。石川県金沢市などの都市部や新潟県では7月上旬から15日、石川県の能登地方や富山県では7月15日から8月15日か16日となっています。
贈り先の慣習を調べることが大切ですが、迷う場合にはどちらにも該当する7月15日に配送日指定をするとよいでしょう。
北海道・関西・九州などの例
北海道および東海・関西・中国・四国の各地方では、7月15日から8月15日の期間に贈るのが一般的です。
ただし東海地方では、静岡県や愛知県の都市部など慣習が異なる地域もあるため、事前に確認することをおすすめします。
九州は8月1日から8月15日と、比較的ゆっくりになっています。沖縄は旧暦のお盆に贈るという独特の風習で、期間が毎年変わるため注意が必要です。
おすすめの贈答品は?
お中元として贈るのに人気の高い商品について紹介します。夏の贈り物なので、やはり季節を感じさせるアイテムがよく選ばれているようです。
夏らしさを感じさせるもの
もともとは先祖へのお供え物だったというルーツも関係するのか、やはり食べ物が人気です。
普段自分ではなかなか買わないような、高級感のあるブランドそうめんや、メロン・ぶどう・桃・スイカといった新鮮な果物は、誰にでも喜ばれるオールマイティな贈り物でしょう。
土用丑の日に頃合いを合わせたウナギや、手間いらずでおつまみにもピッタリのハム・ソーセージなども、家族みんなで楽しめるおすすめアイテムです。
アイスクリーム・ゼリーなどのデザートは、見た目も涼しい上、子どものいる家庭では大歓迎されるに違いありません。
ビール、ジュースなどの飲み物
暑い季節には、ドリンク類の消費量がグッと高くなります。ジュース類やビールも常に人気の王道商品といえるでしょう。
子どもがいる家庭であれば、優しい味わいの乳酸菌飲料やハチミツ系のジュース、健康重視派には、デザートビネガーやオーガニックの果汁100%ジュースなど、幅広い選択肢があります。
お酒好きな人には、いくつかの銘柄が飲み比べできるビール詰め合わせセットや、近年人気のクラフトビールなども喜ばれるでしょう。
お中元を贈る際のマナー
初めてお中元を贈る場合には、知らずにマナー違反をしていたということもありがちです。相手に失礼のないよう注意しましょう。
ここでは、贈る際に心掛けたいことと、お中元の相場についてまとめました。
相手の好みを考慮する
何を贈るかという選択肢はたくさんありますが、せっかくなら相手に喜んでもらいたいものです。相手の好みなどをリサーチして、できるだけ取り入れましょう。
個人宛ての場合は、何人家族か、子どもはいるかなど家族構成も考慮するとなお良しです。
例えばお酒を飲まない人にビールを贈ったり、夫婦2人の世帯にもかかわらず日持ちのしない生鮮食品を大量に贈ったりなどすると、ありがた迷惑にもなりかねません。
相手の情報がない場合には、オリーブオイルなどの調味料や、タオル・洗剤といった消耗品などが無難でしょう。あるいは先方が好きなものを選べるカタログギフトも一つの手です。
金額の相場は?
一般的には、3000~5000円程度と言われますが、特にお世話になった人や仕事絡みで贈る場合は3000~1万円と、状況や相手によって変わることもあります。
あまり高価すぎるものは、もらう方も困惑する場合があるため、注意が必要です。
さらに言えば、お中元は、通常は1回限りではなく毎年贈り続けるものです。理由もなく毎年の金額を大幅に変えたり、去年より低価格の商品を贈ったりすることはマナーに反するとみなされます。
長くお付き合いを続けるためにも、過剰な予算は避けて無理のない範囲で選びましょう。
お中元を頂いた際のマナー
今度は逆にお中元を受け取る側のマナーについてです。贈り物をもらうことはうれしいものですが、やはり気になるのは『お返しをすべきかどうか』という点ではないでしょうか。
また、お礼状の書き方についても知っておくと何かと心強いものです。お中元を頂いた際のマナーも覚えておきましょう。
お返しについて
職場の部下や学生時代の後輩など、目下の人からもらった場合にはお返しは必要ありません。ただし、品物を受け取った報告とお礼は必要です。
親しい間柄なら電話やメールもありですが、やはり別途お礼状も送ることが正式なマナーです。ギフトを受け取り、できれば3日以内、遅くとも1週間以内に先方に届くようにしましょう。
家族や友人、仕事関係、普段お世話になっている人などからもらった場合には、同額程度のものをお返しします。その際にお礼状も同封するとスマートです。
お返しとして、受け取った品物よりも高額なものを贈ることは、「もうお中元はいりません」という意味合いになるため避けましょう。
お礼状の書き方
親戚・友人・目上の人・取引先など、TPOに合わせて文体の硬さを選びます。特に仕事絡みでは、『拝啓・敬具』の挿入といったビジネスマナーを普段から覚えておくと便利です。
時候のあいさつは、お礼状を送る時期によって『暑中お見舞い』『残暑お見舞い』で使い分けましょう。
以下に、お中元に対するお礼状の例文を紹介します。
『暑中お見舞い申し上げます。暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
このたびは素晴らしいメロンを送っていただき、本当にありがとうございました。
5歳になる長女も大喜びで、家族みんなでおいしく頂きました。
これから暑さ本番です。どうぞご自愛下さいませ。 お礼のみにて失礼いたします。
令和〇〇年 盛夏』
構成/編集部