キャデラックの新型SUV「XT5」は、2019年のデトロイトモーターショーで公開されたラグジュアリーな都会派SUVだ。日本へは2020年1月から販売を開始している。特徴はキャデラックのプレミアムセダンと同じイメージのボディデザインであること。最新モデルは「プレミアム」と「プラチナム・スポーツ」の2グレードで、それぞれ個性を強調したフロントグリルや専用装備を与えられている。「プラチナム・スポーツ」はアルミスポーツペダルやパドルシフト、スポーツチューンドAWD、アダプティブダンピングサスも搭載している。
メーカー希望小売価格は「プレミアム」650万円、「プラチナ・スポーツ」785万円。ボディサイズや装備の上級感を考えると割安感すら覚える価格設定といえる。エンジンはV6、DOHC、3.65Lで、314ps、368Nmを得ている。組み合わされる変速機は、19年式の8速ATから新設計の9速式に改められ、V6パワーが必要ない時は2気筒を休止するアクティブフューエルマネージメントも採用された。
余裕たっぷりの居住空間
ボディサイズは全長4825mm、全幅1915mm、全高1700mm、ホイールベース2860mm。本誌でも書いたが、国産SUVと比較すると全長はトヨタランドクルーザープラドと同じ。全幅はXT5のほうが30mm大きく、全高は150mm低いというプロポーション。日本の道でも扱いにくいサイズではない。
着座位置も前席は高めで、三角窓もあり、ナナメ前方の死角が少ない。後席も着座位置が高く、床面もフラットなので、大人3人掛けもできる。頭上のスペースも十分で、身長170cmクラスの3人掛けも窮屈ではない。頭上は標準装備のパノラミック電動ガラスルーフが後席まで拡がる。電動のサンシェード付だが日本の夏にはちょっと暑そうだ。
後席は6対4で分割可倒するが、背もたれを前倒しすると座面も前方にスライドして低くなるスライドダウン式。床面の広い荷室になる。荷室は奥行、左右幅とも1m以上確保されている。床下のサブトランクもある。
力強く安定感も抜群の走行性能
9速ATに組み合わされるドライブモードはツーリング、AWD、スポーツ、オフロードの4モード。ツーリングは2WD(FF)だ。ツーリングモードで走行すると直進時からのハンドル操作やコーナリング中にややFF車らしい直進性の強さを感じる。一方、スポーツとAWDモードでは前後のトルク配分を0:100から100:0まで瞬時に配分するトルクペクタリングAWDシステムを採用している。滑りやすい路面でも安定感があり、コーナーでは後輪外側輪にトルクを分配するのでコーナリング能力が向上する効果がある。
実際に濡れたワインディングではハンドルを切ったときの安定感に違いがあった。アメリカ車、高級ブランドのキャデラックのSUVだが、その走りの性能はかなりレベルが高いのだ。動力性能も0→100km/h加速は7秒台と、このサイズのSUVとしてはかなり速い。V6エンジンは2000回転からトルクが太くなり、6500回転まで回る。エンジン音は3000回転以下では抑えられている。時速100キロでのエンジン回転数は1500回転なので、高速移動は本当に快適なクルマといえる。燃費は計測機器の不具合で正確には計測できなかったが、7~12km/L前後が実用値と思われる。インポーターのカタログ値は未発表だ。
20以上の機能を備える安全性能と充実の先進機能
アメリカ車の安全性能は本国でも厳しい。当然、日本仕様もそれを踏襲している。エマージェンシーブレーキシステム(フロント、リアオートマチックブレーキ/歩行者対応)、リアカメラミラーなど20項目以上の最新装備が標準搭載されている。自動運転系の装備はアメリカ本国では装備されているモデルもあるが、日本仕様では採用されていない。
アクティブリモートスタートは遠隔操作でエンジンが始動、車内温度調整、シートヒーター/ステアリングヒーター作動ができる。スマートフォンとの連動はAppleCarPlay、AndroidAutoに対応。電話、メッセージ送受信、音楽、地図の機能をタッチスクリーンで操作できる。非接触充電システムのチャージングは専用トレイに置くだけで充電できる。
左ハンドルしか設定されていないが買い得感の高い1台
アメリカ車でキャデラックといえば高級ブランド。そのSUVは実用的、スポーティ、スタイリングやインテリアのセンスも良いおしゃれなクルマだ。車両価格も欧州のプレミアムSUVと比較しても割安感がある。左ハンドルの設定しかないのがウィークポイントだが、そこを気にしないのなら、一度試乗してみたい。とくにレクサスのSUVを考えている人にすすめたい。
■関連情報
https://www.cadillacjapan.com/xt5/model-overview.html
文/石川真禧照 撮影/望月浩彦