巣ごもり消費が活性化し、自宅で簡単にできるホットケーキミックス(粉)が入手困難に。でも、薄力粉とちょっとの知恵があれば大丈夫。薄力粉は魔法の粉。ホットケーキだけでなく、餃子の皮だってできますよ。
強力粉、薄力粉、中力粉はどう違う?
「麺や焼き菓子は小麦粉で作れる」と知っていても、小麦粉にはさまざまな種類があります。主に、強力粉、薄力粉、中力粉で、簡単にいうとグルテン含有量の違いによる呼び名です。グルテンとは小麦に含まれるたんぱく質の一つで、このグルテンの働きによりパンが膨らんだり、麺にコシが出たりします。
整理すると、
強力粉…グルテン含有量が多い。パンやパスタなどに向く。
薄力粉…グルテン含有量が少ない。クッキーやホットケーキなどに向く。
中力粉…グルテン含有量は強力粉と薄力粉の中間ぐらい。うどんなどに向く。
となります。いろいろ考えず、応用度の高いものを1種類だけ選ぶなら、薄力粉を選べば間違いない。料理が上達したら、強力粉や中力粉も視野に入れましょう。
自炊勢が薄力粉を備蓄するべき理由
「種類がいろいろあって小麦粉は面倒くさい問題」は、「薄力粉一択」技で解決しました。次は、粉もの料理につきものの「発酵」。料理好きでも、レシピに「発酵」や「ベーキングパウダー」の文字があると身構えてしまうもの。そこで、「発酵なし」「ベーキングパウダーなし」のレシピを考えました。
発酵とベーキングパウダーについて、軽くおさらいしましょう。発酵とは微生物の働きにより膨らますなどの変化を起こすこと、ベーキングパウダーは化学の力で膨らませるものです。
この企画でレシピ考案に力を貸してくれたのは、管理栄養士・料理研究家の中谷純子さん。「強力粉や中力粉は粘り気が強く、麺やパンにしか向きませんが、薄力粉は扱いやすいです。ベーキングパウダーなしでもショートブレッドのような食感のクッキー、もちもちの餃子など、さまざまな料理が作れます」と教えてくれました。
ホットケーキは人力で膨らませよう!
新型コロナウイルス感染拡大にともない、ホットケーキミックスが品薄になったのは、簡単に作れて、お子さんでも扱えるることが理由でしょう。ホットケーキミックスが品薄で買えなくても、暇を持て余した「人力」でホットケーキは膨らみます!
「時間がたっぷりあるときは、生地をしっかり泡立てましょう。家にいる家族全員が交替で泡立てる感じです。こうすれば、卵と砂糖の合わせ技で、ホットケーキは膨らみます。焼くときは、小麦と卵と砂糖の焼ける香りが家に漂ってきて幸せも感じられます」と中谷さん。
とにかくしっかり生地を泡立てることが重要です。そういえば、ロングセラー絵本『ぐりとぐら』に出てくるのも、パンケーキのようなふわふわカステラでした。
ベーキングパウダーを使わない代わりに、時間をかけてしっかりと生地を泡立てることが重要。卵白だけガチガチに泡立て砂糖半量を3回に分けて入れたもの≪卵白生地≫を作り、卵黄と牛乳、サラダ油に砂糖残り半量を混ぜたもの≪卵黄生地≫の2種を作り、3回ぐらいに分けて混ぜ、薄力粉を加えさっくり混ぜる方法もあります。
≪ベーキングパウダーなしで膨らむホットケーキ≫
【材料(作りやすい分量)】
薄力粉 65g
砂糖 65g
卵 3個
サラダ油 大さじ1
牛乳 大さじ2
バニラエッセンス(あれば) 少々
【作り方】
1. 薄力粉はふるっておく。
2. 大きめのボウルに砂糖と卵を入れてよく混ぜ、泡だて器で白っぽくなるまでよく泡立てる。
3. 2にサラダ油、牛乳を入れて混ぜ、薄力粉(あればバニラエッセンス)を加えて混ぜ、油(分量外)を引いて熱したフライパンに入れてふたをして弱火で10分ほど焼き、裏返してさらに8分ほど焼く。
泡立て器を持ち上げて落ちると、生地にやや跡が残るぐらいが目安
餃子の皮がないなら粉から作ろう
ホットケーキは食べたいときに粉がないものですが、餃子も食べたいときに皮がなかったり……。なければ作ろう精神でマスターしてください。やってみれば意外と簡単です。
≪皮から手作り簡単餃子≫
【材料(作りやすい分量)】
薄力粉 1カップ(100g)
熱湯 2/5カップ(80ml)
サラダ油 小さじ1
塩 ひとつまみ
打ち粉用薄力粉 少量
好みの具(ソーセージ2本、溶けるチーズ大さじ2など)
※本格的に作る場合の具は
ひき肉 100g
ゆでて刻んだキャベツ 80g
椎茸(水で戻してみじん切り) 2枚
おろししょうが 少々
塩 小さじ1/4
ごま油 少量
【作り方】
1. 薄力粉に熱湯とサラダ油、塩を入れてよく混ぜ、ひとまとめにしてラップに包み10分ほど置く。
2. 1の生地を打ち粉を振った台にのせ、直径2cmほどの棒状にのばし、均等に7~8つ程度に切り、円形にのばす。
3. 小さく切ったソーセージと溶けるチーズを包む。
4. 油(分量外)を敷いたフライパンに入れ、水カップ1/2入れてふたをして焼き(3~4分)、ふたを開けて水分を飛ばしてできあがり。水に片栗粉や米粉を溶き入れると、羽根付き餃子になります。
この企画の後編では、簡単アレンジのクッキーとブリトーをご紹介します!
監修=中谷純子
料理研究家・管理栄養士。公私にわたる料理経験をもとに、「みんなが作れる栄養バランスの取れた料理」を教えるオーダーメイド料理教室主宰。モットーは「料理は科学」。
http://oisykurasi.jugem.jp/
取材・文/木村悦子