今までサウナに入ったことのない人にとって、サウナのイメージといえば、「むさくるしいオッサンたちが汗を流す、あつくるしい場所」というものかもしれない。あるいは、身体の健康には悪そうなイメージを持っている人もいるだろう。
未体験者には、ややネガティブな印象を持たれていそうなサウナだが、そんな固定観念をすべて覆す書籍が、3月に刊行された『Saunner BOOK(サウナーブック)』(A-Works刊)だ。
著者は、サウナの魅力にハマって、「経営者から著名人までありとあらゆる人たちをサウナに案内」し、その人数は千人にも及ぶという松尾大さん。もともと、福祉施設やフィットネスジムの経営者であったが、今やプロサウナー(サウナの啓蒙活動者)として名を馳せ、サウナ好き向けの専門ブランド「TTNE」や日本サウナ学会の立ち上げにもかかわっている。
サウナには多くの健康上のメリットが
「ととのえ親方」の異名を持つ松尾さんだが、この「ととのえ」には「整える」と「調える」をミックスした意味があるという。第一にサウナに入ると、「ディープリラックス、恍惚感、解放感、多幸感…そして再起動」の感覚を味わえるからで、「いわば合法ドラッグみたいな(笑)」とも表現。サウナは未体験だが、日頃のストレスにきりきり舞いのビジネスパーソンには、聞き捨てならない魅惑的な言葉ではないか。
さらにサウナには、気分的な効果だけでなく、健康面でのさまざまなメリットもあるとか。例えば、「ぐっすり眠れるようになる」、「免疫力が高まる」、「美肌になる」。これらは一個人の体験に基づいた話でなく、学術的な裏付けもある。例を挙げると、免疫力については、サウナに定期的に入る人、まったく入らない人とでは、前者の方が風邪にかかる割合は約50%も低いという、ウィーン大学の研究チームによる論文が引き合いに出されている。松尾さん自身は、「めったに風邪をひかない。というより、そもそも体調を崩すこと自体ほとんどない」そうで、周囲のサウナ好きにも「元気のない人なんていない」と語る。
サウナには心身が「ととのう」絶大な効果がある(本書33pより)
「ととのう」サウナの入り方がある
ストレス解消・健康効果を知ってサウナに興味を持っても、実際にサウナに入るのに敷居の高さを感じる未経験者もいるだろう。
そんな入門者向にあてて、松尾さんはサウナの入り方に1章もうけている。それもただ入るのでなくて、ちゃんと「ととのう」入り方。なので、長年のサウナ好きでも得るところは多い。
まず、基本的なルールは、「サウナ→水風呂→休憩(外気浴)」のサイクルで1セットというもの。なぜわざわざこう記すのかというと、サウナ室で汗をかいただけでおしまいにする人が少なくないせい。これでは、「ととのう」ことはあり得ないという。この3つにかける時間的な比率は4:1:5を目安とし、3セット繰り返すのがベターとのこと。かかる時間は、トータルで1~2時間。もちろん朝の忙しい時などは、1セットで締めるのもOKだそうだ。参考までに松尾さん自身は、「サウナ6~8分、水風呂1~2分、休憩8~10分くらい」が、普段のサイクルだという。
「サウナ→水風呂→休憩(外気浴)」で1セットと考える(本書79pより)
幾つかのマナーはおさえておく
また、ビギナーがおさえておきたいのがマナー。絶対に遵守すべきもの、「ととのう」体験を向上させる意味で守っておいて損のないものを含め、サウナのマナーはそれなりにある。
松尾さんが「最低限のマナー!」と力説するのは、サウナ室前の入浴。全身をくまなく洗うのは、単に汚れを落とすだけなく、「ととのう精度も高まる」から。ちなみに、入浴時の松尾さんのお気に入りアイテムは、牛乳石鹸。身体だけでなく、タオルもこの石鹸で洗って香りづけするそうだ。そして、身体についた水滴は、しぼったタオルで拭き取ってから、サウナ室に入るのも忘れずに。
それから、細かい注意点として「サウナ室のドアはなるべく静かに小さく開ける」。他の利用者がいるのと、サウナ室に冷気が入りこまないようにするための配慮だ。ドアを開けたら、サッと入るように心がけたい。
サウナ室内での座り方は、基本的に自由。足を肩幅くらいに開いて座るのがオーソドックスだが、あぐらや正座をしたってかまわないそう。言うまでもなく、サフレ(サウナを一緒に楽しむサウナフレンドの略語)と大声で談笑するのはNG。濡れたタオルを絞るのもダメだ。