何回通ったら「行きつけ」なんだろう?
明確な定義って、あるんだろうか。
2~3回目で、お店の人と急に仲良くなって、
すっかり居心地が良くなってしまう場合もあるし、
30回以上通っていても、広すぎたり、人が多すぎたりすると、
何となく「行きつけ」とはまた違うような気もするし。
今の家に引っ越してきてすぐ、
近所で見つけた赤ちょうちんの光に導かれて、
何となーく入ったお店がある。
暖簾をくぐり、ガラガラと引き戸を開けると、
店内は、絵に描いたような古き良き空間が広がっていた。
木製のカウンターに、小上がり2席。
支払いは現金のみで、注文はすべて手書きメモ。
ガラスケースには、丁寧に串打ちされた鳥が並び、
おとうさんが炭火でじっくりと焼いていく姿を眺められる。
おかあさんは明るくテキパキしていて、距離感がちょうど良く、
初めて来たのに、実家に帰ってきたような安心感だった。
ご夫婦で25年。
ずっと同じ場所で、営業を続けてきたらしい。
あれから、街のことをいろいろ教えてもらったし、
常連さんも紹介してもらったし、
すっかり仲良くなって、結婚式にも来てもらった。
ひとりで静かに飲みたい夜も、
大切な人と真面目に話をしたい夜も、
いつも変わらず、そこにいてくれた。
本当に、おとうさんとおかあさんだった。
これって、もう「行きつけ」だよね?
誰にも確認したことはないけれど、
「行きつけの店」ということで、いいんだよね。
何だか偉そうだから、自分から言うことはないと思うけど、
心の中では、そう位置づけている。
そんなことを思いながら、このエッセイを書いていたら、
顔を見に行きたくなっちゃった。
今夜は、焼き鳥かなぁ。
写真は、大好物のニンニク手羽先。
濃い味で、お酒に合うんです。
Natsumi Uga
テレビ朝日アナウンサーを経て、昨年からフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初の冠番組『川柳居酒屋なつみ』(テレビ朝日)、『テンカイズ』(TBSラジオ)などに出演中。
文/宇賀なつみ
※「宇賀なつみ 素顔のままで」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME5月号に掲載されたものです。