静電容量無接点方式を静音化した「HYBRID Type-S」が登場!
HHKBはハッピーハッキングキーボードというブランドで、PFUという富士通の子会社が作っている。HHKBは東京大学名誉教授 和田栄一氏が提案したキー配列を採用した小型高級キーボードを製品化して、特にプログラマーに支持されている。キーの数を減らすことでホームポジションから指の移動を少なくして素早い入力を追求している。英語配列のキーの数は60である。昨年12月に4年振りとなる新製品が発表され、キーボードマニアを驚喜させた。
発売されたのは3グレード16モデルで有線接続の「Classic」、Bluetoothと有線が使える「HYBRID」、さらにこれを静音化した「HYBRID Type-S」である。Classicは英語配列と無刻印、HYBRIDとType-Sには英語配列、日本語配列、無刻印があり、それぞれに白と黒があるため合計16モデルとなる。私が使っているのは、Type-Sの英語配列の白である。
HHKBの新製品は3グレード、16モデルで、狙い目はHYBRIDグレード以上のモデルだ
エキスパートにのみ許された無刻印モデル。刻印がないのでキー配置を暗記していないと打てない
英語配列の黒は艶消し黒の刻印なので、角度によっては無刻印に見える。これもクールだ
Windows専用アプリを使ってキーマップをカスタマイズ可能。1度、変更すればキーボードが記憶するためMacで使っても変更した配列で打鍵できる
Bluetoothのマルチペアリングが超便利
HYBRIDはBluetoothのマルチペアリングに対応して最大4台の機器と接続できる。つまり、Mac miniとMacBookAirとiPhone11ProとiPad ProとWindowsマシンで共有できるのだ。これは便利。特に最近ワイヤレスキーボードに対応したiPhoneとiPadで、こんなキータッチのいいキーボードが使えるのは至福である。切替はFn+Control+1~4となる。MacとWindowsの切替は底面のディップスイッチを変更する必要がありやや面倒だが、昔はMac用のHHKBがなかったことを思えば楽なものだ。Bluetoothの電源には単3乾電池を2本使用。約3ヵ月持つというテスト結果で、ウチでも3ヵ月過ぎているが問題なく使えている。
電源は長く使うために内蔵充電池ではなくあえて汎用性のある単3乾電池を採用
底面にある6個のスイッチを切り替えて設定変更。Macは1がOFFで2がON。スイッチにはフタがあり普段は保護されている
キーキャップは角度のあるシリンドリカルステップスカルプチャを採用する
静電容量無接点方式は打ちやすいのか?
Type-Sが採用するのが静音性を追求した静電容量無接点方式のキースイッチである。スイッチ内部にある円錐形のスプリングが押されたことで静電容量が変化、これを感知して無接点で入力出来る。底突き感がなく、静音性も高いのだ。さらに耐久性が高く5000万回の入力に耐えると言われている。もともとは業務用に開発され銀行などの現場の端末などに使われていた。日本で作っているのは東プレだけでHHKBのキースイッチも東プレ製である。
これに対してメカニカルキーボードは接触接点方式で、スイッチ内部にある板バネ接点が接触することで電流が流れる。底突き感があり、スプリングの強さによって好みの反発感が得られる。耐久性は高く静音仕様もある。また専用の潤滑油を塗布するルブにより打鍵感を変えられるのだ。私が普段使っているキーボードは「ErgoDash mini」でキースイッチは赤軸互換の静音タイプである。これと比較してみると、Type-Sはリニアでなく、タクタイルに近く、押し始めはややフニャフニャして、そこから固くなってコリッとした手応えがあり、キーを押した感触が得られる。静音性はメカニカルと同じぐらいで、どちらも静かだ。
一番の違いはキーの面積が狭くエグリが深いことだ。これが慣れないと違和感がある。コンパクトなサイズなのでキーキャップを交換しても、面積を広くするのは無理そうな気がする。結論としてはメカニカル方式も負けてない。もちろん耐久性やチャタリングがでないなどの点では負けるかもしれないが、キータッチだけで静電容量無接点方式が最高とは思えなかった。
非常に高価なキーボードなので、誰にでもオススメできる製品ではないが、コンパクトキーボードの最強モデルであることは間違いない。コンパクトの終着駅、一生モノという言葉が良く似合う。
写真・文/ゴン川野