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オートバックスが描くC to C中古車市場参入の仕組みとその先にある未来図

2020.04.06

カー用品専門店「オートバックス」を展開する株式会社オートバックスセブン(以下、オートバックスセブン)は、2020年4月にブロックチェーン技術を基盤とするシステムを本格稼働し、プラットフォーマーとして中古車のCtoC(個人間取引/Consumer to Consumer)市場に参入する。

オートバックスセブンは、2016年にベイカレント・コンサルティングと共にブロックチェーン技術の実証実験を行っており、一定の感触を得ていた。今回は、日本アイ・ビー・エムと協力して、エンタープライズ向けOSSブロックチェーンであるHyperledger Fabricを活用したシステムを開発・運用する。今回、同社ICT商品部長の八塚昌明氏にお話を伺った。

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自動車市場を取り巻く環境の変化とCtoC中古車市場に参入を決めたワケ

「世の中のニーズが大きく変化しています。今までの、新車を買って、3〜5年乗って、売却をして乗り換える。そういったサイクルがなくなってきています。自動車メーカーも車の乗り換えサービスを定額制で提供し始めました。また、都心部を中心にカーシェアも広がっています」(八塚氏)

これに対し、同社広報担当者も「自動車市場は日本だけでなく、世界的にも縮小しています。このままだとビジネスの成長性がありません。もちろん、競合他社との市場シェアの取り合いは行なっていきますが、それに加えて我々のビジネスの領域を広げて、新しいことに挑戦していく必要があります」と口をそろえる。

現在の中古車市場の問題点は2つあるという。

1つ目は、従来の中古車市場では、売り手と買い手の間に買取業社や販売業社を挟むため、中間コストが高いということだ。八塚氏によると、100万円で買った車が、150万円で売られていても、驚くことではない。

2つ目は、中古車市場全体の約15%を占めるという現在のCtoC中古車市場における問題点だ。車の売買は、掲示板経由で行われることが多いため、車の価格の妥当性や車の安全性・信頼性を判断することが難しい。

オートバックスセブンがCtoC中古車市場に参入を決めた理由は、自社のブランド力を活用して、売り手と買い手が直接マッチングする場を立ち上げることで、中間コストの削減と車の安心・安全を担保できると考えたからだ。

同社の広報担当者いわく、CtoC中古車市場への参入は、自動車業界の派生であり、大きな驚きはなかったとのこと。これはやってしかるべきという領域だと述べた。

オートバックス主導のCtoC中古車市場の仕組み

オートバックスセブンがしかけるCtoC中古車市場の仕組みは、図1を見てほしい。

本取材で聞いたことを含めて、利用者側の流れを簡潔に説明する。

①売り手がオートバックスに車の査定を依頼する

車の売り手は、オートバックスに「無料」で査定を依頼することができる。

②オートバックスが査定を実施する

オートバックスは、「D査定Dr.」(特許取得済み)という車買取査定システムを用いて、車の査定を実施する。このとき、車の売り手には2つの選択肢がある。

A.査定価格に満足した場合:オートバックスに車を売却する

B.査定価格に不服な場合:CtoC中古車市場への登録(無料)に進む

なお、査定価格による買取保証は5日間あるため、その間に対応を考えることができる。

③Bの場合、オートバックスは「認定証」を発行、車両・査定の情報をブロックチェーンの台帳に記録する(査定価格は含まず)

④売り手は台帳に車を登録、売却希望額を自由に提示できる

⑤買い手は台帳に登録された車の情報を参照して購入を検討する

⑥買い手が中古車の購入を決定、代金を支払う

⑦売り手が買い手から代金を受け取る(マッチング成立)

①〜⑦の間にブロックチェーン技術がどのように使われているのかというと、以下の用途で使われている。

・③の「認定証」による車両・査定の情報の記録
・④の車の登録と売却希望額の記録
・⑤の買い手による台帳の検索・参照
・⑥と⑦におけるマッチング(取引)の記録

一連の手続きは、スマートコントラクトにより自動的に行なわれる。ただし、車両の移動や契約の締結など、物理的・法律的な手続きはオートバックスが担うとのことだ。なお、現時点では代金の支払いにトークンを用いる予定はないとの見通し。

オートバックスは、マッチングが成立して、車両の移動が問題なく行なわれた時点でのみ手数料(成功報酬)を受け取る。このビジネスモデルの狙いとしては、利用者にプラットフォームを無料で活用してもらえるようにして、利用のハードルを下げることだという。

「利用者のターゲットは幅広く設定しています。『日常的に利用する車』や『2台目・3台目の車』を買いたい方もいれば、『とにかく安い車』が欲しいという方もいます。ただやはり、主なターゲット層は、30代・40代の男性ですね。当社としても課題があります。女性や、20代以下の若い方の巻き込みです。この方たちに対しても、新しい市場を提供する。その方々はメルカリなどを通じて、CtoCに慣れている方が多いため、参加しやすいのではないかと思います。また、車が好きでレアな車をお持ちの方。中古車で売りに出すと価値はすごく下げられてしまうけど思い入れがあり『300万円の価値があるんだよ。わかる人はきっと300万円で買ってくれる』というのであれば、そこに特殊な市場が生まれる可能性はあります」(八塚氏)

RDBでも実現できるシステムにブロックチェーンを採用した狙い

読者の中には、オートバックスのCtoC中古車市場は、ブロックチェーンを用いなくても、RDB(リレーショナル・データベース)でも、十分に実現できるのではないかと疑問に思う方もいるだろう。そこで、オートバックス1社でブロックチェーン技術を用いる費用対効果について尋ねた。八塚氏によると、コストはRDBに比べて非常に高いとの回答だ。では、なぜブロックチェーンを採用したのだろうか。2つの理由を説明してくれた。

まず、1つ目の理由は記録されたデータの改ざんを防ぎ、情報をオープンにする目的だ。

「車両情報の台帳をブロックチェーンで管理することで、耐改ざん性により不正を防止することに加えて、誰が見ても一定の価値があることを共有できる透明性のある仕組みができると考えました」(八塚氏)

次に、2つ目の理由がブロックチェーン技術を用いる最大の目的である。

「今回のプラットフォームは、当社が立ち上げますが、CtoC中古車市場を独占的にやろうとは考えていません。中長期的には関連業者や競合他社、異業種を巻き込むことによって、新しいビジネスが生まれるようなエコシステムが実現できるのではないかと、期待しています」(八塚氏)

ここでいうエコシステムは図2のようなものを描いているという。

図2に載せてあるようなさまざまなステークホルダーを巻き込んで、将来的にコンソーシアム型としてブロックチェーン技術の基盤を活用して、イノベーションを加速させることが今回の新事業の本当の狙いだ。これを実現するためには、ブロックチェーン技術は不可欠だという。CtoC中古車市場は、この展望の中の第一弾という位置付けだと語ってくれた。

新しい挑戦を続けるオートバックスのDNA

オートバックスセブンのような東証一部に上場する大企業が、イノベーションに対して非常に積極的な姿勢を見せていることに興味を持ち尋ねたところ、興味深い話を聞けた。

「『オートバックスセブン』という社名の由来は、アルファベットの文字一つ一つに意味合いがあります。『オートバックス(AUTOBACS)』の"AU"は『アピール/Appeal』『ユニーク/Unique』。商品やサービスの魅力や特別感をうたっています。"TOBACS"の6つは、カー用品を示しています。『タイヤ/Tire』『オイル/Oil』『バッテリー/Battery』『アクセサリー/Accessory』。"C"は、もともと『カークーラー/Car Cooler』だったのですが、今は『カーエレクトロニクス/Car Electronics』。"S"は、『サービス/Service』です。社名にある『セブン/SEVEN』というのは、『常にお客様のために第7の商品を探し続ける』という意味が込められています。それが、オートバックスセブンという、社名の由来です」(同社広報担当)

事実、今回のCtoC中古車市場でも車両の走行距離を含む製造から廃棄までの車のライフサイクルにおけるデータをIoTとブロックチェーンを組み合わせて蓄積することで、より安全・安心かつ透明性の高いエコシステムの実現を目指していくという。また、AI(人工知能)に関しても、タイヤの摩耗状態をスマホでチェックできる「かんたんタイヤ画像診断」や高齢者見守りAIロボット「ZUKKU」をローンチしている。

社名に、新しいことへの挑戦という「DNA」を持つオートバックスの今後が、非常に楽しみである。

オートバックスセブン ICT商品部長
八塚昌明氏
1993年日本IBMに入社。情報システム部門にてSE、プロジェクトマネージャーとして10年以上のキャリアを積む。2016年7月にオートバックスセブンに入社、2017年4月にICTカーエレクトロニクス商品部(現・ICT商品部)の部長に就任。

取材・文/師田賢人 撮影/篠田麦也

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