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やっぱり便利!取り込んだPDFファイルに手書き感覚で記入できるキングジムの電子ノート「フリーノ」

2020.04.05

紙は偉大な記録媒体である。

人間が文字を発明した当初、それを地面の土に書いていたという。しかしそれでは長期保管ができない。だから次は石に文字を刻み、やがて粘土板、パピルスという順に記録媒体を発明した。

そして人間は、紙にたどり着く。この紙という発明品がなければ、人間はその思考を昇華できなかったと断言してもいいかもしれない。

ペンを取って紙に文字を書く。この動作こそ、人間が人間たる所以である。そして21世紀の現代、「書く作業」は最先端テクノロジーの力を借りて進化しようとしている。

紙のようなディスプレイ

「電子ノートの開発は9年前から始まりました。ですがその当時は、まだ満足できるほどの描画速度を確立できていませんでした」

『フリーノ』と名付けられた新製品を前に語るのは、キングジムの東山慎司氏である。

東山氏と筆者は初対面ではない。2018年に『カクミル』という製品の取材に赴いた際も、東山氏からいろいろな話を聞いた。このカクミルはE Ink社の電子ペーパー技術を採用した電子メモ。卓上での利用を想定した設計である。

今回東山氏がプロジェクトの先頭に立って開発したフリーノは、持ち歩きを想定したタブレット型。画面サイズは6.8インチと、iPad Miniよりも若干小さなサイズである。

「描画速度に関してはまだ若干の調整が必要ですが、この製品にはワコム製のデジタイザを採用しています。イラストレーターがよく使う、あのワコムです。」

ワコムなら、筆者もよく知っている。知り合いに漫画家やイラストレーターが多いから、ワコムの描画用タブレットの評判もいろいろと聞いている。バドミントン選手にとってのヨネックス、ラグビー選手にとってのカンタベリー、プロボクサーにとってのウイニングみたいなメーカー……と書けば、まだ適切な表現か。

では、早速このフリーノで文字を書いてみよう。

筆圧を検知して書き手の力に沿った線を描画する……と書けば小難しく聞こえてしまう。要するに、字の「とめ・はね・はらい」をまるで紙の上の如くディスプレイに再現するということだ。筆者は物書きの師匠の癖をそっくりそのまま受け継いだ関係で、なかなかの悪筆である。師匠は自分ができないことを生徒に強要しない人物だったが、どうやらそれが仇となっているらしい。

もっとも、言い換えればそれだけ癖のある字ということだ。普段紙の上に書いている字を、そのままフリーノに書くことができた。

これはまさに「紙」である。「紙」そのものだ。前回のカクミルの際もE Inkディスプレイの感触の良さに驚いたが、フリーノはそれに増して「紙のメモを取っている」という感じがはっきりと伝わる。液晶ディスプレイのタブレットでは、絶対に味わえない感触だ。

PDFファイルとの相性

フリーノはWi-Fi接続ができる製品だから、たとえばPDFファイルをそのままフリーノに反映させることもできる。Micro SDからデータを持ってきても構わない。

契約書をフリーノにインポートし、そこにサインすることも可能だ。もしも日本の「印鑑フリー化」が進めば、こうした手段でビジネス上の契約を交わすシーンも増えるだろう。

海外旅行の際にも大活躍必至である

航空券がペーパーレスに移行し切ったのは、確か2008年頃だったと思う。現代ではいわゆるeチケットが当然のものになったが、ペーパーレスは実はペーパーレスとは逆の流れを生み出している。

PDFファイルのeチケットを、コンビニでわざわざ紙出力する。そうしなければ旅行先の入国審査官に帰国日を説明する際、難儀してしまうのだ。紙に出したeチケットとボールペンを持って「帰国日はこの日で、この空港から羽田へ帰国する予定です」という具合に。

その煩わしさをフリーノで解消できるとしたら、筆者はこの製品のために可処分所得を割こうと思案している。

製品の付加価値

「フリーノはクラウドファンディングMakuakeに出展し、目標金額500万円を大きく超える出資を集めることに成功しました。価格は先着20名の早期出資枠で3万2000円です。正直、決して安い価格ではありません」

フリーノの価格設定について、東山氏はそう説明した。

新製品をいくらで売るか、という問題はモノを作る会社の社員であれば誰しもが抱えている。しかし筆者は「お買い得価格」という言葉には容易になびかないようにしている。

メモ、ノート、方眼用紙、カレンダー、To Doリスト、PDF。様々な画面モードを選ぶことができ、オンラインを介してDropboxとの連携も可能なフリーノ。我々消費者が見るべきはその機能に由来する付加価値であり、目先の「お買い得」ではない。
仮に4万円でこの製品を買ったら、結果的にどれほどの恩恵を得られるのか。

フリーノが手元にあったからこそ、こういう使い方をしてこんな知識を得ることができた。知的好奇心から派生した新発見は、当座の数万円には代えられない財産である。

「手で書く」重要さ

気がつくと、筆者と東山氏との会話は「アナログの大事さ」というテーマになっていた。

筆者は日本とインドネシアを往復する機会が多く、今もインドネシア語を勉強している。インドネシア語は新単語が誕生する頻度の早い言語だから、こまめにネットで単語の意味を確認しないといけない。ところが、ネットでチェックするだけではどういうわけか脳に定着しない。該当の単語を紙のノートに書き出して、その意味も横に付け足しておかなければ外国語はなかなか覚えられないのだ。

結局は己の手で筆を動かさないと、脳が働いてくれないらしい。

「私も普段はPCのキーボードを使って文字を打っていますが、それでは漢字を忘れてしまいます。ちゃんと自分の手で文字を書かないと内容を覚えられない、というのは実感しています」

東山氏はそう返答したが、直後に筆者はあることに確信を持った。

この人物は、「手で書く」という行為の重要さを十二分に理解している。

だからこそ、東山氏はこの製品の構想に至ったのだ。そして、アナログとデジタルは決して対立概念ではないということも熟知している。

筆者はこのフリーノに、「5年後の近未来」を感じた。いや、もしかしたら2、3年後かもしれない。諸々のPDFファイルをとりあえずフリーノにぶち込み、困った時はフリーノの画面スリープを解除して書類を探す……という行動が日本人のルーティンになっている近未来だ。

人間という動物はつまるところ、そのような「身近な革新」を積み重ねて進化するのだろう。

【参考】
思うがままに、好きなだけこの1冊に。デジタルノート「 Freno(フリーノ)」

取材・文/澤田真一

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