日本人の「スイーツ」に関する意識や行動、性年代別の特徴はこの10数年の間にどのような変化を遂げているのだろうか?
そんなスイーツにまつわる様々な年代別比較調査をまとめた「スーパー・コンビニ スイーツ白書 2020」がこのほど、洋生菓子を製造・販売する株式会社モンテールより発表されたので、紹介していきたい。
約7割がスイーツを「スーパー」で購入、2位は「コンビニ」
スイーツ(洋生菓子)を購入する場所では、「スーパー」(67.0%)が約7割で1位となった。次いで「コンビニ」(55.5%)も半数を超え、3位の「専門店」(21.2%)の倍以上という結果になり、身近なスーパーやコンビニでスイーツを購入する人が多いことが分かった。
「スーパー」でスイーツを購入する人が最も多かったのは女性40代(80.6%)で、8割を超えた。「コンビニ」では女性10代(71.4%)が1位で、より若い人に人気があることがうかがえる【図1】。
本項目の調査を開始した2014年からの結果を見ても、「スーパー」での購入率は、女性は6年連続で7割を超えている。一方、男性は2014年の57.2%から、2019 年は61.2%と、4.0ポイント増加しており、スーパーでスイーツを購入する男性が増えていることが分かる【図2】。
「スーパー」のスイーツは「価格&味」が魅力。「コンビニ」のスイーツは「味&手軽さ」が魅力
購入率が高かった「スーパー」および「コンビニ」のスイーツの魅力について聞いた結果が、下記【図 3、4】だ。
「スーパー」のスイーツの魅力としては「価格」(76.7%)が最も支持を集め、次いで「味・おいしさ」(60.9%)、「手軽に買える」(49.4%)となり、コストパフォーマンスの良さが評価されているようだ。また、5位「品揃えの良さ」(19.9%)は、スーパーならではの魅力といえる。
「コンビニ」のスイーツの魅力は、1位「味・おいしさ」(68.8%)、2位「手軽に買える」(52.3%)、3位「価格」(43.6%)となり、「パッと購入できておいしい」ところが魅力のようだ。また、4位「新商品が頻繁に出る」(26.0%)では、コンビニのフレッシュな品揃えを楽しみにしている人も多い様子がうかがえた。
また、どちらのランキングにも「ボリューム」(スーパー:24.9%、コンビニ:17.4%)がトップ5入りしており、スーパー・コンビニのスイーツにおいて、「ボリューム」を重視する人も多いことが分かる。
「スーパー」・「コンビニ」のスイーツ、「味・おいしさ」の評価が高まっている!
「スーパー」・「コンビニ」のスイーツの魅力を尋ねる調査が行われた結果を、本項目の調査を開始した2013年からの経年変化で見ると、「味・おいしさ」に魅力を感じる人が、スーパー、コンビニの両方で増加していることが分かった【図 5、6】。
「スーパー」では、2013年に「味・おいしさ」が魅力と答えた人が51.1%と約半数であったところから、2019年には60.9%と、9.8ポイント上昇しており、7年連続で1位となった「価格」との差が年々縮まっている。「スーパー」で購入するスイーツの「味・おいしさ」の評価が上昇していることが分かる結果となった。
「コンビニ」では「味・おいしさ」が、2014年以外の全ての年で魅力の1位となっており、2013年の64.7%から2019年には68.8%と、4.1 ポイント上昇している。味についてもともと魅力を感じている人が多く、近年さらにそういった人が増えてきている様子もうかがえる。
また、「スーパー」のスイーツで魅力5位だった「品揃えの良さ」は、2013年からの7年間、安定的に20%前後を推移しており、選べるバリエーションの多さからスーパーでのスイーツ購入をする人がいることがうかがえる【図5】。
「コンビニ」のスイーツについて魅力4位だった「新商品が頻繁に出る」についても、2013年から安定的に20~30%を推移しており、新商品との出会いを求めてコンビニでスイーツを購入する人の様子が分かった【図6】。
パッケージ表記で気になるポイントも変化。「コストパフォーマンス」に「+α」の視点が増加
スーパー・コンビニでスイーツを購入する際に気にする表示について尋ねる調査が行われた結果、1位は「値段」(71.9%)、2位「消費期限」(45.2%)、3位「入数・内容量」(27.3%)となった。
2009年と比べてみると、1位の「値段」(2009年:85.0%→2019年:71.9%)が13.1ポイント減少している。また、2位の「消費期限」(2009年:66.0%→2019年:45.2%)が 20.8ポイント減少している。
一方、「商品のこだわりを表した文」(2009年:15.4%→2019年:22.9%)は7.5 ポイント、「商品名」(2009年:11.9%→2019年:25.5%)は、13.6 ポイント増加している。コストパフォーマンスのみでなく、商品名や商品のこだわりなどを見ることで、ブランドや他と比べたときの特徴などの「+α」の部分を、スイーツ選びの際に重視するようになってきているといえそうだ【図7】。
約3割が週1以上で「スーパー」・「コンビニ」のスイーツを購入。若い男性の購入率が高い
スーパー・コンビニでスイーツを購入する頻度を尋ねる調査が行われたところ、週に1回以上買う人は27.1%と、約3割に上ることが分かった。
性年代別で「週1回以上購入」している割合が最も高かったのは男性20代(35.5%)で、この年代では週に3回以上購入する人も13.3%(ほぼ毎日:3.2%、週3~4回程度:10.1%、合計)と、1割を超えている。次いで男性10代(33.6%)、女性10代(33.4%)が「週1回以上購入」の割合が高く、特に若い男性が購入していることが分かった【図8】。
スーパー・コンビニのスイーツに使う金額は、平均195円
2019年におけるスーパー・コンビニで購入するスイーツに使う金額は、平均195円だった。男性は196円、女性は193円で、男性の方がお金をかけていることが分かる。経年で見ても2009年から、2012年を除く全ての年で、男性の平均購入金額の方が高いことが分かった【図9】。
2019年のデータで性年代別に見ると、一番スイーツに高い金額を払うことに抵抗がないのは女性10代(平均218円)だった。一方、スイーツに使う平均金額が最も低いのは女性40代(平均166円)となった【図10】。
不動の人気!「シュークリーム」が13年連続で人気No.1
スーパー・コンビニでよく購入するスイーツは、1位「シュークリーム」(74.4%)、2 位「プリン」(48.2%)で、「シュークリーム」は2位に25ポイント以上の差をつけ、圧倒的な1位となった。「シュークリーム」と「プリン」は、13年間不動の1・2 位に君臨している【図11、14】。
「シュークリーム」については、男性が77.6%、女性71.4%で、男性の方がシュークリーム好きの割合が高いことが分かった。中でも男性50代(86.8%)、男性30代(84.2%)、男性60代(83.4%)となり、「シュークリーム」は、中高年男性からの支持が特に高いことが分かった【図12】。
一方、男性に比べて多くの項目で数値が高く、人気にバラつきがあることから、女性は好みが多様で、いろいろなスイーツが好きであることが分かる結果となった【図13】。
一番人気の食感は「なめらか」。「ふわ・とろ・しっとり」好きは女性に多い
魅力を感じるスイーツの食感について、「なめらかな」(男性:33.0%、女性:49.0%)、「ふわふわ」(男性:28.5%、女性46.8%)、「しっとり」(男性:27.3%、女性:41.9%)、「とろーり」(男性:24.2%、女性:39.1%)は特に、女性の方が好きな割合が高いことが分かった【図15】。
「ザクザク」「もっちり」などの歯ごたえや粘度を示す食感については、他年代と比べ、60代には好まない人が多く、「ふわふわ」「ふんわり」「なめらかな」などやわらかい食感は、60代からの支持を多く集めている。「もちもち」「もっちり」は、10代~30 代で特に人気があることが分かった【図16】。
「なめらか」食感が、5年連続で1番人気!「もちもち」の人気が上昇中!
2019年の「魅力を感じるスイーツの食感」は、1位「なめらかな」(41.3%)、2位「ふわふわ」(38.0%)、3位「ふんわり」(37.2%)という結果だった。
食感の好みに変化があるかを見ていくと、本項目の調査を開始した 2015年との比較では、「なめらかな」(2015年:37.3%→2019年:41.3%)は4.0ポイント、「ふわふわ」(31.2%→38.0%)が6.8ポイント増加している。
そのほか、「もちもち」(20.5%→31.5%)が11ポイント、「もっちり」(20.3%→28.2%)が7.9ポイント、また、まだ1割強と少数派ではあるが、「ザクザク」(5.3%→13.9%)が8.6ポイント増加している。今後はこういった食感のスイーツが人気を集めるかもしれない【図17】。
スーパー・コンビニのスイーツ、「自宅で食べる」人が95.2%
スーパー・コンビニのスイーツをどこで食べるか尋ねる調査が行われたところ、95.2%とほぼ全員が「自宅」で食べていることが分かった。2位は「職場」(13.9%)、3位「車中」(7.5%)と続いたが、少数派だ。2009年から見ても、スーパー・コンビニのスイーツは、購入後自宅で食べている人がほとんどであることが分かった【図18】。
「家族と食べる」人が10年前から最も多いが、「ひとりで食べる」人が増加傾向
スーパー・コンビニのスイーツを誰と食べるかについては、1位「家族と」(63.2%)、2位「ひとりで」(54.7%)、3位「友人と」(10.3%)の順となり、この順位は10年前から変化していない。しかし、「家族と」食べる人は微減している傾向で、2009年と比較して5.2 ポイント減少、代わりに「ひとりで」食べる人が6.7ポイント増加しており、単身者の増加の影響が出ているものと考えられる【図19】。
また若い男性が「ひとりで」スイーツを食べる比率(10代:69.6%、20代:71.5%、30代:61.3%)は6~7割に上り、他の年代と比べて高いことがわかった【図20】。
生活習慣の変化が「スイーツ習慣」にも影響。スイーツを食べるシーンが多様化
スーパー・コンビニのスイーツを食べる時間帯で最も多いのは「午後」(53.3%)。次いで「夜」(34.9%)、「夕食時」(23.3%)となった。
2009年からの変化を見ると、「夕食時」(2009年:47.5%→2019年:23.3%)に食べる人が24.2ポイントも激減している点が特徴的な結果となった。一人暮らし世帯や共働き世帯の増加から、夕食の家族団らんの時間にスイーツを食べる機会が減少していることがうかがえる。生活スタイルの変化に合わせ、スイーツを食べるシーンも多様化が進んでいることが分かる結果となった【図21】。
「スイーツ男子」が増加中!男性が「おやつにスイーツ」を食べることへの抵抗感が減っている
スーパー・コンビニのスイーツを「午後」に食べる人は、男性20代(2009年:27.1%→2019年:60.0%)が32.9ポイント増えているのを筆頭に、全年代で大幅に増加している。もともと半数以上であった女性(52.3%→56.7%)は 4.4ポイントと微増だったが、男性(26.6%→49.5%)では22.9 ポイント増加しており、10年前よりも「スイーツ男子」の定着化が進んでいることがうかがえる【図22】。
スイーツ習慣に変化。「食後に食べるもの」から、「疲れを癒す、夜のひとときの楽しみ」へ
スーパー・コンビニのスイーツを「夜」に食べる人(2009年:28.3%→2019年:34.9%)は、6.6ポイント増加している。「夜」に食べる女性(19.4%→29.8%)が 10.4ポイント増加しており、特に30代(17.6%→40.1%)では、22.5 ポイントと大幅に増え、「夜にスイーツを食べる女性30代」の数値は、10年前から倍増していることが分かった。
スイーツを「ひとりで」食べる女性(45.0%→51.3%)も6.3ポイント増加していることから、女性が仕事や家事を終えて、疲れを癒し、自分へのご褒美としてスイーツを食べる傾向が以前より強くなっていることが分かった。
男性では、30代(47.5%)、40代(49.1%)が共に約半数となり、特に男性40代(34.5%→49.1%)は14.6ポイント増加し、全性年代中で最も「夜」にスイーツを食べる割合が高いことがわかった。男性10代(38.1%)、20 代(37.9%)と、若い層も約4割となり、多くの男性が「夜スイーツ」を楽しんでいることが見て取れる。
働く女性の増加などによる生活スタイルの変化から、「スイーツは食後のデザートに」という意識が変化し、好きな時間にスイーツを楽しむ人が増え、スイーツの役割も変化している様子がうかがえる【図 19、23】。
スイーツの役割に変化。「食後のデザート」から「自分へのご褒美」に
スーパー・コンビニのスイーツを食べたいと思うタイミングは、1位「甘いものが食べたい時」(58.4%)、2位「疲れている時」(42.0%)、3位「おやつの時」(39.7%)となった。
2009年と比較すると、「おなかが空いている時」(2009年:33.9%→2019年:21.3%)が12.6ポイント、「食後のデザートに」(51.0%→39.5%)が11.5ポイント減少した一方で、「自分へのご褒美に」(20.0%→33.2%)が 13.2ポイント増えた【図24】。
「自分へのご褒美に」スイーツを食べたい人は、女性10代(51.6%)、女性20代(51.8%)が5割以上、女性30代(48.6%)が4割以上と、幅広い世代の女性から回答があった。男性でも10代(42.2%)、20代(43.5%)と若い層は4割以上が回答した【図25】。
「夕食時」にスイーツを食べる人が減り、「ひとりで」食べる人が増加していることからも、スイーツが「食後のデザート」から「自分へのご褒美」へと役割を変えて楽しまれていることがうかがえる結果となった。
スイーツ男子と個食の時代がスイーツ需要の拡大に
調査結果をもとに、日本におけるスイーツの進化および今後予想される変化について、大手前大学総合文化学部 スイーツ学・教授の松井博司さんがコメントを寄せているので、紹介していきたい。
松井博司(まつい・ひろし)さん
大手前大学 総合文化学部 スイーツ学・教授。大学院修了後、研究開発に従事。その後独立開業し製菓会社を設立。洋菓子技術の取得のため国内、ヨーロッパ各地で研修。2003年、大手前短期大学に製菓学科を設立させ、さらに、2011年、4年制大学としては日本初の「スイーツ学専攻」を設立。スイーツの学術的体系を整えることに尽力する。
●日本におけるスイーツのガラパゴス化
現代社会、とりわけ日本のスイーツ事情は特殊化、あるいはガラパゴス化していると思われる。例えば、デパ地下のスイーツ売り場が充実していること、毎年のように新しいスイーツのブームが起きていること(仕掛けられていること)、自国の和菓子と他国の洋菓子の消費割合がほぼ1:2であること(生菓子の割合)、多様な販売形態・販売店舗が存在すること、などが挙げられる。こうした中で、さらに独自進化しているものが4つある。
(1)求める甘さの変化
スイーツという言葉の意味はもちろん、英語の“甘いもの”から由来しているが、現在ではお菓子全般を指す意味で使われている。しかし「甘くない方がおいしい」という、甘さ離れの傾向が出てきている。それは、砂糖の使用量が20年前のおよそ半分に近い量になってきたことからも明らかである。また砂糖の甘さに頼らず、素材本来の味を活かした自然な味わいのスイーツが求められている。
(2)スイーツを好む人の変化
辛党の男性が多かった時代から、男性らしさや女性らしさが強要されなくなってきた社会環境の変化もあり、甘党の男性の存在感が増し、スイーツ男子という言葉が生まれた。そのことが男性には敷居の高かった専門店での購入に加え、スーパーやコンビニといった手軽なお店での購入への変化を促進した。また、いろいろなものを食べたいというニーズに合わせ品揃えの充実が若い女性もターゲットにして促進された。
(3)スイーツのヘルシー志向
女性はダイエットを求め、中高年の方は生活習慣病を気にする。このことから、健康を考える商品のラインアップの増加を促した。チョコレート業界がその口火を切ったが、今後はケーキやスイーツ業界でも進むと思われる。
(4)スイーツの食感の変化
硬い食感がおいしくないと感じる傾向は年々強くなってきている。特に女性と年配者では、その傾向が顕著である。一方若い世代では、単調な食感では物足りなくザクザク、パリパリ感を求めている。また、米粉の活用がもちもち感の普及にも貢献している。
今回のアンケート調査結果を見ると(2)と(3)の現象がはっきり見えてきている。(1)に関しては既にさまざまな商品で甘さ控えめの傾向は取り入れられている。(4)の傾向は今後さらなる多様な食感を生み出すことにつながるかもしれない。
●スイーツ男子と個食の時代がもたらす今後のスーパー・コンビニスイーツの変化
別の調査でも、男性は、簡単に手早く食べられるもの、すなわち、シュークリーム、プリンが好きなスイーツであるとの結果が出ているが、女性ほどケーキの種類を食べていないこともその背景にはある。スイーツ男子の存在は、今後好みの多様化によるラインアップの増加につながるだろう。
食生活では個食の時代(個人、一人一人が食事をとる)といわれている。まさにスイーツもそれを反映して、自分で購入し自分で食する傾向が現れている。一人暮らしの増加に伴いこの傾向はさらに進むだろう。上記のような変化により、スーパー・コンビニにおけるスイーツ需要の拡大は確実に進んでいるといえる。
<調査概要>
■実施時期:2007年から2019年まで毎年実施
■調査手法:インターネット調査
■調査対象:16~64歳の男女約 1000人
※ スコアの構成比(%)は小数点第 2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも 100%にならない場合がある。
※ 各年の結果については、居住エリアおよび性年代の人口構成比に合わせてウェイトバック集計をしている。
レポート内で表示しているサンプル数はウェイトバック後のものとなる。
※ 上記、また本ページ以降、説明がないものは2019年のデータになる。
出典元:株式会社モンテール
構成/こじへい