商品として魅力的か? ★★★★ 4.0(★5つが満点)
新型「フィット」のカタログには、「日常がもっと心地よくなるように。」とある。素晴らしい考えだと思う。新型「フィット」は、ユーザーが日常的な用途の中で心地よくなれるクルマを目指したという。概ねその通りに仕上がっていたと思う。
しかし、もう少し検討と開発を重ねるとさらに良くなるはずのところもある。その最も大きなものは、前述した通りのハイブリッド版のこもり音だ。意外だったのは、カーナビが、CarPlayとAndroid Autoに全く対応していないことだった。オプション設定も、グレード別の設定も行なわれていない。ホンダは日本の自動車メーカーの中で、いち早くCarPlayとAndroid Autoに対応したメーカーだったはず。軽自動車の「N-ONE」にいたるまで、すべてのモデルに対応させていたのに、なぜなのか?
ようやく他の日本車メーカーも(アメリカ仕様に遅れて)日本仕様でも対応させるクルマが増え始めてきたのに、ホンダが逆行する理由がわからない。ナビゲーションにグーグルマップスを使ったり、SMSを読み上げ音声で返信できたり、Spotifyで音楽を聴くのにこれほど便利なものはないからだ。
メディア試乗会で、新型「フィット」に自分のiPhoneをつなげて、CarPlayで操作しようと何度も試みたがどの階層にも見つからず、後で広報担当に質問したら、同氏も新型「フィット」にCarPlayがインストールされていないことを知らなかったという。
走るだけで十分、カーナビも音楽も車載器で十分という人にはそれで良いのかもしれない。しかし、ついこの間まで、「そのメリットの大きさをユーザーに伝えたい」と僕に熱く語っていたホンダの他の車種の開発者たちがいたのは事実だ。
CarPlayがインストールされていなくても、もちろん「フィット」は快適に走るが、そうした些細なところにこそメーカーの姿勢というものは現われるものだと思っている。現代のユーザーはインターネットの利便性をカーライフでも有効活用しようとしている。そうした世の中の流れを感じていないのだろうか。新型「フィット」では、その素晴らしいコンセプトがクルマ造りにキチンと反映されている部分と必ずしもそうではない部分が並存しているのが惜しい。今後の熟成を期待したい。
■関連情報
https://www.honda.co.jp/Fit/
文/金子浩久(モータージャーナリスト)