花粉症がつらいこの季節。外でくしゃみ・鼻水が止まらないのはまだわかる。けれど、オフィスの中でも症状が続くのは何で?……と、疑問をお持ちの方もいることだろう。
その原因、「隠れダスト」によるものかも知れない。
「隠れダスト」とは、チリや花粉、カビ、細菌など、床に存在し、空気中に舞い上がりやすいが、肉眼では見えにくいため、人の手では取り残してしまうごみを総称で、ソフトバンクロボティクス株式会社が環境アレルゲンinfo and care株式会社との共同調査を元に独自に定義したものだ。
今回、オフィスで働く全国の男女516人を対象にした「オフィスの“隠れダスト”に関する意識調査」が実施されたので、その結果を紹介していきたい。
花粉症患者の約7割が「オフィス内でも花粉症を自覚」
オフィスでの花粉症の感じ方について尋ねる調査が行われたところ、「オフィスで花粉症をよく感じる(17.0%)」「やや症状を感じる(48.9%)」と回答があり、花粉症患者の約7割がオフィスで花粉症の症状を感じていることが分かった。
また、花粉症の症状の一つである集中力の低下や眠気など、仕事に対する影響について尋ねる調査が行われたところ、「仕事に対する影響がある(19.6%)」「仕事に対する影響がややある(46.3%)」と答えた花粉症患者も約7割となった。
これらの結果から、オフィスの花粉が働く人に影響を与えていることが分かる。
オフィスの「隠れダスト」からダニ、花粉などを検出。健康被害が出るカビも
■NPO法人東京アレルギー・呼吸器疾患研究所 環境アレルゲン班 班長 白井秀治(しらい・ひではる)
オフィスの床に潜む「隠れダスト」を明らかにするため、都内6カ所のオフィスを対象に、「隠れダスト」を分析する実態調査が行われた。併せて、住居のダストについても調査され、オフィスとの比較が行われた。
■住居よりも高い数値で準揮発性有機化合物(SVOC)が検出
SVOCは全てのオフィスからフタル酸ジ-2-エチルヘキシルが検出され、住居に比べて高い値が検出された。最も高いオフィスではホコリ1gあたり3,203 μg*となり、住居の平均である111 μg*の約29倍という結果が出た。*μは1/100万
■住居に比べてオフィスはカビの量が多い傾向。健康被害が出るカビも検出
<オフィスの隠れダストから検出されたカビを培養したもの>
オフィスのカビは住居に比べて平均的に多い傾向だった。また、特に注視することとして全てのオフィスから、呼吸器に関わる健康被害が報告される「コウジカビ(アスペルギルス属)」が多種類検出された。
その他、住居に多いとされるアオカビも全てのオフィスで検出され、その数は今回調査した住宅に比べ最大で10倍以上も多い結果となった。
■花粉、ネコアレルゲン、ダニなどのアレルギーに関わる物質も検出
実験を行った12月は、スギ花粉がまだ飛散していないと考えられる時期だが、オフィスの1カ所から検出された。本格的な花粉シーズンには、花粉がオフィス内に侵入し、「隠れダスト」として床に残留する可能性が考えられる。
また、全てのオフィスがネコを飼育していないにもかかわらず、全てのオフィスからネコアレルゲンが検出された。一方、ネコを飼育していない住居では全住居でネコアレルゲンは検出されなかった。
ネコを飼育している人などからネコアレルゲンがオフィスへ持ち込まれている可能性が考えられる。その他、細菌とダニは住居に比べ平均的に少ない傾向だったが、オフィス内に存在することが明らかになった。
隠れダスト対策は「床掃除」が盲点
「(オフィスの)どの場所に花粉が多くあると思いますか?」という質問では、約50%のオフィスワーカーが「空気中(53.5%)」と回答したものの、「執務室の床(1.4%)」「応接室/会議室の床(0.2%)」と床に花粉が多く存在すると回答した人はわずかであるという結果になった。
また、花粉症対策として具体的に実施しているのは、マスクや空気洗浄機という回答が多く、床の対策にまでは及んでいないことが分かった。これらの結果から、オフィスの花粉症対策では「床掃除」が盲点となっていることが見て取れた。
さらに、自社のオフィスの「隠れダスト」対策について、オフィスワーカーに尋ねる調査が行われたところ、「あまり対策はしていない(34.5%)」「まったく対策していない(41.1%)」と7割以上が不十分と回答した。
前述の通り、花粉症患者の多くがオフィスで花粉症の症状を感じており、仕事に影響すると回答する一方で、多くのオフィスワーカーが自社の「隠れダスト」対策を不十分だと感じていることが分かった。
「隠れダスト」対策で、約8割の人が仕事への集中度や効率を上げられると回答
これらオフィスでの花粉症の症状の対策について、「オフィス内の隠れダストをキレイに清掃することによって、あなたの仕事への集中度や効率はどの程度変わると思いますか?」と尋ねる調査が行われたところ、「仕事への集中度や効率がとても上がると思う」「やや上がると思う」と答えた人は77.5%だった。
オフィスの「隠れダスト対策」をすることで、多くの人にとって働きやすい環境になり、仕事の生産性を向上させられる可能性があることが分かった。
花粉による経済損失は約2,860億円というデータも。「隠れダスト」への対策が仕事の効率を上げる可能性
日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 松根彰志(まつね・しょうじ)教授
隠れダストに含まれる、チリや、花粉、カビ、細菌、化学物質はさまざまなアレルギーなどの症状を引き起こす可能性があります。
今回の意識調査では、花粉症患者の約7割がオフィスでも花粉症の症状を体感していることが分かりました。
花粉などのアレルゲンは、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、ドライアイなどの症状を引き起こすため、オフィスで働く人にとって、集中力の低下や疲れやすくなるなど、仕事の効率低下につながります。
過去の論文では、花粉症による経済損失は2,860億円*1というデータもあります。床にある花粉は舞い上がることで、仕事中の人に影響があると考えられます。
今回の調査ではわずか1.6%の人しか床にも花粉が多いと回答していませんでしたが、窓や玄関、衣服についた服がオフィス内に入ると、空気中から床に落ちて「隠れダスト」になります。
「隠れダスト」は、定期的な床の掃除をすることで、ある程度の対策は可能です。「隠れダスト」は目に見えにくいため、一見きれいに見える床でも掃除を行う必要があり、さらにムラなく掃除をすることが重要になります。
さらに、「隠れダスト」は空気中に舞い上がりやすいので、それを予防するため、マスクや空気洗浄機なども有効になるでしょう。これらの「隠れダスト」対策をすることで、オフィスワーカーの体への負担が減り、仕事の効率が上がる可能性があります。
*1 科学技術庁(2000年)
医療費や労働効率の低下による経済的損失は約2,860億円というデータも。
現在、2000年当時よりも患者が増えていることを考慮すると、3,000億円を超えている可能性もある。
<調査概要>
調査名:「オフィスの“隠れダスト”に関する意識調査」
調査期間:2019年12月26日(木)
調査対象:全国の20~50代のオフィスで働く男女516人
調査方法:WEB定量調査
出典元:ソフトバンクロボティクス株式会社
構成/こじへい