今やタブレットというジャンルでは唯一無二の存在となった『iPad』。無印からmini、Air、Proとラインアップも広がっている今、どう選ぶべきか。初代から『iPad』を使い続けるふたりのジャーナリストに聞いた。
迷いながらもうまく市場のニーズに応えてきたアップル
石川 初代『iPad』発表時、アップルのスティーブ・ジョブズ前CEOは「9.7インチがベストだ」と言ってたんですよね。でもその2年後には、7.9インチの『iPad mini』が出てきた。同じく『iPhone』発表時にあれだけスタイラスペンを否定していたのに、2015年には『Apple Pencil』を出している。『iPad』に関しては、アップルもかなり迷いながらやってきたという印象があります。
松村 実際に数字を見ても、途中、販売にかなり苦戦しているんですよね。スマートフォンが進化する一方で、タブレット端末全般がダメになっていく中、本当にここまでよく生き残ったなと思います。安価な『Kindle Fire』や、PC同様に使える『Surface』など、他社の動向や市場のニーズに柔軟に対応してきた結果でしょうね。
石川 ペンやキーボードが使える『iPad Pro』は、『Surface』がなかったら生まれていなかったもしれない。「iPadOS」になってマルチタスクや外部ストレージに対応するなど、よりPCライクに使えるようになったのも、やはりそういうライバルの存在が大きいんじゃないかと思います。
『iPhone』の成功なくして『iPad』の成功なし!
石川 『Surface』にない『iPad』ならではの強みは、圧倒的なアプリの数ですよね。これは「iPadOS」になるまで、同じ「iOS」を採用してきた『iPhone』のおかげ。だから『iPhone』の成功なくして、『iPad』の成功はなかったと思います。アプリがたくさんあるのは「Android」でも同じですが、Androidのタブレットはメーカーごとにいろいろなサイズ、仕様があって、アプリが必ずしもそのタブレットに最適化されているわけでない。
松村 その点、アップルはやはりハードとソフトを両方やっているのが、大きな強みですよね。両方やっているからこそ、OSのアップデートもしっかりサポートされるし、結果として安心して長く使うことができる。実際に僕自身も、3年ほど同じ機種を使い続けていた時期があったくらいです。長く性能を発揮できる点は、企業や学校がタブレットを導入する際、大きなアドバンテージになります。
石川 グローバルで展開しているので、企業の導入事例もグローバルでたくさんある。そこもビジネス的には大きな強みでしょうね。
つながる安心感のWi-Fi+Celluerがおすすめ
松村 今『iPad』のラインアップがたくさんあって、どれを買ったらいいか迷う人も多いと思いますが、初めての人にはまず、手頃な価格で『iPad』でできることを一通り体験できる、無印の『iPad』をおすすめします。一方、小さいサイズが欲しい人には『iPad mini』で、この大きさにも一定のニーズがあると思う。『iPad Pro』は仕事でバリバリ使いたい、ビジネスマンやクリエイター向けですね。
石川 Wi-Fiとセルラーでは、やはりセルラーモデルですね。SIMカードに加えてeSIMも使えるので、海外出張時にもそのままつながるのが魅力。どこでもつながる安心感に加えて、万が一なくしてしまった時も、位置を特定して探しやすいというメリットがあります。
松村 iCloudなどクラウドストレージを活用するのが前提なら、メモリー容量は少ないモデルでも問題ないと思います。もちろんWi-Fiモデルをテザリングでつなぐ方法もありますが、テザリングするとスマホのバッテリーが消耗するので、外で使うことが多いなら、僕もセルラーモデルをおすすめします。
テレワーク化でさらにニーズ増加!ラインアップは淘汰が進む!?
石川 現状、ラインアップが増えすぎているので、これは今後淘汰されていくでしょうね。特に『iPad Air』が中途半端なポジションなので、『iPhone』と同じように『iPad Pro』と無印という形に、なっていくのではないでしょうか。
松村 『iPad Pro』を使い始めると、本当にPCの出番が少なくなる。バッテリーの持ちや機動力を考えると、最近は外に持ち出すのは、『iPad Pro』のみになっています。企業では今テレワークの導入に合わせて、コミュニケーションにチャットを採用するなど、より機動力が求められるようになってきているので、今後もアプリが充実する『iPad』の活躍の場はますます広がっていくでしょうね。
石川 アプリの充実度やどこでもつながること。性能、価格のいずれをとっても、今はタブレットでは『iPad』のひとり勝ち。残念ながらほかに選択肢がほぼありません。とはいえ、常時接続可能な『Surface Pro X』なども出てきているし、折りたたみできるフォルダブル端末も登場しているので、このあたりが今後『iPad』にどんな影響を与えるかにも注目したいところです。
スマホ/ケータイジャーナリスト
石川 温さん
インフラからデバイスまで世界中で取材・執筆。ラジオNIKKEI『石川温のスマホNo.1メディア』パーソナリティー。近著は『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN刊)。
【こんな使い方しています!】
「torne」で出張先からテレビを見たり、『Magic Keyboard』をつないで原稿執筆も。
ITジャーナリスト
松村太郎さん
モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆するほか、企業のアドバイザリーやプランニングも手がける。
【こんな使い方しています!】
『Apple Pencil』とキーボードを組み合わせて作業を効率化。チャットで情報共有など。