人気ドラマ「ストレンジャー・シングス」で希少疾患の知名度が向上
米国のティーン俳優、ゲイテン・マタラッツォは、骨の形成異常を特徴とするまれな遺伝性疾患である鎖骨頭蓋骨異形成症(CCD)を生まれつき抱えている。
マタラッツォはNetflixのテレビドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」に出演しているが、米オクラホマ州立大学のグループが実施した調査で、このドラマのヒットによりCCDの認知度が向上したことが示された。
この研究結果は「JAMA Otolaryngology – Head & Neck Surgery」2月20日オンライン版に掲載された。
米国立衛生研究所(NIH)によると、CCDの発症頻度は100万人に1人である。CCDの主徴は骨の形成異常であり、特に鎖骨と歯に顕著に現れる。
鎖骨は、一部しか形成されないか、または完全に欠損するため、両肩が前方に傾斜した状態となる。歯は一部が欠損し、萌出した歯にも歯並びや形状に異常が認められることがある。
そのほか、脊椎側弯や高い額、頭蓋縫合(頭蓋骨を形成する骨のつなぎ目)の癒合の遅れなどが見られることもある。
「ストレンジャー・シングス」では、マタラッツォだけでなく、彼が演じるダスティン・ヘンダーソンもCCDである。ダスティンが同シリーズに登場した2016年以降、彼はCCDがどのような疾患なのかを人々に教える役割を果たしてきた。
同シリーズの視聴者の一人でもある米オクラホマ州立大学のAustin Johnson氏は、このドラマを見て、グーグルでCCDを検索。
その際、「このドラマを見てCCDのことを検索した人は、他にもたくさんいるのではないか」と考えたという。
そこで、Johnson氏は同大学のグループでGoogle Trendsを使ってそのことを調べることにした。
その結果、「ストレンジャー・シングス」シーズン1~3の配信後に、CCDの検索件数が劇的に増加していたことが分かった。
Johnson氏らによると、2019年7月のシーズン3の配信後から1週間以内のCCDの検索件数は94%以上も増加していた。
また、この間に、ホスピタル・フォー・シック・チルドレン(カナダ)が運営する子どもの健康情報サイト“AboutKidsHealth”へのアクセス数が急増。
同サイト内のCCDに関するページへの訪問数は、「ストレンジャー・シングス」がスタートする前は1週間当たり5~80件程度であったが、同ドラマのシーズン3配信後の1週間で1万件に跳ね上がっていた。
こうしたオンライン上での人々の関心の高さは、現実社会においてどんな意味を持つのだろうか。
非営利団体である小児頭蓋顔面協会のErica Mossholder氏はそこに大きな意味を見出し、「CCDは非常にまれだが、口唇裂や口蓋裂といった頭蓋顔面障害はより一般的である。人々がこのような障害について知ることは、こうした疾患を抱える人の日常生活を大きく変えることにつながる」と説明する。
また、「映画や小説では、顔面の奇形は悪役の印として描かれてきた。しかし、このドラマに出てくるダスティンは、たまたまCCDを抱えている普通の少年であり、それを、図らずもCCDの少年が演じている。このことは、あらゆる頭蓋顔面の疾患を抱える子どもたちに希望をもたらし、力づけているはずだ」としている。
一方、米ミシガン大学C. S. モット小児病院の形成外科医であるChristian Vercler氏は、CCDに関する検索数の増加から浮き彫りになった人々の関心の高まりが、頭蓋顔面障害に関わる財団への寄付の増加につながったかどうかを調べた結果にも興味があると話している。(HealthDay News 2020年2月20日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/article-abstract/2761584
構成/DIME編集部