シングルにとって理想の間取りとは?~ライフプラン編~
生活の基本条件である「衣食住」。「住まい」は我々の暮らしを支える重要要素であることに疑いの余地はない。当たり前に家を出て職場へ行き、当たり前に帰宅する。さて、その我が家は、自分にとって最適な住空間だろうか。ライフスタイルにあった使い勝手の良い間取りだろうか。
1月末に開催されたイベント「DIME after7 session with日鉄興和不動産/シングルにとって理想の間取りとは?」で得られた貴重なコメントをふまえ、3回シリーズで「シングルにとっての理想の間取り」について考えていく。
「理想の間取り」「理想の住まい」は、「3つのP」で考えよう!
住み替えを考えていたり、何だか住み心地が悪いと感じていたりするならば、住まいに求める条件を「3つのP」で整理することをお勧めする。
「3つのP」とは、Place(立地条件)、Plan(間取り・構造・設備仕様)、Price(価格・費用)の3つだ。居住用も非居住用も不動産はおおよそこの「3つのP」で成り立っている。場所も良し、プランも良しとなれば高価格。手頃な価格だと思ってみると、場所もプランもイマイチなどということはよくある。大切なのは、「3つのP」が自分にとってベストバランスの住まいを選ぶことである。
それにはまず、自分のベストバランスを知る必要がある。
手順はこうだ。まず、住まいへの希望条件をすべて書き出す。そして、「3つのP」に分類。さらに、Place、Plan、Priceの各条件に優先順位をつけていく。1枚の付箋に1つの条件を書き出せば並べ替えも簡単で楽しい。「3つのP」を意識していないと、立地条件にこだわりすぎたり、設備仕様にこだわりすぎたり、予算を度外視して住まいを選んでしまったり、とあまり良いことは無い。
「3つのP」で、理想の住まいのベストバランスを構築していこう。
座談会に参加したシングル男性に回答してもらった結果は、圧倒的にPlace重視。
現役のビジネスパーソンにとって「利便性」は必須条件である。
「理想の住まい」は、「生涯軸」で考えよう!
「3つのP」で住まいに求める条件を書き出し、いざ、住まい選びを始めると、壁にぶつかるケースがある。それは、「理想の暮らしとは、どの時点の暮らしなのか」という問題だ。人生は一度きりだが、ライフスタイルは変化する。特にシングルは変化する可能性が大きい。理想の住まい選びは現在地点だけを考えるのではなく、「生涯軸」という中長期視点がポイントとなる。
ライフプランニングのすすめ
ライフプランニングは生活設計などと説明されるが、簡単に言えば「誰と、どこで、どのように暮らしたいか」を考えること。先の「3つのP」の手順に倣えば、住宅購入、転職、起業、結婚、旅行、退職、等の各ライフイベントを付箋に書き出し、時間軸の表(ライフイベント表)に並べることとなる。
横軸を時間軸とすれば、縦軸は、「ライフスタイル」「住まい」「仕事」「家族」「趣味」「マネー」などであろうか。縦軸に決まりはないが、「退職」など、必ずやってくるライフイベントと「旅行」など希望のライフイベントの付箋を色分けするとわかりやすい。そして横軸のエンドは、まずは「100歳」で考えたい。
すると、「住まい選び」が見えてくる。
例えば、30歳で「終の棲家」を購入したとしよう。65歳で退職すると、100歳まではさらに同じ35年間。終の棲家を30歳で決定してしまうのは、現実的に厳しい。変化するライフスタイルに常に最適で、住まいの寿命を自分の寿命に合わせるには、メンテナンスも高度化する。「終の棲家」として選択するのではなく、住替えの可能性も考えて選択することが望ましい。
また、「住まいの買い時」も意識したい。転職・起業したいならば、確定してからPlace選びをした方が賢明だろう。一方で、転職・起業したばかりだと住宅ローンが借りにくい。ライフイベント表は、住まい選びを俯瞰するのに効果満点だ。
不確定要素を最大限に取り込むリスクに要注意!
シングルの住宅相談では、「結婚した時のことを考えて、広めの住宅を購入した方がいいですか」という質問がよくある。「結婚時期や結婚相手は決まっているのか」と尋ねると、「予定はない」という答え。現在は料理をしないので大きなキッチンは不要、浴槽は利用しないのでシャワールームだけで十分というライフスタイルにもかかわらず、未来の結婚相手のためのファミリータイプの間取りの購入が豊かな住まいと言えるのかどうか。
結婚時期も、結婚相手がその住まいを気に入るかどうかも、保証はない。
シングルから「子どもが生まれた時を考えて、小学校に近い住宅を買っておいた方がよいか」という類の質問はあまりないが、不確定要素という点では同じである。これならばまだ、「老後のために、病院に近い住宅を購入した方がよいか」という質問の方が現実的だ。なぜならば我々は既に生まれていて歳を重ねる。だがこれとて、病気になるとは限らないのだから不確定要素には違いない。不確定要素を取り込み過ぎると、空間と資金に時間を乗じた無駄がでるリスクが高まることも考えたい。
変わるものと変わらないもの。変えたいことと変えたくないこと
「リビングルームの充実」は、座談会参加者の共通意見だった。
ビジネスパーソンのシングル男性が、自宅でもっとも滞在する場所がリビングルームなのだろう。だが、その位置付けは様々だ。単純に広ければ良いのではない。趣味のオーディオのためのリビングルーム。ホームパーティのためのリビングルーム。仕事部屋とリビングルームや寝室とリビングルームの位置関係。ほっこりタイムのリビングルームなど。いずれもモデルルームという現物を見学したからこそ表面化したリアルな希望だったことが興味深い。
変化する可能性が高いシングルの間取り&住まい選びは、生涯軸で人生を俯瞰し、変わるものと変わらないもの、変えたいことと変えたくないことを明確にしたい。結婚するかしないか、転職や起業、年代にかかわらずリビングルームの充実が自分の人生を豊かにするならば、リビングルームに徹底的にこだわるべきである。現役時代は交通利便性を重視したいならば、自然環境はリタイア後に住み替え、現役時代は交通利便性を活かして週末にアウトドアを楽しむこともできる。だが、超高齢になると自然環境よりも生活利便性が重要になるかもしれない。
理想の住まい・間取りは、生涯軸で考えたい。
だがそれは、終の棲家を早期に持つことではない。
住まいは一生ものという「終の棲家」強迫観念を捨て、少しフレキシブルに考えてみてはどうだろう。現役時代は、シングルライフに適したミディアムコンパクトマンションを購入し、ライフスタイルの変化に伴って売却するなど、住替え、売却を意識した住まい選びも一案だ。
ライフスタイルが変化する可能性が高いシングルは、住まい選びも可変性を意識して欲しい。
2020年11月下旬竣工予定の「リビオレゾン月島ステーションプレミア」は東京メトロ有楽町線、都営大江戸線「月島」駅4番出口より徒歩2分の駅近物件。
売却や賃貸運用といった選択肢も広がりやすい。
自分予算プランナー 大石泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役
株式会社リクルートにて『週刊住宅情報(現:SUUMO)』の企画・編集・審査に約15年たずさわった後、2000年に個人のファイナンシャル・プランニングの必要性を感じて独立。住まい、キャリア、マネーを3本柱に個別相談、講演、執筆等にて個人の豊かな暮らしをサポートしている。ファイナンシャル・プランナー(CFP®️)、キャリアコンサルタント。
協力/日鉄興和不動産
取材・文/大石泉 イベント撮影/末安善之