日比谷線霞ケ関駅と神谷町駅との間に6月6日、虎ノ門ヒルズ駅が開業する。日比谷線にとって新駅の開業は、前回の東京五輪で全線開通を果たした1964年以来56年ぶりの出来事。そんな新駅について開発のキーマンに話を聞いた。
街と一体となった駅は都市整備計画の要に
環状2号線の整備や周辺のビル開発が相次ぎ、国際的なビジネス拠点へと再編が進む虎ノ門。その中で交通結節強化の鍵を握るのが、虎ノ門ヒルズ駅(以下新駅)だ。
「新駅は開業後も工事を続け、今後整備予定の駅広場との接続など、周辺の開発と連携しつつ、駅・街一体の街づくりを進めていきます」
そう話すのは新駅周辺の再整備を担うUR都市機構・星野光一さん。開業時には銀座線虎ノ門駅と地下通路もつながり、新設のバスターミナルと併せエリア一帯のアクセス向上が期待される。
その新駅工事が今、日比谷線のすぐ横で行なわれている。
「線路の横を掘った後、線路を支えつつ工事を行なうアンダーピニング工法という特殊工法を採用。運行中の列車、乗客に影響を及ぼさないよう施行しています」(東京メトロ・小寺和己さん)
こうした工事を経て完成する新駅は街との一体化を象徴する「結い」をコンセプトにしたデザイン。
「6月6日は駅単独での開業となりますが、将来、再開発の駅広場が完成すると、ガラスのスクリーンを挟んで、日比谷線が外から見える駅に。今からとても楽しみです」(東京メトロ・原田賢一さん)
霞が関官庁街に隣接し、新たなるビジネスの中心地として注目が集まる同エリア。新駅の誕生でその期待はますます高まりそうだ。
新駅は都市開発事業が実施される新橋・虎ノ門地区の中心に位置。銀座線虎ノ門駅と長さ435mの地下通路で結ばれる。
虎ノ門ヒルズ駅の注目ポイント
【1】ビルと交通インフラの一体整備
【2】地下でつながる、街と一体化した駅
【3】東京五輪の輸送バスでも注目
6月6日開業【東京メトロ・虎ノ門ヒルズ駅】
地上と地下をスムーズに行き来できる拠点駅に
「都市再生特別地区(虎ノ門一・二丁目地区)都市計画(素案)の概要」より作成。2023年の最終完成予定図
新駅とともに東西の駅広場、デッキ上の広場空間が設置され、街と一体化した駅に。吹き抜けの西駅広場は明るく開放的な空間が特徴。
線路外側に2本のホームを設置。床は、駅周辺に多い寺社仏閣からイメージした石畳風のデザイン。開業と同時にホームドアも使用開始予定だ。
通常の営業運転を妨げない形で工事が進む。
日比谷線を走る13000系車両。新駅開業と同時に座席指定制列車「THライナー」もデビュー。東武伊勢崎線の久喜駅と日比谷線の恵比寿駅とを結ぶ。
東京五輪でも注目の「東京BRT」
今回、新駅に直結する形でバスターミナルも新設。空港リムジンバスのほか、都心と臨海部を結ぶ新・高速輸送システム「東京BRT(Bus Rapid Transit)」も発着する。東京五輪前には、プレ運行を開始する予定だ。
東京BRTは、公共交通優先施策や運賃収受の工夫などで、速達性・定時性の確保を目指す。都内〜臨海部が約20分で結ばれる見込み。
車体は「地域をつなぐ」イメージのレインボーカラー。2022年度以降の本格運行では、ピーク時約2000人/時(片道)、将来的には約5000人/時の輸送を目指す。
取材・文/梅原 淳 写真提供/UR都市機構、東京メトロ