4代目となるフィットは「心地よさ」をテーマに開発された、ホンダ渾身の新型車。プラットフォームをキャリーオーバーしながら、中身はまるで新しい、先進のコンパクトカーへと生まれ変わったと言っていい。ここではフィット4の1.3Lガソリンモデル、および、フィットとして新設定された、注目のクロスオーバーテイストをちりばめたクロスターグレードの試乗記をお届けしたい。
と、その前に、性能や室内の広さなどをむやみに追求しない・・・そんなコンセプトもある、見識ある新型フィットのパッケージングについて解説しよう。まずは3サイズとホイールベース。先代のフィット3は全長3990×全幅1695×全高1525mm、ホイールベース2530mm。13G・Lホンダセンシングの車重は1060kgだった。対して新型フィットは全長3995×全幅1695×全高1515mm、ホイールベース2530mm。全車ホンダセンシング標準装備となった、1.3LガソリンエンジンのHOMEグレードで車重は1090kgとなる。
つまり、全長はほぼ同じ、全幅は5ナンバーサイズにギリギリ合わせるため同一、全高は10mm低く、ホイールベースも同一(プラットフォームをキャリーオーバーしているため)。車重は装備の充実もあって、ほんの少し重くなった程度である。
で、実際に身長172cmの筆者が適切なドライビングポジションを取ると、運転席のシートハイトアジャスターを好みのもっとも低い位置にセットすると、頭上に200mmのスペースがあり、これは先代同等。その背後に座ると、頭上に120mmと、先代の140mmより天井が低くなったようだが、これは、後席シートクッションの厚みを増したからと推測できる。事実、前席はもちろん、後席のふんわりとしたソファ感覚のかけ心地は(ファブリックシートの場合)、格段に向上しているのだ。ただし、前両席ともに、センタータンクレイアウトを採用しているため、シート下に燃料タンクの出っ張りがあるため、足を引きにくいのは先代同様だ。
また、フィットの大きな魅力ともいえる後席膝周り空間は、新旧実測で新型が320mm、先代が335mmとなるが、これも誤差の範囲。320mmでもとびっきり広いことに変わりはない。なお、後席フロア中央のわずかな出っ張りは先代のまま。フリードのようにフルフラットではないものの、中央席に座って足元が窮屈になることはない。また、シート下にはなにもないため(空洞)、前席と違い、足引き性に優れるのは先代から継承。足が引けると、椅子感覚で立ち上がりやすく、降車性ががぜん、よくなるのである。
ただ、後席のシート地上高は、先代の約510mmから610mmに高まっている。これもかけ心地を優先したからと考えてよいだろう。510mmでも決して高すぎることはない。先代が低すぎた、と言っていいかもしれない。
一方、ラゲッジ部分の寸法はどうか。開口部地上高は先代、新型ともに約590mmと、ピタリといっしょ。開口部の段差も約105mm程度で変わらない。が、フロアの奥行は新型が最大660mm、先代が最大700mmとなるものの、幅方向は先代、新型ともに1010mmとまったく同じ。新型の天井高がやや低まるのは、全高が低まっているので、いたしかたないところだろう。
ちなみに、フィットの十八番と言える、後席を格納したときのフロアの圧倒的な低さは、先代の560mmに対して600mmとなるが、これもまた、シートクッションの厚みのせいで、600mmでも十二分に低く、リヤドアからの重い荷物の出し入れやペットの乗降も、依然、楽々、快適である。愛犬家向けに一言述べると、ハッチバックタイプのコンパクトカーのリヤドアから、大型犬などをこれほど乗せやすいクルマは世界中探しても、ほかにない。ラゲッジスペースの拡大に伴うシートアレンジ性では、新型フィットも世界トップレベルである。