ダムや橋梁などを観光するインフラツーリズム流行の流れだろうか、最近話題になっているのが、夜のジャンクションの“鑑賞”だ。
異なる高速道路同士の結節点であるジャンクションは、複数の高架道が立体的に絡み合うかのように走り、SF映画のワンシーンにも出てきそうな異世界感を醸しだしている。首都圏など大都市部では、当たり前にあるものなので見過ごしてしまいがちだが、言われてみれば、夜に下から見上げる光景はなかなか壮観だ。
こんなジャンクションに“萌える”人が急増中だそうで、2019年8月には、ガイドブック『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』(講談社)まで出ている。
同書では、ジャンクション鑑賞の初心者向けに、「立体交差、分岐点、橋脚、曲線、パーツや付属設備、そして背景」という6つの要素に注目するようアドバイスがある。特に、立体交差は「重厚感のある道路が重なり合う光景は圧巻で、まさにジャンクション鑑賞の醍醐味ともいえるポイント」だという。また、分岐点は正面から見ると迫力があるとのことで、こうした箇所がよく見えるポジションを狙うのが、コツになる。
論より実践で、筆者は首都圏に次ぐ「ジャンクションの聖地」・大阪市内にある3つのジャンクションを訪れてみた。
大阪“最強”の阿波座ジャンクション
地下鉄阿波座駅を出てすぐのところに、大阪でも屈指の見ごたえと評価が高い、阿波座ジャンクションがある。1995年に環状線の渋滞緩和に向けて、従来からあった大阪港線の下に新たに道路を設けたため、複雑怪奇ともいえる立体交差ができあがった。
行ってみると、最下層部分は地上までが10メートルに満たず、のしかかるような威圧感は、ジャンクション萌えにはたまらないだろう。
付近を歩き回ってみたが、写真を撮るなら最下層の分岐点が見える、横断歩道そばがベスト。『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』に掲載されている写真も、まさにこのアングルから撮られていた。同書では、ほかに阿波座駅4番出口付近もおすすめだとしている。
天保山ジャンクション
地下鉄大阪港駅を出て朝潮橋駅の方向へ国道172号を道なりにすすむと、見えてくるのが天保山ジャンクションだ。
これは4号湾岸線、5号湾岸線、16号大阪港線が合流した、2つのループを含む複雑な形状となっており、上空から見た様子から「鳥の顔」(ループが鳥の目)にたとえられることもある。
国道172号沿いの盛り上がった歩道橋からは、見どころポイントの1つである分岐を鑑賞できる。
また、下の写真では分かりにくいが、ぐるっと回るループが、実は最大の鑑賞ポイント。歩道橋から下に降りていけば、ベターな撮影アングルを見つけられるはずだ。広角レンズを用いて撮ると、なおよいだろう。
東大阪ジャンクション
ジャンクションは下から見上げるだけでなく、上から俯瞰する鑑賞の仕方もあるが、全国的に見ても、俯瞰できる位置に好適な展望台が立っていることはまれ。
東大阪ジャンクションは例外的な存在で、近くに立つ東大阪市役所が、22階(地上高100メートル)を展望ロビーとして23時まで無料開放しており、そこからの眺めはまさに絶景。
阪神高速13号東大阪線と近畿自動車道を接続する東大阪ジャンクションは、1983年に供用が開始された歴史あるジャンクションだが、ここが夜景撮影ファンに注目されるようになったのは、東大阪市役所本庁舎が建設された21世紀に入ってからのこと。日本夜景遺産に登録されるだけあって、ジャンクション萌えでなくとも惹きつけられる魅力がある。この地域でのデートスポットに組み込むのもありだろう。
今回は大阪市内の3か所を見回るにとどまったが、その経験の範囲で言うと、ジャンクション鑑賞を楽しむには、写真撮影を楽しめるかどうかがカギになると感じた。ライトアップなど演出されているわけでもないので、肉眼で見る限りでは、工場地帯や城郭の夜景ほどにはインパクトはない。そこで、見栄えのする写真を撮ってSNSで見てもらうことが、1つのモチベーションとなる。これに高価なカメラは不要で、入門機でも設定を「極彩色」などにすれば、それなりに美しい写真が撮れる。そして、もともと夜景に興味のある方なら、探訪先の1つにジャンクションを1か所組み込んでおくとよいだろう。案外、“萌える”かもしれない。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)