健康ブームが長らく続いているが、日々の食事を改善して生涯収入のアップを目指すという「世界初」のサービスが話題になっている。
サービスの名称は「WorkUp AI(ワークアップAI)」。オンラインゲームの開発・運営などを手がけるシグナルトークが開発し、2020年1月29日に正式スタート。WEBサービス部分についてはWindows、MacOS、iOS、Androidのいずれにも対応している。
サービスの内容は、最新の栄養学・医学の知見やエビデンスに基づき、どういった食事(食品)がワークパフォーマンスの改善につながるかをAIがアドバイスしてくれるというもの。また、Windows8、Windows10、macOS Majave、macOS Catallinaに対応したPC専用アプリをインストールして「キーボードのタイプ数」や「笑顔の回数」などを自動的に測定し、ワークパフォーマンスを数値化・見える化して、中長期的な効果もわかるようになっている。
現状、個人向けのサービスのみで月額は9800円+税。つまり、1年を通じて利用すれば約12万円になるサービスだが、実際に会員となって使い勝手などを検証した。
食習慣・生活習慣から生涯年収の推定値を算出
最初に「WorkUp AI」のサイトを開き、メールアドレスの登録や月額料金の支払い手続きなど、通常のECサイトと同様の手順を踏んだ後、プロフィールの入力を行う。
入力内容は、生年・月、性別、身長、体重、現在の年収(このうち、身長と体重の入力は任意)。すぐ後に、アレルギーのある食品がないか尋ねられる。
続いて、「AIカウンセリング」が始まる。これは最初に132問からなる質問に順に答えていくというもの。質問数の多さに一瞬たじろいだが、すべて簡単な2択設問にイエスかノーで答えてゆくだけ。自由記述の回答や、答えに迷うようなものはないので、意外とサクサクとすすめていける。
聞かれるのは、「人よりも寝付きが悪いほうですか?」といった日頃の心身のコンディションに関するもの、「週に1回以上パプリカを食べていますか?」といった食生活に関するもの、「直近1か月は仕事への前向き度は高いですか?」といった仕事・職場面に関するものの3ジャンル。「みかんは白い筋を剥かずに食べていますか」というような、マニアックな(?)問いかけも若干あるが、答えに窮するものはない。
全問答えたら、AIシミュレーションによるこの時点での「健康偏差値」、「余命」、「健康寿命」、「生涯収入予測値」などの数値が表示される。
この結果を見て、うろたえる必要は全然ない。今の段階から、食生活を改善することで、いかに各数値をアップさせていくかが、このサービスの肝の部分なので。
この中に「W-Score」という謎の数値が出てくるが、これは「健康と仕事の総合スコア」のこと。労働可能年数や生涯収入をはじき出すベースになるもので、高ければ高いほどいい。AIが指南するメソッドを実行するなどして、この「W-Score」は上げられる。
AIのアドバイスに従い生涯年収をアップ
登録時の「AIカウンセリング」がひとまず終わっての初期画面がこちら。これから日常的に「WorkUp AI」を利用する際は、このインターフェースからアクセスする。
初期画面は、大きく4つのセクション(コーナー)に分かれる。まず、「AI カウンセリング」。最初に行った132個の質問には続きがあって、実はまだ770問残っている。一気に全問を回答する必要はないが、より多くの質問に答えることで、各数値の精度は上がる。試しに200問答えてみたら、健康偏差値は55→56へ、生涯年収は2億5301円→2億5343円へと変化した。
また、「AI カウンセリング」セクションには「AIに聞く」という読み物集もある。内容充実はこれからのようだが、「Work UpのAIが、約700人の健康に関するエキスパートの知見を元にアドバイスを行います」とあり、ユーザーが質問を送り、それに対してAI分析チームが回答を出すという仕組みらしい。
パフォーマンス向上に役立つ食生活のメソッド
「AI カウンセリング」の下にある「メソッド」は、「AIおすすめの食事メソッドはこちら!」と表題にあるとおり、自身の食生活の傾向・課題に基づいて、各食品のレシピ、関連するコラムや統計データが表示されるものだ。表示内容は、「5000名以上のデータと、食事と生活習慣についての50万通りの組み合わせデータ」から導き出されたもので、各ユーザーに最適な情報が提示される。
相当な数の食品があり、「心を前向きにする海苔」「寝心地変えるエリンギ」などネーミングが秀逸で、それだけで大体の効用がわかるのがいい。「6.24万円Up」などとあるのは、その食品を必要十分に摂ることで、生涯年収に上乗せされる推定額を意味する。個別のページにジャンプすることで、その食品の詳細情報がわかるようになっている。また、実際にその食品を摂ったときに押す「Action」ボタンもあり、これはW-Scoreに反映される。
パソコン操作をモニタリングしパフォーマンスの変化を見える化
「ワークパフォーマンス」のセクションでは、「キーボードのタイプ数」「マウスカーソルの移動距離」「パソコンの前にいる時間」「笑顔の回数」などの測定データが記録されている。
これら、日単位・週単位でグラフ表示され、日々の食事の改善によるパフォーマンスのアップを間接的に知る指標となる。
全ユーザー数中の順位もわかる「スコア」セクション
「スコア」セクションは、生涯年収、健康労働年数、W-Scoreにくわえ、先のワークパフォーマンスを(グラフでなく)数値で表示する。ワークパフォーマンスについては、全ユーザー中の順位まで出てくる。
もちろん、これらの数値は改善努力によって変わっていくものなので、少し前の自分と比べてどうかを振り返るための参考情報として役立つ。
「食生活改善=生涯年収の変化」を可視化できる好ツール
何日か試用してみての印象としては、複雑な栄養学・医学の迷宮にはまりこむことなく、今の自分が必要とする食品を把握するのに非常に役立つと感じた。推奨される食品を摂ったからといって、それが「すぐに」パフォーマンス向上に結びつくわけではない。しかし、「WorkUp AI」では、長期的な視点でそれが年収にどう結び付くか教えてくれるので、実行する励みになる。生真面目すぎず、ちょっとしたゲーム感覚で取り組むとよいかもしれない。
コンテンツについては、一般社団法人予防医療研究協会などが監修・執筆にあたっており、「極端な糖質制限」などブーム的な情報とは距離を置いているのも好感が持てる。
月額9800円という利用料金がハードルかもしれないが、3か月の利用で改善効果が実感できない場合は、(条件付きで)利用料金を全額返金してくれる。食生活の改善に関心があり、年収をアップさせたいと考えている方は、トライしても損はないはずである。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)