Bluetoothなどの無線で接続して、スマホのサウンドをイヤホンで楽しむ人が増えている。
ここでは、左右の耳をつなぐケーブルも廃した「完全ワイヤレスイヤホン」と呼ばれるモデルをオーディオのプロがチェック。目的別の選び方をご紹介する。
通信用チップの進化が 多機能化を加速する
『AirPods Pro』に代表されるように、完全ワイヤレスイヤホンはノイズキャンセリング機能を強化したり、10時間を超長時間駆動を可能にするなど、ハードの進化が著しい。その経緯をゴン川野さんに聞いてみた。
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー 5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンド レコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入はすべてオーディオに注ぎ込んだ。
「完全ワイヤレスの進化は、Bluetooth通信用チップの進化と並行しています。2年くらい前に登場したいわゆる第1 世代の完全ワイヤレスイヤホンは、長くても2〜3時間しか連続再生できませんでした。というのも多くの完全ワイヤレスイヤホンは通信用に米国のクアルコム社のチップを用いており、第1世代では性能が十分ではありませんでした。しかし、通信用チップの性能は日進月歩、2020年を迎えた現在では、10時間を超す駆動も可能となっています」
また、長時間駆動で余裕ができた電力消費を活用して「アクティブノイズキャンセリングや音声アシスタントなどの付加的機能を追加搭載し、単なるイヤホンを超えたガジェットへと進化しています」(ゴン川野)というのだ。
「Bluetoothの信号を左右同時 に伝送することで、接続の安定性や長時間駆動、遅延を低 減するモデルや、デジタルサウンドを活用して個人の耳に 合わせたチューニングを可能 にするモデルも登場し始めています。今後の進化に注目し たいですね」(ゴン川野)
アクティブノイズキャンセリングモデル
「アクティブノイズキャンセリング」機能とは、マイクで外部の音を拾ってその逆位相の音を発生させノイズを打ち消すもの。「完全ワイヤレスイヤホンの進化で長時間駆動が可能になり、電力消費をノイズキャンセルに回す余裕ができた。その恩恵としての機能です」(ゴン川野)
最適な感度を持つタッチセンサーコントロール
Apple『AirPods Pro』
2万7800円
本体のタッチセンサー部分に触れることで、音量の上げ下げ・再生/停止・電話の応答・Siri/Googleアシスタントの起動ができる。Qiワイヤレス充電が可能で、AAC、aptXコーデックに対応している。
ノイキャン時も 6時間の駆動を実現
SONY『WF-1000XM3』
オープン価格(実勢価格約2万8000円)
フィードフォワードマイクとフィードバックマイクから信号を受け、精度の高いノイズキャンセル信号を生成。「Adaptive Sound Control」により、パターンに応じて自動でノイズキャンセルを最適化する。
長時間駆動モデル
「クアルコム社など、Bluetoothのチップを提供する各社の開発が進み、省電力化が進んでいます。その結果、2019年後半からのモデルでは10時間を超す長時間駆動も珍しくありません。また、電力に余裕ができたおかげで多機能化も進んでおり、進化の礎になっています」(ゴン川野)
迫力の重低音を15時間連続で再生可能!
オーディオテクニカ『ATH-CKS5TW』
オープン価格(実勢価格約1万5800円)
2層の振動板を採用したφ10mm大口径ドライバーにより、厚みとインパクトのある低域と鮮明な中高域表現を両立。専用イヤピースは抜群のフィット感を実現している。連続15時間の再生が可能。
1万円以下とは思えない高性能と再生時間!
クリエイティブメディア『Creative Outlier Air』
オープン価格(実勢価格約8000円)
グラフェン ダイアフラム採用の5.6mmドライバーを搭載。歪みを抑えた細やかな高音とリッチな低音による優れたオーディオ性能を実現している。イヤホン単体での連続再生可能時間は10時間だ。
防水&防汗 コスパモデル
「耳に装着する完全ワイヤレスイヤホンは、汗の影響を受けやすいデバイスです。防水性能や防汗性能はモデル選びの重要な基準になるでしょう。最近は防水・防汗モデルでも、低価格を実現したタイプが増えています。スポーツをしながら音楽を聞きたい人にもおすすめです」(ゴン川野)
51gの軽量設計なのに防水性能を持ち突然の雨天でも安心
Anker
『Soundcore Liberty Neo』
オープン価格(実勢価格約4999円)
振動板を約35%軽量化したグラフェン素材のドライバーにより、クリアな高音質で没入感のある音楽を楽しめる。防水規格はIPX7を採用しており、運動時の汗や雨などの水も防げる。
ジョギングや 筋トレのお供に! 操作もワンタッチ
AUKEY『EP-T16S』
オープン価格(実勢価格約4999円)
ワンボタン設計が採用されているため、再生/停止/音量調節などの操作がワンタッチで可能だ。連続再生時間は3時間。IPX5の防水等級で、運動時における汗などを気にせず音楽を楽しめる。
装着感の良いモデル
「基本的に耳との接点だけでボディを支える構造の完全ワイヤレスイヤホンは、装着感がとても重要です。耳の穴の形やサイズは様々なので 、自分の耳の形にフィットしたモデルを選びたいものです。また、スポーツをする場合は激しい動きでも外れない密着性もチェックしましょう」(ゴン川野)
耳から落ちにくい! 閉塞感の少なさも魅力
Skullcandy『Indy』
オープン価格(実勢価格約1万円)
ハウジングの外側にイヤージェルと呼ばれるシリコン製カバーを採用。耳への固定を補強しているため、閉塞感が少なく長時間利用でも違和感を覚えにくい。10分の充電で1.2時間の再生が可能だ。
人間工学に基づいたハウジングで耳にジャストフィット
au『Powerbeats Pro』
オープン価格(実勢価格約2万7000円)
耳孔にフィットするオフアクシス式ノズルを搭載。さらにフィット性を高めるため4つのサイズのイヤーチップに加え、調整可能なイヤフックを採用。15分の充電で4時間半の再生が可能だ。
多機能モデル
「省電力化の余裕から、完全ワイヤレスイヤホンはスマート機能を搭載した『ヒアラブルモデル』など、多様化の道を歩んでいます。また、骨伝導など従来とは異なる再生方式を選択したモデルも登場しています。今後も完全ワイヤレスイヤホンは多機能化が進むでしょう」(ゴン川野)
スマホに届いたメッセージを読み上げる
Zeeny『Zeeny TWS』
オープン価格(実勢価格約1万6000円)
専用アプリをインストールすれば、スマホに届いたメッセージを読み上げてくれるヒアラブルイヤホン。Siri、Googleアシスタント、Alexaといった音声アシスタントにも対応。最大駆動時間は9時間だ。
イヤホン紛失時も安心! 追跡機能を装備
Jabra『Elite Active 65t』
オープン価格(実勢価格約2万円)
専用アプリで「Find My Jabra」機能を利用すれば、GPSでイヤホンの位置を追跡可能。遮音性が高いため周囲の音を聞き取りづらいが、「Hear Through」機能をオンにすれば周辺の環境音を拾うことができる。
文/中馬幹弘