2020年1月30日にLINEのグループ会社で仮想通貨関連事業を手掛けるLVC社は「LINK」という独自仮想通貨を日本国内で取り扱うことを発表した。
LINKは同じグループ会社でシンガポールに所在がある「LINE TECH PLUS PTE. LTD.」が発行している仮想通貨。
日本及び米国以外の国では、2018年10月16日から仮想通貨取引所「BITBOX」でLINKの取引が可能になっていた。
日本国内では2020年4月以降から、LINEが手掛ける日本国内の仮想通貨取引所「BITMAX」にて取り扱いが予定されている。
本記事ではそもそもLINKとはどのような仮想通貨なのか。根底にある考え方などを紹介しよう。
●キーワードまとめ
・LINK:LINEグループである「LVC社」が発行する仮想通貨。実際はシンガポールにある同グループの「LINE TECH PLUS PTE. LTD.」が発行している
・BITBOX:日本及び米国以外の国の居住者が利用できる仮想通貨取引所でLINKの取引ができる
・BITMAX:日本国内の居住者が利用できる仮想通貨取引所で2020年2月現在ではLINKの取引ができないが2020年4月以降取引ができる予定
LINKの目的は「仮想通貨を使った経済圏を作る『LINE Token Economy構想』のため
引用元:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2366
LINEがなぜLINKを作ったかというと、LINEが提供するサービスを通じて、ユーザーが提供した価値を正しく還元するため。また還元した価値をさらにLINE内のサービスで使ってもらうためだ。
ひとことで言うと「経済圏」を作るため。
LINEでは「LINE Token Economy構想」という構想を持っている。
この構想ではブロックチェーン技術によって実現できるデータの公正性をもとにした仕組みを掲げている。
LINEが提供するサービスを利用して、価値を生み出したユーザーには公平に価値を還元するという仕組みだ。
■LINKの仕組み図
図だけだとなかなか理解が難しいがLINEの中の経済圏で使える通貨がLINKだと考えると分かりやすい。
引用元:https://link.network/ja/
具体的には「4CAST」や「Wizball」というLINEが提供するサービスを利用して知識価値などを提供したユーザーにLINKを交付し、そのLINKはLINE内で使ってもらったり日本円などの法定通貨に交換したりする。
しかし2020年2月現在では「4CAST」も「Wizball」もサービスを終了してしまっている。また日本国内ではLINKを扱うことができず、法定通貨に交換できない「LINK Point」というポイントを付与するサービスであった。
4CASTやWizballのサービスサイトにはアクセスできずTwitterのアカウントが残っている程度
そんな折、LINKを日本国内で取り扱う発表をしたLINEの思惑はイマイチ理解できない。
法定通貨に交換できないLINK Pointではなく、交換可能なLINKが扱えることになったアピールくらいにしかならないだろう。しかしLINKが付与できるサービスが終了してしまっては意味がない。
2020年1月29日に発表したLINEの2019年12月期の第4四半期決算発表資料(以下、決算発表資料)にもLINKの記述はない。
LINEの戦略事業として「Fintech」があるものの仮想通貨単体では語られていない
LINEの金融関連事業は以下の図のような構成になっている。
引用元:https://linefinancialcorp.com/ja/services/business
「LINE Wallet」を中心に置いた3つの構成になっている。保険や投資などの「ライフサポート」、銀行や貸金の「マネーサポート」、支払の関する「ペイメントコミュニケーション」の3つだ。
そのうちLINKは、ペイメントコミュニケーションの下に位置付けられている。仮想通貨が次世代の送金・決済ツールとしての可能性があったり、日本円などの法定通貨に比べて価値の受け渡しの敷居が低かったりするためだ。
決算発表資料を見ると、戦略領域として「Fintech」が掲げられている。しかし説明資料中では「LINE Pay」の説明が中心で、LINKやLINEを実現するブロックチェーンネットワークについては言及されていなかった。金融事業としては「Fintech イノベーション」として区分けしているので、インターネット系企業が持つ技術の強みをもっとアピールするよいチャンスなのに。
8300万人が利用する巨大なインフラ中での経済圏をどう作るか
「2020年4月以降にLINKを国内で取り扱う。詳細はまだ未定である」そんな状態でも発表したのは、決算発表後の株価対策なのだろうか。
それとも戦略的に少しずつ情報を出していきブロックチェーン技術を使った新しい経済圏を作るための布石とするのだろうか。
2020年末にはヤフーグループとの経営統合が控えている中、単発でいきなりLINKの国内取り扱いを発表した真意はやはり不明のままだ。
価値の還元を公平かつスムーズにするだけでなく、自分の個人情報を適切に価値に変えられる「情報銀行」的な使い方を考えているのだろうか。
日本国内で8300万人が利用する巨大インフラ「LINE」その中に経済圏を作る「LINE Token Economy構想」が不発にならないことを願う。
■LINEの月間アクティブユーザー数
引用元:https://www.linebiz.com/system/files/jp/download/LINE%20Business%20Guide_202001-06.pdf
文/久我吉史