
60歳からは機嫌よく「ひとりを生きる」
生涯独身の人はもちろん、パートナーとの離婚や死別を経験したのち、熟年世代になって「おひとりさま」として生活をしている人は少なくない。筆者自身、結婚は20代と50代の2回、60代になった現在はふたたび「おひとりさま」に戻り、「60歳まではリハーサル。60歳からは本番」をモットーに暮らしている。
「おひとりさま」の生活に戻って実感したことのひとつに、結婚していた頃と比べ、人間関係や時間の使い方が圧倒的に豊かになった、というものがある。「週末、食事に行かない?」「旅行に行きましょう」というような声がかかりやすくなり、それに応えることができるようになったため、新しい人と出会う機会や自分のために使う時間も増えた。
結婚生活を続けていたら、パートナーの存在に気兼ねしてためらっていたことも、「おひとりさま」なら自分の予定はすべて自分で決める自由がある。同居家族がいなければ、帰宅時間が遅くなっても後ろめたい気持ちを抱く必要もない。食事の支度や家の掃除に関して、多少手を抜くことがあっても、誰からも咎められないのもありがたい。
そんなふうに、一見、いいこと尽くしのように思える熟年世代の「おひとりさま」にも悩みはある。たとえば、「不安」に関することだ。頼りになるパートナーがいないため、将来何かあった時を想像すると心細く感じる健康への不安。若い頃とは異なり「見た目」では勝負できなくなった時に感じる加齢への不安。生活費を稼ぐパートナーの存在に頼れないため生じる経済的な不安。こうした熟年世代の「おひとりさま」が抱える数々の不安には、どう対処していったらいいのか。
「熟年おひとりさま」の不安との向き合い方
たとえば私の場合、健康への不安には「食事」と「運動」という2つのアプローチで対処している。3年前に大病を患ってからはなおさら、「自分の身は自分で守らなければ」という意識が高まり、自宅での食事は玄米と発酵食品を基本とし、定期的に加圧トレーニングにも通うことにした。
加齢への不安は、「実年齢より若く見られる」ことを目標に、美容のプロに相談したり、自宅でケアしたりとこまめなお手入れが必要だろう。いくつになっても綺麗を心がけていることで、「自信をなくさない自分」でいられると思うからだ。
経済的な不安に対しては、「使わない」より「稼ぐ」ことを積極的に考えるべきだろう。人生100年時代を楽しく生き抜くためには、すべての人に「自立する力」が求められるはず。持っている資格を活用して稼ぐのもいいし、自分の強みを生かしたビジネスに挑戦するのもおすすめだ。
新たなトキメキは楽しく生きるための特効薬
熟年世代の「おひとりさま」を楽しく生きるコツのひとつに、「トキメキを感じる異性を見つける」というのもある。ポイントは、トキメキを感じる対象が異性という「人」であること。趣味やペットといった「事」や「物」より、予測できない心の動きをする「人」、しかも異性であれば未知数な部分が多いだけに、トキメキを感じる心も大きく揺れることになる。異性にトキメキを感じ、心の振れ幅が大きくなれば、自分のなかのエネルギー量が増えたように感じ、毎日をより楽しく過ごせるのも必然だろう。
熟年世代の結婚・再婚がうまくいくための心がまえ
熟年世代からの結婚について、もし可能性をみずから否定してしまうなら、それはもったいないかもしれない。人生100年時代、結婚生活を楽しむ時期を何度か経験しても損はないと思う。とくに、「もう60代だから結婚なんて無理」「再婚するなら70代までに」といった自分なりの年齢制限をもうけ、結婚や再婚を自分でセーブしているなら、「本当に結婚したくないか?」と自問自答してみるのもいい。自分の本音に耳を澄ませてみると、「もう一度、誰かに愛されたい」「頼りになる家族の存在が恋しい」という気持ちに気づくこともできる。自分の本音にしたがって行動することは、自分らしく生きることでもある。つまり、結婚や再婚に関しては年齢にとらわれることなく、自分が納得した人生を選択することが大切だろう。
実際、もしも「この人なら」と思える相手と出会えた場合はどうすべきか。筆者がおすすめしているのは、いきなりひとつの家に住むような生活スタイルを求めるより、まずは「お試し同居」をする方法だ。お互いの家で1週間ずつ生活をしてみることで、相手のペースや嗜好に少しずつ慣れていくことができる。相手の生活を尊重しつつ、自分の主導権も譲る必要のない、居心地のいい距離感を保った同居も可能だ。
結局のところ、誰かといても、ひとりでいても、自分が幸せを感じられる人生ならそれがベスト。これからは「いかに自分のことを幸せにできるか?」が鍵になることは間違いない。
文/岡野あつこ
1954年8月5日埼玉県生まれ。血液型O型。27年間で30,000件以上の相談を受け、修復も含め、数多くの夫婦問題を解決に導いてきた。現在は後進の育成にも力を注ぎ、札幌・仙台・横浜・東京・大阪・名古屋・福岡で「離婚カウンセラー養成スクール」を開校。
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