高熱、悪寒、全身のだるさ、食欲不振など……インフルエンザはとにかくつらい。
普通は療養するものだが、最近、インフルエンザなのに会社へ出社してきたり、完治していないのに出社を強要したりする「インフルエンザ・ハラスメント」が横行し、社内に感染が広がるという事態が起きているという。
この度、医療法人社団SEC が実施した200名を対象とした「仕事とインフルエンザの認識調査」によると、インフルエンザ感染への意識の低い一部の人が、職場に感染を広げていく実態が明らかになった。
職場でインフルエンザが流行した経験のある人は約8割にも上る
「職場でインフルエンザが流行した時の感染者はどれくらいいたか」と尋ねる調査が行われたところ、「職場の1割以下」が86人(43%)で最多だった。
「特に流行したことはない」47人(23%)を除くと、実に77%の人が職場でインフルエンザの流行を経験したことがあると判明した。
「一人インフルエンザになると順番にうつっていって、結局全員がかかった。(30代:女性)」「感染者から同心円状に感染が拡大した(40代:男性)」といった意見からも、少人数の感染から職場全体に感染が広がることがわかる。
3割以上がインフルエンザの可能性があっても出社する
次に、「インフルエンザかもしれないと感じた際に出社するか」と尋ねる調査が行われたところ、「出社しない(病院に行く)」132人(66%)が最多に。一方で34%が「出社する」と回答していた。
「体調が悪くなり早退。翌日回復し出勤したが、また時間が経つにつれ体調不良。もう1日同じことが起こり、病院に行ったらインフルエンザでした。(20代:女性)」「発熱が続き病院に行ったら既に治りかけのインフルエンザだった(40代:男性)」など本人は体調不良でも診断を受けず、知らず知らずのうちに感染を拡大させるケースも目立った。
気づかず完治前に出社している
「インフルエンザにかかったら何日会社を欠勤するか」と尋ねる調査が行われたところ、「医師の診断に従う」と回答した97人(48%)を除いて、過半数が「自己判断」していることが明らかに。しかも、およそ3割の人が「発症後5日を経過(学校保健安全法)」せずに出社していた。
「熱が下がった直後すぐに出社し、社内でインフルエンザを流行させた人がいました。週替わりで誰かが休んでいて大変でした。(20代:女性)」「同僚がインフルエンザと診断されたのに、1日休んだだけで平気で出社してきた。席が向かい側だったのでとても嫌だった。(60代以上:女性)」など、たとえ仕事が立て込んでいるとしても、自己判断での出社は周りに迷惑をかけていることがある。
また、会社の規定も出社禁止期間が短く設定されていることが多く、本人はルール通り休んでいるにも関わらず、感染拡大の原因となっているケースも。
責任のある立場の人は出社傾向。ただ感染意識の低い人は年齢や立場に関係ない
「インフルエンザでも出社してくる人はいたか。またそれはどの立場の人か」と尋ねる調査が行われたところ、「いた」が87人(43%)だった。その内訳は、社長(経営者)が4人、上司・先輩が59人、同僚が45人、後輩が21人、その他が12人だった。
どの立場であっても無理して出社してくる人がいるのが見て取れる。ただ、部署やプロジェクトの責任者は、他の人に比べ無理にでも出社する傾向にあるようだ。
「社長が『マスクを2枚か3枚重ねてつければインフルエンザを他人にうつすことはない』と出勤していた。(30代:女性)」「熱っぽいというので後輩を病院に行かせたら、インフルエンザでした!と会社に帰ってきて報告してきた。うつしてしまうという認識が無いと思った。(30代:女性)」などのように、立場だけでなく罹患後の対応について理解していないケースも見受けられる。
インフルエンザにまつわる無自覚ハラスメント/強要ハラスメントのエピソードを紹介
■無理に出社してくる(無自覚ハラスメント)
会社側や周囲は休んでほしいと思っているのに、無理に出社してきて周りに迷惑をかけてしまう例を一部紹介していく。
・納品前に、『休めないから』とインフルエンザにかかったディレクターが出社し、大勢の人が感染して欠勤者が続出。結果、納品も間に合わなくなってしまった。(30代:女性)
・同僚がインフルエンザにかかって出社してて辛そうな顔しながら仕事をしていた時、上司にものすごく怒られて帰らされていました。(30代:男性)
・上司が仕事中に受診してインフルエンザの診断を受けたのに、残務をずっとしていて、なかなか帰宅しなかった。(50代:女性)
■罹患中でも出社要請してくる(強要ハラスメント)
体調不良で完治していないのに、会社や上司が無理にでも仕事をさせようとする例を一部紹介していく。
・インフルエンザで高熱があったのに、人手不足で(資格者最低1人必置義務)出社するように言われ、出社したものの動けずに休憩室で横になっていたことがあります。(30代:女性)
・インフルエンザの疑いがある時に、診断が出ることを恐れて病院に行かせてもらえなかった(40代:男性)
・インフルエンザで休むと連絡してきた人のことを「普通は熱が無いなら出社するだろ」と影で言っているのを聞いてしまって以降すごく休み辛くなった(30代:女性)
専門家(医療法人社団SEC・蓮池院長)の解説
インフルエンザの感染経路はくしゃみや咳によって飛沫感染することがおもな原因です。ワクチンを接種したからといって、100%かからなくなるわけではありません。
インフルエンザが流行する時期は、ちょうど仕事が繁忙期という方も多く、責任ある立場から『どうしても休めない』という方のお気持ちもよく理解できますが、罹患後は職場や人込みに行かないようにしましょう。
『発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(学校保健安全法)』とも言われていますが、病状により異なりますので医師の判断を仰ぎましょう。予防接種以外では、うがい、手洗い、マスクの着用が予防になります。
職場での感染を拡大させないためには、組織全体でインフルエンザに対しての共有認識を持ち、早期対応することが重要です。
蓮池林太郎院長
調査結果からも、予防意識の高い人が多数派にもかかわらず、職場で流行することがわかる。一人ひとりがインフルエンザ感染について意識をすることが、社内パンデミックを防ぐ一番のポイントといえるだろう。
<調査概要>
調査対象: 社会人経験者(20歳以上)
実施時期: 2020年1月15日(月)~2020年1月16日(火)
調査手法:インターネット調査
有効回答数:200名(調査)
出典元:医療法人社団SEC
https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info/
構成/こじへい