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風速17mでも火が消えない!?東京2020オリンピック聖火リレーのトーチに注ぎ込まれたスゴい技術

2020.02.04

■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!

東京2020オリンピック聖火リレーまであと2か月となった。

美しい桜色のトーチとともに聖火が日本各地を訪れるわけだが、キャンプ好きは聖火リレートーチに注目!

オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチは、大会ごとに開催国の文化・技術力を集結させ、威信をかけて製作されるものだ。

東京2020オリンピックでは、デザイナー・吉岡徳仁さんをリーダーとする5社による「桜モチーフで継ぎ目のない」トーチが採用されたのはご存じの通り。

素材は東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ建築廃材を一部用いてLIXILが準備し、それをUACJ押出加工が吉岡徳仁さんのデザインをもとにトーチ筐体として作成。ENEOSグローブの燃料ボンベで供給したガスを、新富士バーナーが開発した燃焼機構で炎にするという5社の知恵と技術がギュッと詰まっている。

この聖火リレートーチ、現在、最後の組み立てを行っている真っ最中とのこと! キャンプ好きに大いになじみがある新富士バーナーが燃焼機構を担当したとあり、無理を承知で見学させてもらった。

雨と風に負けない美しい炎作り

そもそも東京2020オリンピックのリレートーチ製作の公募は2017年。今回は開発時間を短縮できるようチーム制になっており、それまでに各社がアイデアを出し合い、形にしなくてはならない。燃焼機構を担当した新富士バーナーは、2013年から燃焼機構の構想を立て、2016年より実際にその設計図を引き始めたそう。

トーチチーム5社の技術がつまった内部構造

「2016年の聖火リレーをテレビで観て、昼の屋外でも聖火を視認しやすいトーチを作ろうと決めました。当社の技術を使えば美しく光り輝く、そして雨や風に強い炎を作れると確信しました」(開発担当 山本宏さん)

ポイントは“触媒燃焼”。

触媒燃焼とは炎を出すことなく燃焼する木炭や線香などに見られる「表面燃焼」の一種で、白金(プラチナ)やパラジウムなど一部の金属などで見られる燃焼。雨が降ったときや風が吹きつけたとき、一時的に熱が弱まってもすぐに復活するのが特徴だ。

キャンプ好きなら「カイロ」や「たき火の熾火」、「プラチナ使用のランタン」と言えばわかるだろう。熾火はよほどの風や雨でないと消えないし、プラチナ使用のランタンは一度バルブを閉じても数秒後であればバルブを開くだけで燃焼が復活する。

東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチでは、中央に搭載した白金(プラチナ)により触媒燃焼が、周囲から立ち上がる赤い炎をサポート。万一、強風や雨で炎が消えそうになったとしても、触媒燃焼により聖火リレートーチの内部では常に継続している触媒燃焼が赤い炎をサポートしているというわけ。風が吹いているときは聖火リレートーチのスリットからも炎が見えるし、風が落ち着けば炎はまた立ち上がる。

メラメラと立ち上がる赤い炎はいかにも「聖火」。

最初の東京オリンピックほか、長らく聖火リレートーチには火薬が使われていたという。煙がたなびく様子が印象的だったが、どの大会からかは不明だが、近年は各大会でガス式を採用している。ただ、ガス式の聖火リレートーチは風に弱い。そこでガス式の聖火リレートーチの弱点を補うための工夫は各大会のトーチ製造技術者の腕のみせどころとなる。日本は雨も多く、さらに過酷な環境だ。

炎をサポートしているのが、中央にある白金(プラチナ)ドームの下で燃焼する高温の青い炎と、その炎により加熱した白金(プラチナ)の表面で発生する「触媒燃焼」。触媒燃焼は約200℃以上で発生する。炎は見えず、静かに発光していることがわかる。赤い炎を「拡散燃焼」といい、燃焼温度は800℃。触媒燃焼は800℃以下でも燃焼が続くため、赤い炎を常にサポートできるというわけ。

歩く・走るときは風速2m。わずかに炎がたなびく姿が美しい。

普通に歩くのが難しい風速17mの風でも、聖火リレートーチ内の火は消えず、トーチ内が輝く様子をスリットから確認できる。

上部からシャワーをかけた様子。水滴が中央の白金(プラチナ)ドームに当たってもはじけ飛んでいることがわかる。

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