「セリカ GT-FOUR」以来の旋風が吹き荒れる!?272PS、4WD、6MT、3ドア、WRCの血統を受け継ぐトヨタ「GRヤリス」
2020.01.31
トヨタ自動車の社長である豊田章男氏は、もしかしたらトヨタで一番、ラリーが好きな人物かもしれない。「モリゾウ」という別名で数々のモータースポーツに挑む姿は、世界に名をとどろかせる超巨大企業の社長というよりは、ひとりのドライバーだ。
そんな純粋なクルマ好き、「モリゾウ」こと豊田章男氏がラリーに参戦したのは、2012年のこと。その翌年、「モリゾウ」は世界ラリー選手権(WRC)で4度の王者になった伝説のドライバー、トミ・マキネンに出会い、交流を深めた。
左)トミ・マキネン。右)「モリゾウ」ことトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田 章男氏。
そして、2015年1月、1999年以来18年ぶりにトヨタがWRCへ2017年以降復帰することを表明した。
WRカーのベース車両は、欧州市場での主力コンパクトカー、「ヤリス」(ヴィッツ)とし、TOYOTA GAZOO Racing WRT(World Rally Team)の総代表に豊田章男氏が、チーム代表にトミ・マキネンが就任することとなったのだ。
90年代は実に強かった!WRCで大活躍したトヨタ
FIA 世界ラリー選手権(FIA World Rally Championship=WRC)はスプリントラリーの最高峰だ。ラリー熱の高いヨーロッパや南米では、F1に匹敵する人気を誇る。
1973年にスタートし、40年以上にわたる長い歴史を持つ、人気のWRCに、トヨタは創設以来関わりを持ってきた。
1975年に1000湖ラリーで優勝した、右)ハンヌ・ミッコラと左)アトソ・アホ。車両はTE27型カローラレビンのグループ4ラリーカーだ。
そして、1990年、カルロス・サインツ(F1ドライバー、カルロス・サインツJr.の父親)がST165型「セリカ GT-FOUR」を駆り、WRCドライバーズ・チャンピオンシップを獲得する。
1990年のRACラリーにて。右)同年4勝を挙げたカルロス・サインツ。ST165型「セリカ GT-FOUR」は日本車メーカー初のシリーズチャンピオン獲得車となった。
1993年にはWRCマニュファクチャラーズタイトルを獲得。1999年の活動中止までの間、3度のマニュファクチャラーズタイトルと、4度のドライバーズタイトルを獲得した。
1993年に行われたサファリ・ラリーにて。トヨタ参加全クルーとスタッフ、参加車両(ST185型「セリカ GT-FOUR」)が一堂に会した。ユハ・カンクネンが5勝、ディディエ・オリオールが2勝を飾り、トヨタは初めてマニュファクチャラー選手権を獲得する。
活動休止となる1999年に開催された、ラリー・カタルニアで激走する「カローラ WRC」
トヨタ「ヤリスWRC」は2018年度のWRCマニュファクチャラーズ選手権タイトルを獲得
WRCに復活を表明したトヨタは、競技車両のベースに「ヤリス」(日本名は「ヴィッツ」)を選んだ。
380馬力を超すハイパワーを生む、「ヤリスWRC」の1.6L直噴ターボエンジン。
全身をエアロパーツで武装した「ヤリスWRC」は、デビューイヤーから実力を発揮。参戦からわずか2年目で2018年度のWRCマニュファクチャラーズ選手権タイトルを獲得した。
WRCを勝ち抜くための新型車「GRヤリス」
「東京オートサロン2020」で、WRCを「勝ち抜く」ために生まれたホモロゲーションモデル、新型車「GRヤリス」が世界初公開された。
ホモロゲーションとは、FIA(国際自動車連盟)のレースに出場するために必要な型式認定のことだ。WRCでホモロゲーションを取得するには、ベースとなるモデルを連続した12か月間に2万5000台以上生産する必要がある。つまり、WRCで勝利し続けるために必要とされたクルマが、ホモロゲーションモデル、新型車「GRヤリス」なのである。
新型車「GRヤリス」は、TMR(Tommi Makinen Racing)と共同開発した、TOYOTA GAZOO Racingが展開するスポーツカーだ。
新開発した直列3気筒ターボエンジン「G16E-GTS」は、1618ccの排気量から、最高出力200kW(272PS)、最大トルク370N・m(37.3kgf・m)を発揮する。
その強大なパワーは、リズミカルな変速を可能にする6速マニュアルトランスミッションを経て、多板クラッチによる前後駆動力可変システムを採用した新開発スポーツ4WDシステム「GR-FOUR」に到達。余すことなく四輪に伝えることが可能だ。
また、アルミ素材のエンジンフード、トランクリッドやドアパネルを奢り、形状自由度の高いSMC工法で成形されたCFRP素材のルーフパネルを採用する。
新型車「GRヤリス」は軽量化を図りながらも優れた空力性能を示す、強固な3ドアタイプのキャビンとなる。
インテリアは専用シートなどをはじめ、スポーティそのものだ。
さらに、先行予約限定モデルの特別仕様車、「RZ“First Edition”」は「RZ」グレードをベースとして、マットブラック塗装のラジエターグリルや、フロントサイドディフューザー、リヤスポイラーとリヤバンパーを特別装備する。
また、特別仕様車、「RZ“High-performance・First Edition”」では、「RZ」グレードをベースに限界性能を高めた「High-performance」を装備。「RZ“First Edition”」の特別装備に加えて、マットブラック塗装のBBS製鍛造アルミホイールも備える。
新型車「GRヤリス」の予約・価格
特別仕様車、「RZ“First Edition”」と、同じく特別仕様車の「RZ“High-performance・First Edition”」は2020年夏頃の販売を目指す。
その先行予約は、2020年1月10日から2020年6月30日までの約6か月間、Web限定で行われる。
車両本体価格は、特別仕様車、「RZ“First Edition”」が396万円(税込)、「RZ“High-performance・First Edition”」が456万円(同)を予定する。
新型車「GRヤリス」のスペック
【サイズ】
全長×全幅×全高:3995mm×1805mm×1460mm
ホイールベース:2558mm
車両重量:1280kg
乗車定員:4名
【エンジン】
形式:G16E-GTS
種類:直列3気筒DOHC直噴ターボチャージャー
排気量:1618cc
最高出力:200kW(272PS)
最大トルク:370N・m(37.3kgf・m)
【トランスミッション】
駆動方式:iMT(6速マニュアルトランスミッション)
駆動方式:4WD
差動装置:スポーツ4WDシステム「GR-FOUR」 トルセンLSD×2(フロント/リヤ)+電子制御多板クラッチ/4WDモードダイヤルスイッチ(NORMAL/SPORT/TRACK)
サスペンション(フロント/リヤ):マクファーソンストラット式/ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ(フロント/リヤ):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイヤ:225/40ZR18
新型車「GRヤリス」への豊田社長の想い
最後に、新型車「GRヤリス」に込めた、豊田社長の想いを引用したい。
「トヨタのスポーツカーを取り戻したい。
ずっとそう思い続けてきました。
86はラリーでもサーキットでも私の大事な相棒です。
スープラもその名にふさわしいクルマとして復活させることができました。
ですがやはりトヨタが自らの手でつくるスポーツカーが欲しい。
その想いがずっと、私の心にはありました。
WRCへの参戦も、そこで得た技術や技能を織り込んだトヨタのスポーツカーを作りたいと思っていたからです。
このGR-FOURは世界で勝つためにトヨタが一から作ってきたスポーツカーです。
その一からも今まではトヨタは一般のお客様が使うクルマを作りそのクルマの中でレースに使えるように改造してまいりました。
今度は違います。
レースに勝つために、
そこで出すクルマのために普段のお客様に乗っていただくクルマはどうあるべきかまったく逆転の発想で作り出したクルマが、このGR YARISです」
トヨタ自動車株式会社代表取締役社長
マスタードライバー
豊田 章男
※データは2020年1月中旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※製品のご利用、操作はあくまで自己責任にてお願いします。
文/中馬幹弘