近年、世界的にプラスチックごみ問題に注目が集まっているが、“世界2番目の環境汚染産業”についてはあまり認知されていない。それは「繊維産業」である。
ファッション業界はもはや、世界的に「サステナブル」に取り組まないラグジュアリーブランドはないと言っても過言ではないほど、地球・自然環境への意識が高まっている。
先日、WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)と連携することを発表した、サステナブルなアパレル事業を展開する豊島株式会社に、ファッション業界の課題と取り組みについて聞いた。
ファッションに「エシカル」「サステナブル」を取り入れたい人は70%
豊島が全国の15歳~49歳の男女1,089名を対象に実施した、洋服・ファッションに関する環境意識調査では、70%以上の消費者がエシカル・サステナブルを取り入れたいと考えていることが分かった。
Qあなたはエシカルファッションやサステナブルなど、環境や社会に配慮したファッションを取り入れたいと思いますか?(単一回答、n=1089)
取り入れたい理由は「社会貢献に興味があるから」がトップで69.4%、次いで「自己主張・表現のため」が25.5%、「トレンドだから」が21.0%となった。
エシカルは「Ethical:倫理的な」というところから、倫理的な活動として“環境を配慮して作られたという意味合い”で使われている。サステナブルとは「Sustainable:持続可能な、ずっと続けていける」という意味だ。
近年、エシカル・サステナブルなファッションの普及に取り組むアパレル企業が増えてきたといわれる。持続可能な開発目標(SDGs)に社会的な関心が高まっている中、アパレル・ファッション業界においても持続可能な生産・消費への転換が課題となっている。
先日、豊島がWWFジャパンと連携することを伝えた発表会で、登壇していた代表取締役社長 豊島半七氏は、調査結果で「エシカル」「サステナブル」といった言葉が若い世代を中心に浸透していることについて、次のようにコメントした。
「『そうだろうな』という気持ちです。我々のような中高年よりも、若者のほうが自分たちの将来に対して不安を持っているということだと思います。その1つ、2つ下の世代にちゃんとした形で地球というものを引き継いでいくという責任。たまたま豊島は1億枚の服を作っており、そのほとんどが若い人向け。こうした(サステナブルな)取り組みにマッチしているのではないかと考えます」
豊島では30年前からサステナブルへの取り組みを継続しているそうだ。
繊維業界・ファッション業界が抱える深刻な環境問題
繊維業界やファッション業界は、思いのほか、深刻な環境問題を抱えている。
発表会に登壇していた豊島の執行役員・営業企画室の溝口量久室長は、次のように述べた。
「ファッション業界はCO2の排出量が全業界の10%を占め、大量の水資源を消費する“世界で2番目の環境汚染産業”(国連貿易開発会議調べ)です。ファッション業界は大量生産・大量消費の時代から、徐々に持続可能な業界に変化をしていこうとする道の途中にあります」
またWWFジャパン・自然保護シニアディレクターの東梅貞義氏は次のように述べた。
「なぜWWFジャパンという環境保全団体が、繊維の会社である豊島とパートナーシップ契約を締結したか。それは繊維業界が環境への負荷が非常に大きいからです。そして、消費者にはその問題が伝わっていません」
「繊維産業は水の汚染、使用量が2番目に大きい業界。ちなみに1番は石油産業。なお、世界銀行では工業用水汚染の17~20%が染色と仕上げによるものであると推定しています。綿のTシャツ1枚を作成するために使用される平均水量は、推定2,500リットルと言われています。また、繊維産業のGHG排出量は世界全体の約10%を占めます」
「2030年に向け、繊維業界、ファッション業界は本当にサステナブルになれると思います。豊島のようにコットンの生産現場から糸・染色工場、縫製工場、そして消費者に製品を届ける人々が一緒になれば、きっと解決できる問題だと思います」
地球環境にやさしい製品は「パンダマーク」が証
豊島の溝口室長は「WWFジャパンと半年かけて目標設定を協議していく。まずは、パンダマークを広げていきたい」と述べた。パンダマークとは何か?
パンダマークは、WWFのシンボルマークである。販売される衣類等のタグにプリントされるという。
このパンダマークのタグを付けられるのは「オーガニックコットン、BCIコットン、Tencel(テンセル)を90%以上使用した製品」に限るとのこと。つまり、環境にやさしいことの一つの証になるというわけだ。エシカル・サステナブルなファッション選びの際に、このパンダマークがついていれば、一つの基準になるだろう。
【取材協力】
豊島株式会社
https://www.toyoshima.co.jp/
取材・文/石原亜香利