定年して2年以上経った。大きく変化したのが、テレビへの接し方。まずドラマを見る時間が増えた。新聞の番組欄で新作の俳優と概略をチェックし、面白そうなら録画予約する。リアルタイムでは見ない。CMを飛ばしたいからだ。CMタイムは長く、90秒から120秒くらいか。リタイアにとっても時間の無駄のような気がするから、“いわんや現役をや”だろう。ついでに言うと「報道ステーション」は、いくらなんでもCMタイムの頻度が多すぎると思うのは僕だけだろうか?
もう一つは、朝のワイドショーを見る習慣がついたこと。起きてからずっとテレビ朝日だ。特に「羽鳥慎一モーニングショー」の、レギュラーにしてテレ朝社員の玉川さんは面白い。会社人間必須(?)の“ご無理ごもっともはしない”、だから“出世しないし、望みもしない”という処世観は、たくさんのサラリーマン&ウーマンの心に刺さるに違いない。リタイアの僕にだって、痛快なのだから。
ここからが本題。“羽鳥さん”の次に、高田純次の「じゅん散歩」が始まる。あの軽い調子で街をぶらつく、時間がたっぷりあるリタイアの好奇心をそそる番組だ。その番組内に、番組のコンテンツなのか、CMなのか、その中間なのかよくわからないが、かなり長めの通販コーナーがある。女性向けの洋服、アクセサリー、体型補正ウェアが多いようだが、時には老若男女を問わない商品も紹介される。
その一つが今回のテーマ、「Gゼロクッション」だ。クッションに生卵を置き、その上に座っても割れない実演を見て驚いた。その理由は“特殊な素材と構造がまるで宙に浮いているような座り心地”=“無重力のような座り心地”を実現するからだという。使い道は椅子、クルマの運転席、フロアの座布団……と、多彩だ。それにしても“無重力のような座り心地”とは、どんな心地だろう? 無重力空間に漠然と憧れた、元宇宙大好き少年には興味津々だ。ただし価格は、税込5500円+送料770円と決して安くはない。だが2枚買えば税込11000円のところお値引き2020円の税込8980円、しかも送料無料という。なんてお買い得!! 通販番組必殺の餌に食いつきそうになった。
さてこの番組を見た1週間ほど前、「羽鳥慎一モーニングショー」でお腹を6パックにするトレーニングを紹介していた。アウターマッスルではなく、インナーマッスルを鍛える。僕は10年以上お腹をへこませたく“腹筋”を続けてきたが、僕のやり方ではアウターマッスルは鍛えられるものの、憧れの6パックには直結しないと判明した。
番組ご紹介のやり方では、両ひじを床につけて体を支える。試してみるとひじに体重がかかり、フローリングの床ではかなり痛い。そこでバスタオルを重ね折りして床に置いたが、それでも痛い。だが1日10秒(30秒だったかも)やればいいようで、今までの5分かけていた“腹筋”より、ひじが多少痛くてもこっちが楽だ。よって早速、このやり方に変えていた。そんな時に「Gゼロクッション」を知り、この上にひじを乗せれば痛くないのではと思いつく。ただし、やってみなければわからない。
と同時に、「Gゼロクッション」絶好の使い道が閃いた。釣りだ!!! 釣り船の釣り座は硬い。木製なのか樹脂製なのか、とにかく硬い。だから釣り具メーカーは専用のクッションを製造している。僕の愛用は、ダイワ製「防水クッション」のサイズS、本体価格2100円だ。もちろん無重力感などはない。裏面4カ所に滑り止めラバーが付いているが、軽いので船の揺れや強風で飛ばされることもある(ずっと座って釣るのではなく、かなりの時間立って釣る)。つまり特に座り心地がいいわけでも、使い勝手がいいわけでもない(ただし、あるとないでは大違い)。そこで「Gゼロクッション」だ。
海釣りで使うからには、水と塩に強い素材でなくてはならない。ダイワの「防水クッション」は当然クリアだ。「Gゼロクッション」の素材は、TPEとポリエステル。あれ、TPEとは? ゴムのような弾性をもつやわらかいプラスチックのことで、であれば水や塩に影響されることはないだろう。
というわけで、「Gゼロクッション」をお買い得価格で2枚購入した。まずは机用の椅子に置く。椅子には少々のクッション性はあるが、「Gゼロクッション」を置くとずっと座り心地がいい。ただしこれが“無重力”感覚かというと、無重量の経験はないけれどいかがかなと思う。続いて、リクライニングチェア。AV(注:Audio Videoの略語)観賞をゆったりすべく、定年のご褒美に買った高級北欧家具で、座り心地は快適だ。よって「Gゼロクッション」を置いても、とくに座り心地が向上した感はない。逆にそうでなければ、高級品のありがたみがなくなってしまうが。そしてお腹6パック。これは目論み通り、効果(という表現は正しくないような……)覿面。ひじはまったく痛くない。やり方を変えて約2か月経ったが、うっすら6パックが浮かんできた!