「いもむしゴロゴロカレー」を食べてみた
さて、メーカーから「いもむしゴロゴロカレー」のサンプルが送られてきたので、実食することになった。
筆者は特段昆虫食が好きというわけでなく、以前コオロギのスナックを食べるのに、とても苦労した思い出がある。そのハードルをとてつもなく上げたこのカレーを口に入れられるのか、不安が先に立つ。
送られてきたサンプルは、「プレーン」のほかに「赤ワイン」、「黒酢」、「野菜ジュース」の4種類。見た目はどれも同じで、「赤ワイン」にトライしてみる。
一見すると、ふつうのカレー以外の何物でもない。しかし、カレーの中に黒いものが見え隠れしている。これがシアワームだ。
「いもむしゴロゴロカレー」
まず、カレーだけを口に入れると、これが思いのほか美味。スーパーで販売されている大半のレトルトカレーをしのぐ美味しさなのは、ちょっと意外。それは、この後で食べた「赤ワイン」以外のカレーについても言えた。
そして、いよいよシアワームを食べる。試食テストに参加した人たちは、カレーのおかげで心理的抵抗が薄まると評価したそうだが、自分の場合、全く心理的抵抗は下がらなくて困った。10分ほど現物を前に逡巡して、「えいや」でシアワームをかじってみる。
「ん? 結構固いぞ」というのが最初の印象だった。歯を当てた途端に、いもむしの体内の肉汁が口の中に広がるという、トラウマになりそうな事態を予想していたが、これが固いのである。肉汁が飛び散る代わりに、コリコリという食感があった。食感といい、醤油を感じさせる味といい、何かの佃煮を彷彿とさせる。何の佃煮と似ているかは形容できないが、まずくはない。
メーカーが作成した「いもむしゴロゴロカレー」の原材料の説明動画
メーカーによれば、「いもむし初心者の方でも食べやすい味になるよう、試行錯誤中」とのことで販売製品の食味は、サンプルよりさらに改善される見込みだ。今の段階で、割といけるので、もしかすると来年の販売時にはブレークするかもしれない。ただ、心理的抵抗から許容できない人はどうしても一定数出てくるとは思う。このへんは、日本人でもナマコやホヤを食べられる人、食べられない人がいるのと一緒だ。
起業家と栄養学の教授がコラボして商品化
「いもむしゴロゴロカレー」を開発したのは、昆虫食の輸入・製造を手がける企業、(株)昆虫食のentomoの創業者・松井崇さんだ。松井さんは、以前は昆虫食に強い偏見があったものの、健康改善のため始めた糖質制限の食事法を実践する過程で、昆虫食に注目。昆虫は、「高たんぱく質・低糖質でミネラルと食物繊維が豊富で、古代から食べられてきたスーパーフード」との認識を新たにし、研究を開始したのが創業のきっかけだったと話す。
松井さんは、今では「昆虫食イベントを2年で40回以上開催。世界で最も権威のある昆虫食の国際会議や日本昆虫学会での共同発表や事業構想大学院大学での講演」など、多方面で活躍し、昆虫食の啓発活動に余念がない。
「いもむしゴロゴロカレー」の開発にあたっては、東大阪大学短期大学部実践食物学科の学科長・松井欣也教授が参画。松井教授は、昆虫食を災害食として研究しており、その方面でも著名な方。「災害食は炭水化物ばかりになりがち。野菜も不足しがち。不足する動物性たんぱく質と食物繊維を昆虫食から得る」というのが、昆虫食を推薦する理由だ。
東大阪大学短期大学部の松井欣也教授と昆虫食のentomoの松井崇さん
現在、「いもむしゴロゴロカレー」は、クラウドファンディングサイトのMakuakeにて支援者を募集中。「アフリカ昆虫食セット(カレー2個+シアワーム50g+サバクトビバッタ50g)」などリターンも充実しているので、興味のある方はサイトを訪れてみよう。
編集部注:クラウドファンディングには立案会社の問題でプロジェクトが頓挫する可能性や支援金が戻らなくなるリスクも稀にあります。出資に当たっては、お客様ご自身でご判断いただきますようお願い致します。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)