いつまでも使いきれずに賞味期限間近になってしまった焼肉のたれ。あなたの家の冷蔵庫にもあるのではないだろうか?
「使いきれずに残ってしまいがちな調味料」を尋ねるアンケート調査では、「ラー油(16.7%)」に次いで2位にランクインした「焼肉のたれ(13.7%)」。このことからも多くの家庭で、もてあましている実情がうかがえる。
そこでこのほど、エバラ食品コミュニケーション部・管理栄養士の菊岡裕子氏が提案する残った焼き肉のたれを活用するテクニックについて紹介していきたい。
冷凍焼け防止&時短の「下味冷凍」
スーパーでお肉を買ったあと、とりあえず冷凍庫に入れて保存している方は多いのではないだろうか。お肉を冷凍する際に、トレーのまま冷凍庫に入れると、いざ使いたいときに使いづらいうえに、上手に冷凍、解凍をしないと「冷凍焼け」して、お肉の味が落ちてしまう。
■「冷凍焼け」とは?
冷凍庫内は通常マイナス18度以下の乾燥した状態にあるため、食材に含まれる水分は徐々に気化し、空気中に抜けてしまう。気化した水分は温度変化により、ふたたび凍結して霜になり、「冷凍焼け」といわれる状態になる。「冷凍焼け」すると、食感がパサパサして味が落ちる、色が悪くなる、においが出るなど、せっかくのおいしさが失われてしまうのだ。
「冷凍焼け」を防ぐために有効なのが、お肉をたれに漬け込んでから冷凍する“漬けワザ”冷凍ストック術。焼肉のたれに漬け込むことで、たれがお肉をコーティングし、水分の気化を防いでくれるので、冷凍時の乾燥や冷凍焼けによる味や食感の変化を抑えることができる。
「黄金の味」で”漬けワザ”冷凍ストック術(下味冷凍)
STEP1「袋に入れる」
ジッパー付きのポリエチレン袋にお肉を1枚ずつ入れ、たれを注ぐ。
STEP2「味を染み込ませる」
袋ごと軽くもみ、お肉に味を染み込ませる。全体にまんべんなくたれが絡むように揉み込む。
STEP3「冷凍する」
できるだけ空気を抜いて密封してから冷凍。お肉が均一になるように平らにならす。
※肉の重量に対して約25%を目安にたれで下味をつける。
※冷凍肉はご家庭の冷凍庫(-18℃以下)で保存し、約2~3週間を目安に使用いただきたい。
■焼き肉のたれの有機酸の働きで保水力アップ
焼肉のたれに漬け込むと、たれに含まれる有機酸の働きにより、筋線維にすき間が生まれ、そこに糖やアミノ酸が入り込んで保水力が高まる。それにより、肉汁の流出が抑えられ、ジューシーでやわらかいお肉になる。
また、お肉に多く含まれるイノシン酸は、グルタミン酸と合わせることでうまみが何倍にも強く感じられるという特徴も。焼肉のたれにはグルタミン酸が多く含まれており、お肉と一緒に食べることで、うまみの相乗効果が現れる。このように、焼肉のたれに漬け込むだけで手軽にお肉をやわらかく、おいしく食べられる。
急速冷凍&ゆっくり解凍でおいしさを保つポイント
お肉のおいしさを損なわず、上手に冷凍・解凍する方法を紹介していく。このワザを知っていれば、冷凍による品質変化を抑え、おいしく食べることができる。使いたい時に解凍するだけなので、家事の効率も上がり、食材をムダにすることもなく、身近な「食品ロス」の防止に役立つ。
■【冷凍編】 冷凍のコツは『急速冷凍』
お肉を冷凍する際は、組織や細胞の破壊を防ぐために、できるだけ短時間で温度を下げよう。そうすることで、おいしさを損なわずに保存することができる。
・冷却効率を上げるために、食材をできるだけ平らな状態にならそう。
・熱伝導の良いアルミ製のトレーやバット、なければアルミホイルの上に食材を置こう。
■【解凍編】 解凍のコツは『ゆっくり解凍』
解凍のコツは、急激に温度を上げず、凍った状態から徐々に温度を上げる『ゆっくり解凍』だ。急激に温度を上げると凍結していた水分がうまみ成分と一緒に流れてしまい、おいしさが損なわれてしまう。
・冷凍庫から冷蔵庫に移して、ゆっくり解凍しよう。
・時間がないときは、流水や氷水にさらして解凍しよう。
■エバラ食品工業株式会社 コミュニケーション部 菊岡裕子(きくおか ゆうこ)氏
管理栄養士/フードコーディネーター1級/お肉検定1級
2006年エバラ食品工業株式会社入社。マーケティング部にてメニュー開発を約10年間担当。2016年商品開発部にて「プチッとごはんズ」を開発 2018年コミュニケーション部にてメニュー開発を担当。
出典元:エバラ食品工業株式会社
構成/こじへい