この写真、踏切を待つといったよくある日常の光景のようだが、通過している車両をよ〜く見てもらいたい。白いボディーに青のライン……そう、東海道新幹線が通っているのだ。東北地方の人なら、山形新幹線や秋田新幹線も踏切を通るから、決して珍しくない、と思うかもしれないが、山形新幹線、秋田新幹線は「ミニ新幹線」で、そもそも在来線を通る設計。東海道新幹線は高架を走ることを前提に作られたフル規格なので、ある意味でありえない光景なのだ。
場所は静岡県の浜松市にある「西伊場第1踏切」。では、なぜ東海道新幹線が踏切を通過するのかというと、ここにJR東海の浜松工場があるから。ここでは、JR東海の車両メンテナンスなどを行なう施設で、検修をしなければいけない時期が訪れると新幹線車両が、この踏切がある引き込み線を通ってやって来るのだ。
当然、一般的な踏切と同じく新幹線が通過する時も「カンカン」と音が鳴る。そこに現れる新幹線は〝夢の超特急〟と言われる〝いつもの姿〟はない。実にゆっくりゆっくりと進むのだ。さらに新幹線は最大で16編成もあるので、通過し切るまで約4分もかかる。なかなか踏切は開かないので、急いでいる人はご注意を。しかしその分、じっくりと車体を観察できる。特に普段はホーム下に隠れている台車部分が見るのが魅力だ。
当然、レアスポットだけに訪れる鉄道ファンは多い。安全に配慮しつつ、マナーを守って撮影してほしい。ちなみに、この踏切だけ見に浜松まで行くのはコスパが悪いと思った人は、毎年10月初旬に「新幹線なるほど発見デー」なるイベントが浜松工場で開催されるので、そこまで待つのもいいかもしれない。
文・撮影/寺田剛治