〈日本一大きいからくり人形〉三重県
毎年8月の「大四日市まつり」、10月の「秋の四日市祭」にお披露目される山車が実にユニーク、かつ日本一。写真を見ればわかるように、全高9m、身の丈4.5mの巨大な人形が高さ1.8mの山車に鎮座ましましているのだ。およそ伝統的な祭だと、いかにも格式がありそうな凛としたものやきらびやかな人形を祀るイメージがあるが、これは違う。坊主頭で、村山元首相のような長〜いまつげを生やし、バカボンのような着物を着ている。素人目には、予算がなくてうまく使れなかったのかな? と思うのだが、実はこの人形は江戸時代後期、1805(文化2)年に製作された由緒正しいものなのだ。
なぜこんなに大きいのか? というとそれには秘密がある。何と台座となっている山車と人形の体内には人が入るスペースがあり、操作できるようになっているという。そう、「からくり人形」なのだ。6人の人形師が太鼓や銅羅のリズムに合わせて両腕を振って見せたり、舌を伸ばしたりするのだ。最大のからくりは、まるで妖怪・ろくろ首のように首が伸びること。首の伸び縮みは最大2.7m! 江戸時代にこんなユニークかつダイナミックな人形を製作していたことに驚く。
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この人形の名称は「大入道(おにゅうどう)」。かつて町に出没するタヌキの悪事に困りはてた人びとが、すごみのきく大きな大入道を作り、タヌキを退散させたという民話を元に作られたという。また、旧・桶之町(現・四日市市)の町衆が桶=オケに「大化(おばけ)」の文字をあて、仮装行列を四日市祭に奉納したのが始まりと言われており、妖怪や鬼を思わせる彫刻が山車にも施されている。なお、今も仮装行列は恒例なので、10月末のハロウィーンを「大入道」のように首を長〜くして待っている人は四日市に足を運んでみたら?
住所:三重県四日市市中納屋町
文/寺田剛治