鉄道車両に付けられている「キハ」「クハ」「モハ」。などの謎のアルファベットやカタカナ。これらにはひとつひとつちゃんとした意味があるのは、鉄道ファンならずともわかるが、それを知る機会はなかなかない。まるで暗号のような鉄道車両だが、JR、私鉄各線ともに一両ごとに異なる記号、が割り振られている。主に、車体中央の下部や車内の端部などに記されており、それを「形式」と呼ぶ。一般的にアルファベットとカタカナ、数字を組み合わせて分類しているが、複雑なようでいて実は意外に単純なのだ。特にカタカナ表記は明確で、例えば寝台車なら「寝」を「ネ」、郵便車なら「ユ」となどと、その車両の役割を示す言葉の頭文字を取っている。今回は最も一般的なJRグループの形式を上に記した①〜⑦を例に順に解説しよう。
1 車両の種類
ク=運転台を備えた制御車
電車を制御する運転台を備えた車両のを指す。「駆動車」と呼ばれることから、その頭文字の「ク」の表記になっている。
モ=モーターを備えた電動車
動力となるモーターを搭載した車両。「モーター」の頭文字をとって「モ」に。
クモ=運転台とモーターを備えた制御電動車
「ク」(運転台)と「モ」(モーター)を兼備した車両のこと。
サ=牽引される付随車
運転台もモーターも搭載されていないため自走できない車両で、電動車などの間に差し込まれて牽引される。差し込まれる車両だから「サ」。
キ=エンジンを搭載した車両
ディーゼルエンジンで動く車両。「キ」は、」気動車の頭文字からきている。
キサ=エンジンを備えていない車両
ディーゼルエンジンで動く気動車に連結される付随車「サ」のこと。
ネ=寝台車
寝台設備を設けた車両。かつてのブルートレインなどがそれに当たる。寝るの「ネ」。
シ=食堂車
キッチンとダイニングを備える車両。「シ」は、食(しょく)の頭文字から。
ユ=郵便車
郵便事業者や輸送受託者が保有、使用し、郵便物などを運送する車両。現在は存在しない。郵便の「ユ」。
ヤ=試験車。事業用車
新型車両の開発や試験、鉄道設備の点検などを行なう車両。かつて役務車とp呼ばれていたため「ヤ」がつく。
フ=緩急車
車掌が乗り込むスペースとブレーキ装置が付いた車両のこと。ブレーキの「ブ」から濁点を取って「フ」に。
ニ=荷物車・電源車
新聞や手荷物などを運搬する車両。荷物の「ニ」。
テ=展望車
乗客に車窓の展望=「テ」を楽しんでもらうための大型の窓や窓側に向けられた座席を設けた車両。
2 車両の等級
ロ=グリーン車
普通車に比べて、1人当たりの占有面積が広く、座席の仕様が高かい車両。別料金がかかる。
ハ=普通車
乗車券を発行する際、運賃計算の基礎になっている車両。ベーシックな座席を備える。
3 所属する鉄道会社
JR東日本のみが使う記号。東日本=East Japanの「E」を入れることで、新型車両か否か見分けがつくようになっている。東北新幹線の「E5」、秋田新幹線の「E6」、写真の北陸新幹線「E7」がその例。
4 電気の形式
電気機関車や電車が走行できる電化線には「直流」と「交流」の2方式がある。JR、私鉄各線ともに直流区間が多いが、電化が遅れた北海道、東北、九州地方には交流う区間は多い。
1~3=直流
各所に設けられた変電所で直流に変換された電気で走る。
4~6=交直流
電車のうち、直流電化区間と交流電化区間の双方を走行できる構造を持つものを指す。
7~8=交流
発電所から交流でくる電気を、車両で直流に変電する車両。変電所が少ない地方では、変電所の設備投資を抑えられる。
5 使用種別
0~3=通勤・近郊形
主に都市部などで通勤・通学などに使われる車両を指す。
5~8=特急・急行形
主にその路線で最も速く目的地に到着できる列車。
6 系列
車両形式の製造順を示す数字。
7 製造番号
個々の車両を識別するための番号で、基本的に製造順になっている。例外もあり、3〜4桁の数字の場合は、形式の仕様区分が含まれることも。
これですべてではないが、何となく理解できただろうか? 自分がどんな車両に乗っているか知れば、旅行はもちろん、通勤もちょっと楽しくなる……かも。
文/寺田剛治