近年、企業がマインドフルネスを研修に取り入れるなどして「瞑想」関連が身近に浸透してきた。その瞑想も「自己対話」の一つ。自分自身への効果はもちろん、他人との会話力を磨くこともできるという。国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチの坪井一真さんに自己対話のメリットを聞いた。
「自己対話」とは?
自己対話とは一体どんなものなのか。坪井さんは次のように話す。
●自己対話とは
「自己対話とは、自らの内面と向き合う技術です。主に『セルフコーチング』と『瞑想』に分かれます。セルフコーチングも瞑想も“アウェアネス”のためのトレーニングです。アウェアネスとは思考に気付き、意識を向けることです。
私たちの頭の中では思考が四六時中、垂れ流されている状態です。でもほとんど気付かないのです。認知行動療法ではこの仕組みを自動思考といいます。思考に気付かないと、無意識的に垂れ流された思考に気持ちが左右されてしまうのです。頭の中のBGMといったほうがわかりやすいかもしれないですね。ネガティブな曲が立て続けに流れていては気分が滅入ってしまうでしょうし、テンションが上がる曲ばかりが立て続けに流れていれば次第に疲れてしまうでしょう。
私たちの脳は意識を向けて初めて、気付くことができるようにできているのです。気付くことができるということは、選曲を変えることもできれば、止めることもできるということなんです。また、ボリュームの調整もできますよね」
●自己対話で無意識下で押さえつけていた“心の風船”に気付ける
「また私たちは子どもの頃から『周囲や社会にどうみられるか?』に重きを置くように教育されてきました。そのため、無意識的にも自分自身の気持ちを押さえつけるようになってしまっています。自分自身の本当の気持ちを無意識下で押さえつけることが常態化してしまうと、押さえつけられた心はパンパンにふくらませた風船のように弾力がなくなり、本来持っているはずの心のゆとりがなくなってしまいます。
自己対話を行うということは、この今にも破裂しそうな風船から空気を抜いていくようなものです。自己対話を行うことで、無意識下の“心の風船”に気づくことができます。だからこそ、自らの手で空気を抜いていくことができるのです」
自己対話を通して得られるメリット
自己対話を通して得られるメリットは意外と多いという。
「セルフコーチングも瞑想も、得られるメリットはほぼ同一です。
例えば洞察力の向上、自らを客観視できるようになる、本当の自分の気持ちに気づくことができるようになる、押さえつけられたストレスの大もとに気づける、ストレスの原因に気づくことで対処が可能になる、押さえつけた感情を感じることでストレスから解放されていく、過去のトラウマの解消、自動思考(無意識的に流れるネガティブな思考)からの解放、安定した心を手に入れることができる、不安からの解放、思い込みからの解放などがあります。
また睡眠力の向上、集中力の向上、認知症の予防、記憶力の向上、目的達成能力の向上、自らの本当の価値観に気づける、自分自身の生き方が明確化する、傾聴力が身につくなどのメリットもあります」
自己対話で「人との会話」もレベルアップ
坪井さんによれば、自己対話を通して他人との会話もうまくなるという。
「自己対話には付加価値のひとつとして『人との会話もレベルアップ』することもあります。その理由は自己対話を行うことで『傾聴力』が身につくからです。特に私たちコーチという仕事において傾聴は欠かせません。傾聴を行うためには、相手の話を100%意識して聞く必要があります。
自己対話を行っていると、無自覚に流れる自らの思考をコントロールすることができるようになってくるため、人との会話中、意識を常に相手に向けていることができるようになります。結果として、自己対話を行うことで、傾聴力は必然的にアップしていくようになるのです」
瞑想やセルフコーチングなど、自己対話に興味があるなら、こうしたメリットを得るためにも、積極的に取り組んでみよう。
【取材協力】
坪井 一真さん
シードコミュニケーションズ代表取締役。国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ、米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ。
国際コーチとしてエグゼクティブコーチングをクライアントに提供。月間10万人以上が訪れる自己実現ラボを運営している。また自己実現の講座を主催し、7,000名以上の受講生の自己実現をサポートしている。現在は、コーチやコンサルになりたいという方にネットビジネスを成功させていくための「つぼろぐ」を公開し、月収100万円を超えるネットビジネスの成功者を数多く輩出している。
「自己実現ラボ」https://visionary-mind.com/
「つぼろぐ」https://tsubolog.com/
取材・文/石原亜香利