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キヤノンの決意を感じた!単機能でハイコスパ、ピンボケ写真も味になるトイカメラ風デジカメ「iNSPiC REC」

2019.12.10

■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所

オヤジではなく女性のニーズに合ったデジカメ

キヤノンから予想実勢価格約1万3800円のコンデジ『iNSPiC REC』が12月下旬から発売予定だ。一見、トイカメラのようなデザイン。1300万画素、レンズは単焦点25.4mm(35mm換算)でズームなし、AFなし、静止画の手ブレ補正なし、連写2コマ/秒と驚くようなスペックは見当たらないが、これが女性とデジタルネイティブの若年層に向けた新コンセプトのカメラだという。

キヤノンの調査によれば、デジカメのメインユーザーは40〜60代の男性が全体の73%を占めている。もっと若年層のユーザーをターゲットにしたいと考えた同社は女性社員によるマーケティングプロジェクトichikaraを立ち上げ、クラウドファンディングを使って製品を提案した。そのコンセプトはスマホネイティブ世代でも欲しくなるデジカメである。

スマホのデジカメ機能は長足の進歩を遂げて、高画質、手ブレ補正、複数のレンズによるズーム化、ポートレートモードや夜景モードによって、従来苦手だった被写体も克服した。さらにスマホ自体の防水化により水中撮影すら可能になってきた。スマホの高性能化によって現れた、唯一の弱点は高価過ぎて壊すのが怖いということ。これに対して『iNSPiC REC』は重さは約90gしかなく、ハイコスパ、IP68準拠で水深2mで30分間の撮影が可能、ショックプルーフで2mの高さから落としても壊れにくい。オモチャにされても壊れないので、子供に渡して写真を撮らせることもできる。

デジカメのメインユーザーは40〜60代のオヤジ世代が占めている

液晶画面がないので撮影後にしか結果が分からないワクワク感

フィルムカメラ時代では当たり前だった、撮影結果はフィルムを現像してプリントするまで分からない、ということを『iNSPiC REC』が思い出させてくれる。もっとも外枠しかないスポーツファインダーで構図を決めるのはかなり難しそうだ。まあ、25mm相当ならスマホの標準レンズ28mmに近いので、普段の感覚で撮っても間違いはなさそうだ。撮った画像は専用アプリでスマホに送られるので、実際にはすぐに撮影結果が見られる。

さらにライブビューを見ながらのリモート撮影にも対応する。とオヤジ世代にも安心できる機能があるが、本機はフックでバッグにぶら下げておき、気軽に撮れることがウリのデジカメなのだ。パンフォーカスカメラなので、50cmより近付くとピンボケになるが、キヤノンコンスーマ商品企画部の沢田泰一本部長は「ピンボケも味のうち。スマホの画面で確認して、うまくいかなければ撮り直す。そんな不便さを楽しんで欲しい」と語った。高画質にこだわるキヤノンにしては大胆な意見だが、2018年に発売したiNSPiCの第一弾であるスマホ専用ミニフォトプリンター『PV-123』がプリントの画質よりもコンセプトが受け入れられてたことに自信を得たようだ。

カラビナのフック部分の枠が1:1のファインダー枠を兼用している。4:3の時もこの枠を使う

このようにカラビナを使ってショルダーバッグやデイパックなどにひっかけられる

背面には電源兼用のモードダイヤルがあるのみ。アスペクト比などは専用アプリで切り替える

フロントのフェイスジャケットは交換式で現状は3種類だが、今後、多くのバリエーションを発売予定

基本はひっかけて収納、ひっかけて移動ということになる

クラウドファンディングでは1000台が即日完売!

もともと『iNSPiC REC』は海外のクラウドファンディングで先行販売され、国内のクラウドファンディングサイト「Makuake」でも10月17日プロジェクトが開始され、目標額の13倍を即日集めて、1000台が完売した実績がある。この結果を踏まえて12月下旬に一般販売が決まったのだ。

それだけのニーズがあると言われても、ピンとこないのは私がオヤジだからだろうか。液晶画面を見ながら撮ることに慣れた我々から見ると、斬新そのもの『iNSPiC REC』がヒット商品になるかどうかキヤノンのお手並み拝見といきたい。

専用アプリ「Canon Mini Cam」でデータをスマホに転送、カメラ設定やリモート撮影もできる

ショルダーストラップにひっかけて、素早く外して、素早く撮る、撮影スタイルを採用

写真・文/ゴン川野

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