「プリクラ」は死語ではない。今もなお、女子学生のハートをつかんでいる。
スマホのカメラで誰もが高画質な写真が撮れる時代でも、ゲームセンターに行くと「プリクラ」の機械がある。女子学生や若いカップルたちが楽しそうに撮影している。
注:「プリクラ」はセガホールディングスの登録商標ですが本記事では、ゲームセンター等に設置されている自分の顔や姿を撮影して印刷できる機器の一般名称として使用しています。
非日常でワクワクするときに楽しめるのがプリクラの良さ
女子学生向けサービス企画コンサル会社である株式会社ネオレアが発表したアンケート調査結果によれば、特別な時に撮るのが「プリクラ」で、撮るというイベントを楽しんでいるという。
引用元:イマドキのプリクラ事情/ネオレア
”自撮りでは味わうことのできないワクワク感、「非日常の時間と体験」”(調査結果より引用)が楽しさの根源であるという。
プリクラが初めて登場したのは1995年7月のこと。現在はセガサミーグループの一員である株式会社アトラスが開発した。正式名称は「プリント倶楽部」で、「プリクラ」と共にセガホールディングスが登録商標を保有している。
日本アミューズメント産業協会(https://jaia.jp/)によれば、1997年に1000億円超えの売上高を記録して以降市場規模は縮小傾向で、現在では200億円ほどの市場規模。
2018年にはプリクラ機器で業界大手だった株式会社メイクソフトウェアが倒産するなど厳しい状況が続いている。
そんなプリクラ業界でアミューズメント施設への設置機器数シェア90%を抑えている企業がフリュー株式会社(東証一部・6238)(以下、フリュー)だ。
下図のようにエンターテイメント領域で「ガールズトレンドビジネス」と「世界観ビジネス」の2つの領域で事業を展開している。
引用元:2020年3月期 第2四半期 決算説明会資料/フリュー(以下、フリュー決算説明会資料)
女子高生の98.3%がプリクラで遊んだことがある回答。フリュー社のプリクラ機は年間4,539万回も遊ばれている
フリュー社の2019年度第二四半期決算説明によれば、2019年4月から9月までのプリクラ領域の売上高は約48億円。スマホを使ったオンラインでの画像取得サービスを展開するなどして、縮小傾向にあるプリクラ市場の維持・拡大に努めていることがわかる。
フリューではアミューズメント施設に機器本体およびプリント紙の販売を行い、エンドユーザー向けには「PICTLINK」というサービスを提供。プリクラで撮影した画像をインターネット経由で取得できるようにして、スマホと共存できる仕組みを作っている。
PICTLINKの延べ利用者数のうち約10%が有料会員登録を行っている。月額300円(税抜)の有料会員になると機器で撮影した画像全てが、スマホで保存できる。
参考まで2018年5月現在の高等学校の生徒数は約320万人(文部科学省公表)。その半分が女子生徒だとすれば、有料会員は高校生の女子全員が使っているくらいの規模感だ。
2018年度のフリュー社の事業ポートフォリオでは、売上全体の35%がプリクラによるもの。約96億円の売上高があり、売上縮小を食い止められるかがフリューの腕の見せ所。の他の事業領域ではクレーンゲームの景品提供や、スマホや家庭用ゲーム機で遊べるゲーム開発を行っていて、売上高は全体で約271億円。
学校を卒業してからもプリクラで遊ぶユーザーを増やせるか
フリューの施策では、ユーザー年齢層の拡大を狙っている。そのための新機種投入や直営店の出店により、市場設置台数を維持するための取り組みを行っている。
説明資料では大学生のユーザーを取り込もうという戦略が読み取れるが、学校を卒業し社会人となった20代や30代以降の女性をターゲットにした戦略は無いのだろうか。飲み会の帰りにプリクラを撮ろう。なんて呼び込みがあっても面白いはずなのに。
文/久我吉史