料理レシピの投稿サービスとしておなじみの「クックパッド」。毎日、料理の手助けとして欠かせない人も多いだろう。そんなWebサイトのレシピ情報が今、家電につながろうとしている。その詳細について、同社の担当者に聞いた。
ユーザーの工夫をユーザー同士で共有できる世界を作りたい
73か国に展開され、日本で約5400万人、全世界で約9300万人ものユーザーが利用している料理レシピサイト「クックパッド」。その担当者によって進められているのが、スマートキッチン家電を活用するプラットフォーム「OiCy」だ。
「今、盛り上がっているスマートキッチンやフードテックは、時短、簡単、自動化がキーワード。それに加えて、ひとりひとりが考える『おいしい』を誰でも表現できる……。そんな未来を、OiCyで作りたいんです」
そう話すのは、担当の住さん。OiCyがフォーカスするのは「スマートキッチン家電を使ったユーザーの工夫を、ユーザー同士で共有できる世界」だ。従来のレシピは「強火で5分」のように情報が曖昧なことが少なくない。その点、スマートキッチン家電ではレシピを作った人と同じ状態を再現できることを目指しているという。
「レシピどおりではなく自分なりに加えた工夫も、そのとおりに伝えられるのが目標。1つのレシピから様々なユーザーの、いろんな思いのレシピが生まれて、クックパッドに多様性が生まれることを期待しています」
それを実現すべく、同社自らがキッチン家電を開発中だ。
「料理の決め手である味つけを簡単に再現できるように、まず調味料サーバーの試作を開発しました。これにより、クックパッドのレシピの調味料を、データに基づいて調合できないか、模索しています。本機を使ってタレを提供することも、業界の方と一緒に検討しています」
また、日立とシャープとは、オーブンレンジとレシピを連動させる実証実験を進めている。
「自分が本来やりたかったことをできると『もっと工夫しよう』と楽しくなるはず。OiCyのテクノロジーで、それを後押ししたいですね」
「5年後くらいに普通に使われている」を考えながら開発を進めている住さん。効率化だけではない新しい料理のスタイルやレシピを家電でシェアする世界が、近い未来に実現しそうだ。
レシピ連動調味料サーバー「OiCy Taste」。クックパッドのレシピと連動し、必要な調味料を自動で計算する。人数変更や好みのアレンジもできる。試作機。
クックパッドのユーザーによって生まれるレシピの数々。自分はもっとこうしたいという発想や思いを、OiCyによってスマートキッチン家電に取り入れる。
既製品を改良するなどしているコンセプト試作機の一部
水の硬度と分量をレシピに合わせて抽出する「OiCy Water」。
閲覧中のレシピに書かれた加熱ワット数や加熱時間をWi-Fiで転送できる電子レンジ「SIGMA」。
レシピの火力と加熱時間を、レンジ同様にスマホで転送できるIHプレート「OMEGA」。
クックパッドスマートキッチン部門 住 朋享さん
スマホアプリのプロデュースやシリコンバレーでの駐在業務などを経て2015年にクックパッドに入社。スマートキッチン事業の立ち上げ担当。
取材・文/房野麻子