使い勝手がよく安心感のあるデザインで、ヒットの可能性大
奇をてらわず、スタンダードを目指している端末ゆえに、指紋センサーは前面に搭載されている。この位置にあれば、手に取った時はもちろん、机やテーブルに置きながらでも指を当てることができ、ロックの解除がスムーズだ。ハイエンドモデルでは、画面内指紋センサーを採用する端末も徐々に増えているが、コストとの兼ね合いでそこまでは難しかったのかもしれない。とは言え、デザインやディスプレイサイズを優先して背面や側面に配置するよりも、使い勝手はいい。デザインやわずかなディスプレイサイズではなく、使い勝手という実を取った判断と評価できる。
ユーザーインターフェイスもシンプルで、カスタマイズは最小限に抑えられている。Androidに慣れている人であれば、すぐに使いこなせるはずだ。一方で、ナビゲーションキーには、慣れが必要になる。標準では、ホームキーと履歴キーを兼用したバーに加え、バックキーを備えているが、これは、Android 9以降の“お作法”に則ったもの。バックキー、ホームキー、履歴キーの3つが並んでいた以前のAndroidに慣れていると、操作性の違いに戸惑うこともある。
Androidの標準近いユーザーインターフェイスで、画面下には戻るボタンとバーを備える
「設定」→「システム」→「操作」→「ホームボタンを上にスワイプ」で3つのキーを“復活”させることはできるが、もう少しわかりやすい表記にしてほしかったというのが本音だ。先に挙げた指紋センサーを左右になぞることで、「戻る」や「履歴」の操作を兼ねるようにする設定も用意されているが、少々クセがあることは否めない。
デザインはシンプルで、万人受けしそうだ。FeliCaのアンテナが2つのカメラの中央にあるのは少々驚いたが、金属のボディを採用しているため、ここに配置せざるをえなかったのだろう。離れ業とも言えそうだが、端末に切り欠きを増やしてしまうよりも、見た目はシンプルになる。AQUOS sense2よりも、金属そのものの持つ質感になっており、持った時のサラサラとした感触も気持ちがいい。決して尖ったデザインではないが、安心感のある外観と言えそうだ。
不満点が少ないAQUOS sense3だが、これだけの機能を備えながら、3万円台半ばという価格を打ち出せたのは、高く評価できる。電気通信事業法が改正され、大手キャリアや上位のMVNOが端末割引をしづらくなっていることを踏まえると、AQUOS sense2の時以上に、コスパのいいミドルレンジモデルのニーズは高くなっている。端末そのもののコストパフォーマンスのよさと相まって、シリーズ最高のヒットモデルに化ける可能性もありそうだ。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★
持ちやすさ ★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★
UI ★★★★
撮影性能 ★★★
音楽性能 ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★
生体認証 ★★★★
決済機能 ★★★★
バッテリーもち ★★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。