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「ひどい腰痛と食欲低下ががんの予兆でした」歌手misonoさんの夫Nosukeさんが語る〝働きながらがん治療をする〟ということ

2019.11.29

「アラサーでがんになったら……」Nosukeさんの闘病記

歌手misonoさんの夫で、ロックバンド『HighsidE(ハイサイド)』のドラマーとして、活躍中のNosukeさん。

約1年前の2018年11月、29歳の時に、精巣がんによる胚細胞腫瘍と診断され、2度の手術、抗がん剤治療と、1年近く入退院を繰り返した。

現在は通院の必要はなくなったものの、再発の可能性もゼロではない。

今回は、自らの闘病生活を振り返り、「仕事をしながらがん治療をすること」についてお話を伺った。

Nosukeさんのブログより。精巣ガンと診断されてから、1年後の写真。左がNosukeさん、右が妻・misonoさん

腰痛と食欲低下ががんの予兆

2018年の11月に精巣ガンと診断された。その前に何らかの兆候はあったのだろうか。

「2018年の1月から腰痛がひどくなっていました。僕はドラマーなので職業的なものだと思い、腰痛を緩和するための背筋のトレーニングなどを行っていたのです。その後、6月にスタッフさんから、『黄疸出てない?』と言われました。相当顔色が悪かったんだと思います。その時に、総合病院に行って検査をしたけれど、黄疸は出ておらず、肝機能の低下を指摘されました」

その後、腰痛はますます激しくなり、食欲も低下。

「僕はよく食べる方だと思うんですが、日に日に食べる量が減っていく。宣告される1か月前の10月は、コーヒーだけでお腹いっぱいになり、18時過ぎると発熱。腰痛も激化していたのですが、公演がありまして……。その千秋楽のときに、スタッフさんから、『すぐに病院に行って。行かなければこのプロジェクトを外す』と言われたのです」

そこで総合病院に行き、検尿、胃カメラ、採血、CTスキャンなどの検査を受ける。

「結果が出るのが一番早かったのがCTで、すぐに造影剤を入れて再撮影になりました。その時、妻の母が付き添ってくれていたのですが、再検査となった時に『まあ、どうなるかわからないけど、最悪、笑うしかないね』と“なんでもないよ”という口調で言ってくれたことに元気づけられました」

その結果、胃の下に15センチの大きな腫瘍が見つかった。

「お医者さんから『びっくりしないでね』と言われたときに、息がつまりました。最初に、悪性リンパ腫と診断されたのですが、そこからの話が入ってこなかったです」

病気という病気をしたことがなかったNosukeさんは、“がん=死”だと思い込んでいた。これは、多くの人も同じではないだろうか。当事者にならないと、病の実態は見えてこない。

「先生が治療方法を説明してくれました。それなら、治ることに全力を尽くそうと思ったのです。当時、全くお金がなかったので、借りるしかない。この瞬間から、“落ち込まず前に進もう”と思ったのです。それは付き添ってくれた義母がパンチの効いた冗談を飛ばしてくれたことも大きかったと思います」

精巣がんは、30代以下に多い

Nosukeさんは、精巣ガンだと診断されたが、腫れたのは腹部リンパ節だった。

「精巣に痛みも何もないのですが、機能はしていなかったのです。担当の医師と、治療プランを立てました。まずは、がんの原因である左の精巣を取り、傷が回復してから、抗がん剤治療を4~5クール。その後1か月くらい自宅静養して、体力をつけてから、巨大化している腹部リンパ節の悪性腫瘍を開腹手術することになったのです」

子供がいないのに左の精巣を手術で取る。初めての入院と手術……不安はなかったのだろうか。

「精巣については、片方がなくなっても、問題ないと言われました。部位よりも、がんと言われたことの衝撃は思った以上に大きかったです。僕はいわゆる“がん家系”ではないですし、周囲に闘病していた人もいないので、どう受け止めていいかわからなかった」

精巣がんは10万人に1人で、10~30代に多い(※参照:『がん研有明病院』WEB)。幼い子供がなることもあり、原因は不明だ。

「がんの原因はストレス、飲酒、栄養、仕事、運動不足などと言われていますが、僕はあまりピンとこなかった。確かに、清涼飲料水やファーストフードは好きですが、同じものを食べている仲間は発症していない。そこは体質なんだと思います」

抗がん剤治療は、4か月間続いた

精巣摘出の手術は、数時間で終わり、1~2週間様子を見てから、抗がん剤の治療に入る。

「僕にとっての、抗がん剤のイメージは、吐き気、痛み、毛髪が抜けて、ご飯が食べられなくなるイメージでした。それに、点滴も初めてでした。しかし、僕の場合は、薬が合っていたのか、1クール目はそれほど辛くなかったです」

“1クール”とは、数日間の投薬期間の後に、休薬期間を持つことだ。Nosukeさんの場合は、投薬5日間行い、14日の休薬期間だった。

「投薬で病院にいる間、妻とバンドのメンバーが、お見舞いをブッキングしてくれました。落ち込む暇がないというのが、よかった。義姉(歌手・倖田來未さん)も、よく病院に来てくれて、とても元気づけられました」

抗がん剤の投薬治療中のNosukeさん

ステージ3の闘病情報は少ない

Nosukeさんのがんは、肺に転移しておりステージ3だった。

「生存率が高いのはステージ1~2まで。その闘病記はあるのに、ステージ3からの闘病情報は少ない。だからこそ、『負けてなるものか』と思いました。病気は、気持ちの持ち方は大きい。風邪ひいても『だるい、つらい』と思うのと、『よし、頑張って治すぞ』と思うのでは、治りが違うと思うんです。今回、がんになって思ったのは、最終的に根治させるのは自分の免疫だということ。薬は補助でしかないと感じたのです。病気は一進一退ですが、気持ちを強く持つこと、気にしすぎないことが大切だと思いました」

4カ月にわたる抗がん剤治療中に、リサーチを続け、論文が読めるようになっていく。

「抗がん剤治療は、回を増すことに、副作用が強くなり、体力も落ちてくる。味覚障害で食欲がおちて、体重も10キロ以上落ちました。ネガティブな情報も入ってきますが、とにかく気持ちを強く持とうと思ったのです」

ブログ開設で、夫婦ゲンカ!

闘病には、家族、仕事仲間や友人の支えがあった。特に妻・misonoさんから強く「ブログを開設して。やらないと離婚!」と言われたことが大きかった。

「妻・misonoが“離婚”という言葉を持ち出して、ブログ開設を強く勧めてきました。僕はがんと宣告されてそれどころではないのに、彼女は『がんのことを、ブログで情報発信した方が良い。世のため、人のためになれるし。コメントはアンチもあるかもしれないけれど、逆にNosukeが救われたりするはずだから。そして噂や他人の口から語られる前に、自分で伝えた方がちゃんと届くから』と言われました。

その意味が、当時は全くわからず、大ゲンカする。強硬に開設を進めるmisonoさん。

「とはいえ、離婚はしたくなかったので、ブログを開設しました。すると、多くの人から『頑張って』『復帰、待ってます』と書き込みがありました。これは、とても新しい感覚だったのです。正直、僕が注目されたのは、misonoの夫であり、倖田來未の義理の弟ということだと自覚していました。でもブログでは、僕が発信した情報に、多くの人が反応し、コメントをくれました。それに、同じ状況の人と励まし合うこともできたのです」

その後、Nosukeさんは、「地獄の苦しみ」という腹部リンパ節の腫瘍をとるための、開腹手術を経て、手術から10日後にバンドに復帰する。

「階段を下りられないほど筋力が落ちているのに、無理だと思いましたが、同時にやればできると確信していました。かつてなら、大事をとっていたかもしれませんが、死ぬか生きるかの局面に立つと、腹も据わるのかもしれません。退院直後から散歩などをして、徐々に筋力をつけていったのです」

そのステージは成功し、その後も順調に復帰していく。

「辛いこともありますが、とにかく前に進もうと。病の過程で、生きることの意味と向き合うようになりました。それまでは音楽漬けの人生でしたが、今はがんの闘病について、多くの本を読み、医師会のセミナーなどにも参加させていただき、知見を広げています。働きながら、がんの闘病を行うことは可能です。僕の経験が、多くの人に役立てればと考えています」

演奏家・タレント
Nosuke

1989年7月16日生まれ。ポップス、ロック、ファンク、ヒップホップ、R&Bと幅広く活躍。11歳からドラムを始め、岩田ガンタ康彦氏に師事。16歳からバンドやシンガーソングライターのレコーディング、ツアーのサポートドラマーとして活動。バンド『HighsidE』のほか、夫婦ユニット『misoNosuke』としてもメディアやイベントに出演。
公式ブログhttps://ameblo.jp/blog-drum-nosuke/

取材・文/前川亜紀

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