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日本一おいしい病院レストランのシェフが伝えたい本当の「健康食」とは?

2019.11.30

〝日本一おいしい病院レストラン″山田康司シェフインタビュー【前編】

新刊『日本一おいしい病院レストランの 野菜たっぷり長生きレシピ』が発売され、話題となっている。著者は長野県上田市にある丸子中央病院内のレストラン『ヴァイスホルン』シェフ、山田康司さんだ。

山田康司さん
石鍋裕氏に師事し、フランスでの修行を経て『クイーン・アリス』(東京)料理長ほか系列店の料理長を歴任。2013年より現職。

丸子中央病院の9階にあるレストラン『ヴァイスホルン』は平日の昼間、一般にも開放され、山田シェフのランチを楽しむ人たちでにぎわっている。さらに、数年前からは地元のスーパーマーケットと協同で、シェフ考案の健康的なレシピの数々を「いきいきレシピ」として一般に提供。それらの集大成が今回のレシピ本だ。

『日本一おいしい病院レストランの 野菜たっぷり 長生きレシピ』
著/山田康司 1400円 小学館

山田シェフの料理に対する姿勢と、忙しいビジネスパーソンにも有用なこの本のポイントをうかがった。

料理は「素材の味を引き出す」のが重要なポイント

――レストラン『ヴァイスホルン』は病院内にあるレストランですが、一般の方も利用できるんですね。

山田シェフ: 丸子中央病院は、「地域に開かれた病院」、「病がなくても行きたい病院」を目指す地域密着型の医療機関です。その考えから、レストラン『ヴァイスホルン』は病院の最上階の眺めのいい場所にあり、月曜から金曜の平日のランチタイムとティータイムは、一般の方にも利用していただいています。

ランチメニューは日替わりで、メイン1種類に副菜とデザート、コーヒーまたは紅茶のセットです。金曜日はカレーです。

――レシピが掲載されている「丸子中央病院のスペシャルカレー」ですね。大人気だとうかがいました。発売中の『DIME』1月号でも紹介していますが、おいしさの秘密はどこにあるのでしょう?

山田シェフ: どんな料理でも、食材の味を引き出すことが作り手の役割だと思っています。『丸子中央病院のスペシャルカレー』では、豚肉にカレー粉とスパイスをまぶし、炒めたタマネギや野菜と一緒にオーブンでじっくりと蒸し焼きにして、肉と野菜の旨みを凝縮させます。スパイスの香りも焼くことによってより一層引き立ちオーブンで焼いた後は軽く煮るだけで、長時間煮込んだような熟成感のある味に仕上がります。

基本的に「素材本来の味を引き出すような調理」をすれば、たくさんの調味料を使って味を付けなくてもおいしくなります。今の時代、食材は豊富に揃います。家にある調理家電ももっと活用すればいいんだと思います。

――確かに、電子レンジや炊飯器など調理家電を上手に利用して、料理初心者や忙しい現代人でも効率的でおいしく仕上がるレシピが掲載されています。「これはぜひ作ってみて欲しい」というメニューはありますか?

山田シェフ: 材料がシンプルで手順も簡単ですがおいしくできるのが、「豚バラ大根」です。用意する食材は豚スペアリブと大根。調味料も多くなく、調理は炊飯器の炊き込みモードで加熱するだけです。

炊飯器調理で楽に作れる、味がよく染みた豚バラ大根。

――なるほど。料理初心者でもすぐにできそうですね。炊飯器調理というのは、レストランではあまりやらない気がしますが……。

山田シェフ: 実は炊飯器調理は、自炊していた学生時代にいろいろ試していたことがベースになっているんです。

――炊飯器調理がまだ全く世間で話題になっていなかった頃に!?

山田シェフ: そうですね。30年以上前、18歳の頃です。きっかけは、ご飯を炊くときに、さつまいもを一緒に入れれば同時に炊き上がる、ということでした。鶏肉とキャベツを入れ蒸し焼きにしたり、いろいろ試してみました。

地元スーパーとコラボした「いきいきレシピ」

――長野県内のスーパー「ツルヤ」さんとタッグを組み考案した「いきいきレシピ」が本のベースになっているんですね。

山田シェフ: 「ツルヤ」の社長さんが人間ドック受診後の食事を召し上がり、とても気に入ってくださったことをきっかけに、スタートしました。毎月3~4種類のレシピを小さなカード状にして店頭に置いています。

――「ツルヤ」さんとの取り組みはもう4年目になるのですね。

山田シェフ: 「料理を作るのが楽しくなりました」という声もあって励みになります。料理を全くやったことがなくてもわかる手順を心がけていますし、さらには、料理の仕組みを会得できるように作っているつもりです。「この料理を作りたい!」と思った方の手助けをしているだけです。

食事においては、「いろいろな食材をバランスよくおいしく食べようとすること」が健康食の基本。無理に味を付けるのではなく、「素材を生かして味を引き出す調理」をすれば自ずとおいしくてなおかつ、健康な食事が実践できると思います。毎日の料理作りや家庭のだんらんが、より楽しくなる手引きとしてこの本を活用していただければと思います。

『日本一おいしい病院レストランの 野菜たっぷり 長生きレシピ』 
著/山田康司 1400円 小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09310634

【後編】は、東京大学を中退して料理の道に進んだ山田シェフの半生に迫ります。

取材・文/はまだふくこ 撮影/泉健太

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