東京ミッドタウンデザインタッチに展示された「MAZDA CX-30」にマツダの“魂動デザイン”の哲学を感じた!
先ごろデビューを果たした、マツダの新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-30」をすでにご覧いただいただろうか?そのエクステリアデザインは、無駄のない端正な趣きながら、ホイールアーチ部とボディ下部に幅広いブラックパネルを採用することで、SUVらしい力強さをも両立させて見る者を魅了する。
そんな美しくて魅了的な「MAZDA CX-30」の実車を、どうしても見たくなった。
すると、幸運なことに10月18日から27日まで、東京ミッドタウンで開催されるデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2019」に「MAZDA CX-30」が登場するというではないか。しかも、マツダのチーフデザイナーなどにもデザインの話が伺えると聞き、さっそく行ってきたのでその様子をレポートしよう。
マツダが東京ミッドタウンデザインタッチに出展する理由
ということで、まずは「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2019」に「MAZDA CX-30」とともに参画する理由について、マツダ株式会社のデザイン本部 ブランドスタイル統括部の一色令子さんに話を伺った。
ーーそもそもマツダさんがデザインという部分に、こだわりを持っているのはよく分かっているのですが、こちらのデザインイベントに出展するというのは、どういう狙いがあるのでしょうか?
一色さん:「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトにした「東京ミッドタウンデザインタッチ」は、デザインを通じて日常生活を豊かにすることを提案するイベントで、マツダは今回で8年連続の出展となります。
昨年は、初のアートとのコラボレーションということで、イタリアのファッション雑誌「VOGUE ITALIA」さんと共同で、マツダの次世代デザインビジョンモデル「マツダ VISION COUPE」とアート写真13点を組み合せた展示を行いました。
そして今回は、グローバルに活躍するビジュアルデザインスタジオ「WOW (ワウ)」さんとコラボレーションし、「ART OF LIGHT -reflection-」をテーマに、先進的でユニークな空間創りをめざしました。
会場には、「クルマに命を吹き込む」というマツダの魂動(こどう)デザインの考え方を具現化した「MAZDA CX-30」を展示。周りに大型LEDモニターやハーフミラーを配置し、「光の移ろい」の美しさを表現しました。
ーー昨年は、写真で今回は映像という違いがあるんですね。
一色さん:そうですね、昨年は、クルマのボディに写り込んだ写真が、見る方が動くことによって光のリフレクション(反射)が変化する展示方法だったのですが、今回はさまざまに変化する模様の映像、さらにはLEDやミラーのリフレクションが「MAZDA CX-30」に折り重なるように映し出され、いままでにない不思議な体験ができるんじゃないかと思っています。
ーー展示車のボディカラーに「ソウルレッドクリスタルメタリック」を選んだのは、メインカラーだからでしょうか?
一色さん:いえ、弊社としては、特にこだわってはいなかったのですが、「WOW」のチーフクリエイティブディレクターの於保浩介さんから、光やリフレクションが映えるということでご提案いただきました。今回の映像の中にストレートのラインが横に走るものがあるのですが、「MAZDA CX-30」の特徴でもあるボディサイドのS字ラインをキレイに映し出してくれていると思います。
最大限に美しいデザインを追求してブレイクスルー
さらに「MAZDA CX-30」のデザインを手がけた、デザイン本部 チーフデザイナーの柳澤亮さんと、インテリアデザインを担当したデザイナーの狩野梓さんに話を伺った。
写真右のチーフデザイナーの柳澤亮さんと、写真左がカラー&トリムデザイナーの狩野梓さん
ーーまず、「MAZDA CX-30」のデザインコンセプトを教えていただけますか?
柳澤さん:デザインコンセプトは「Sleek&Bold(スリーク&ボールド)」です。基本的な考え方なんですが、このクルマはコンパクトクロスオーバーということで、全長が短めで背がちょっと高めという縦横比のプロポーションになってます。
これは日常の使い勝手をよくしたいということで、特に日本のお客様が普段使うのにちょうどいいサイズを考慮しました。ただ、ちょっとずんぐりしがちな縦横比になるので、なかなか美しいデザインというのはつくりにくいんですね。でもその中で我々は、最大限に美しいデザインを追求したいということで、ブレイクスルーをしました。
そのひとつは、ボディ下側の黒い樹脂部分をクラッディングと呼びますが、この部分を通常より少し太めにすることでブラックアウトされ、残ったボディカラーの部分が薄くて空中に浮いているような視覚効果を取り入れ、非常に伸びやかなプロポーションを表現することに成功しました。
また、前後席とも身長183cmの大人4名がしっかり座れる居住空間を確保するためには、どうしてもキャビンが四角い、箱っぽい形状になってしまいがちですが、ルーフをDピラーからバックウィンドウに向けてなだらかに流すことによって、非常に流麗なキャビンをつくることができました。そういうブレイクスルーをすることによって、居住性や実用性と美しいデザインを両立することができたと思っています。
ーーそのほかに、デザインする上で苦労した点はどういったところですか?
柳澤さん:ドアのボディのところにS字のリフレクションが入ります。これを我々は「移ろいの美」と呼んでいるのですが、今回進化したこのデザインの中でいちばん重要なひとつの要素となります。
日本の美を“光の移ろい”で表現したのですが、これを実現するのが非常に難しくて、ドアのエンジニアたちと、共につくるという共創活動によって、こういった美しいS字のリフレクションをつくりこんでます。
ーー背が高めのプロポーションということですと、つい素人だとキャラクターラインを入れるということを考えてしまうのですが、それはマツダさんのデザイン哲学に反するというか、そういう方向にはならなかったということですか?
柳澤さん:そうですね。我々は“魂動デザイン”というコンセプトで2010年からやっていますが、当初は、シャープなキャラクターラインを入れることによって、動き、生命感を表現してきました。
ただ、それからさらに進化して、今年発売された「MAZDA3」からは、新しい魂動デザインのやり方として、“引き算の美学”を取り入れています。それは、無駄な要素をなくすことによって、できるだけシンプルにテーマを表現したいと考えていて、あえてそういったラインは入れずに、柔らかな面の表情だけで表現していくということをやっています。
ーー確かに、キャラクターラインがないのでシンプルに見えますが、実際に近寄って見ると官能的で全然違いますね。
柳澤さん:そうですね。ご覧のように複雑な面で構成されているので、とてもシンプルに見えるけど実はシンプルではない、そういったキャラクターをしっかり持っている、そういうデザインなのです。これも我々の匠と呼ばれるモデラーの技によって、実現できていることです。
ーーちなみに、キャラクターラインというのは、空力が関係しているわけではなくて、デザインを強調したくて入れている場合が多いんでしょうか?
柳澤さん:キャラクターラインと空力の関係は、場所によって効く部分とそうでない部分があるので一概には言えないのですが、あまりボディサイドでは関係がない場合が多いですね。特に空力で重要となってくるのが、クルマの後ろまわりで、空気を後ろに巻き込まずに剥離させるのが大切になってきます。
この「MAZDA CX-30」では、実は見えないところで空力的なデバイスをいろいろやっています。例えば、フロントの下回りのエアダクトから空気を取り入れ、エアカーテンをタイヤ前に吹き出すことで、タイヤまわりの空力をよくするなど、クルマ自体の空力としてはクラストップレベルを実現しています。なかなか目には見えないと思うんですけど(笑)。
乗る人すべてが居心地のよさに包まれるインテリア
ーー「MAZDA CX-30」のインテリアで、いちばんこだわったのはどんなところですか?
狩野さん:ダッシュボードのインパネの部分に色がついているんですね。リッチブラウン(茶色)とネイビーブルー(紺色)の2色です。したがって、「MAZDA CX-30」には、真っ黒なインテリアは存在しません。
そして、リッチブラウンのインパネに対して、シートの素材が白い革と黒い革の2色から選ぶことができます。黒い革は、パーフォレーションと呼ばれる小さな穴開け加工がされているのですが、穴の中だけが茶色になっていて、少し色味が感じられる黒になっているんです。それがインパネのリッチブラウンとマッチして、全体的に調和が感じられる大人っぽい空間になってます。
一方のネイビーブルーのインパネに対しては、布のシートを選ぶことができます。ブラックとグレージュという2つの布の色があり、特にグレージュとのコーディネーションをおすすめしています。そちらは、もう少しクールでモダンな雰囲気を感じていただけると思ってます。
ボディカラーも8色ありますので、それぞれのボディカラーに対して、どの組み合わせでもマッチするようなインテリアのカラーを厳選しておりますので、かなり豊富な選択肢があると思います。それぞれの好みやライフスタイルに合わせて、お選びいただけるのではないでしょうか。
ーーネイビーブルーってあまり選択できなかったカラーだと思うんですけど、そこに挑戦されたというか、今回採用された思いだとかありますか?
狩野さん:そうですね、ありきたりな真っ黒なインテリアを避ける方もいまして、ちょっと他人とは違ったものを選びたいというところで、少し上質さもあり、モダンさもあるネイビーを採用してみました。
ーー今回のインテリアを決める上で、多くの女性の意見というか、感性を取り入れているのでしょうか?
柳澤さん:今回は、特に女性に振ったわけではないんですけど、男女問わずユニセックスで、どなたにも選んでいただきやすい商品を目指してデザインしています。あとインテリアのこだわりの部分なのですが、「MAZDA CX-30」は弊社の「MAZDA3」とか「MAZDA ROADSTER」のような、いわゆる“人馬一体”を全面に押し出したドライバーズカーとは少し違い、乗員全員のお客様が対等にドライブを楽しんでもらえるクルマにしたいと思っています。
例えば、助手席に座っている方、後ろに座っているお客様など、すべての方が人とクルマの一体感を感じていただけるような。先ほど話に出たダッシュボードの茶色のインパネアッパーがあり、これをウイングと呼んでますが、フードがドアトリムまで巻き込んだカタチで、助手席に座っているお客様も一緒に包み込むような空間づくりをこだわっています。ですので、非常にゆったりとくつろいでいただけるような、そんなインテリアになっています。
「MAZDA CX-30」は、運転したくなるクルマ
ーー最後に答えづらい質問かもしれませんが、チーフデザイナーとして、「MAZDA CX-30」の最も美しい角度というか、どこから見るのが美しいとかありますか?
柳澤さん:本当は、どの角度から見ても…って言いたいところなんですが、1か所どこか選べと言われたら後ろ姿が特徴的かなって思ってます。真後ろから見ていただくと、キャビンからリアフェンダーがグッと張り出したような、非常にワイドに見える迫力のある造形となっています。
これが通常のSUVだとどうしても四角い箱に見えがちなところを、マツダならではのスポーティな表現に加え、ちょっとくびれの造形というのを入れてますので、非常に妖艶で美しい、そしてワイド感のあるリアエンドとなっています。個人的には後ろがいちばん好きですね。サイドビューもきれいなんですけど…。やっぱり、すべて自信作でございます(笑)。
ーー確かに、リアもサイドもいいですが、フロントの彫りの深い顔立ちもいいですよね。それにしても、デザインが魅力的なクルマって、運転したくなりますよね。ぜひ、試乗させて下さい!
関連情報
https://www.mazda.co.jp/cars/cx-30/
取材・文・撮影/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
クルマは走らせてナンボ!をモットーに、どんな仕事にも愛車で駆けまわる日々。クルマのほかにもグルメやファッション情報、また小学館Men’s Beautyでは、男性に向けた美容・健康法、化粧品情報なども発信。