シート/エコノミークラス編
上級クラスよりも大きな得点差がついたエコノミークラス。賢者たちが採点において重視したのは長時間フライトでも〝疲れない〟シート、そして〝飽きさせない〟エンターテインメントシステムだ。身近な存在であるエコノミークラスにおいて、上位に選ばれたエアラインがシート開発に込めたこだわりを解明したい。
本誌エアライン ランキング算出方法
4賢者の持ち点はそれぞれ25点とし、最高得点は100点とする。なお、各氏とも最低5社は点数化するものとする(一部は4社)。
【シートは以下のエアラインが対象】
JAL、ANA、シンガポール航空、キャセイパシフィック航空、ユナイテッド航空、デルタ航空、ルフトハンザドイツ航空、エールフランス航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、エミレーツ航空、カタール航空、ニュージーランド航空
[航空事情に詳しい賢者4人]
航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師 鳥海高太朗さん
航空写真家 Charlie FURUSHOさん
航空ジャーナリスト・『機内食ドットコム主宰』 Rikiyaさん
トラベルジャーナリスト 橋賀秀紀さん
1位 JAL
圧倒的なアドバンテージを誇るシートスペース
欧米や東南アジア路線に導入される現行型シート「SKY WIDER」のシートピッチは84~86cm。数値的にはクラス標準よりやや広い程度だが、座席のスリム化により十分な足元スペースを実現。さらに、787では横9席配置が一般的になりつつあるが、横8列とすることで、シート幅にもゆとりがある。長時間フライトではこの違いが決定的な差になる、と賢者全員が口を揃える。
膝まわりや足首まわりなど、前席背面の形状にも工夫があり数値以上のゆとりがある。大柄でなければ、足を組むことも可能だ。
〈Rikiya’s EYE〉足を組んだり、姿勢を変えられるのはありがたいですね。クッションも良好です。
〈鳥海’s EYE〉広さも十分ですし、座り心地もよいので、長距離フライトでも疲れません。
2位 シンガポール航空
トータルバランスで勝負するアジアの雄
サービスレベルに定評のあるエアラインらしく、シート、エンターテインメントともに高評価。シートピッチはクラス標準だが、最新仕様ではフットレストを廃止することで足元のスペースを確保、シートバックのクッションを改善することで快適な座り心地を実現した。個人用モニターは11.1インチだが、映画をはじめ1800以上のプログラムを用意するなど機内エンタメが充実。
フライト中の楽しみである映画は邦画も数多くラインアップ。日本語吹き替えや日本語字幕版も充実している。
〈鳥海’s EYE〉近年、やや詰め込み感のある座席配置が多い中で、シンガポール航空のシートはつくりがゆったりしていて、くつろげます。
3位 ANA
薄型軽量シートで足元広々
早くからスペース効率に優れる薄型軽量シートの採用を行なってきたANA。直近では787-10、777-300ER、A380に最新仕様の薄型シートが搭載されている。これらのシートは座席間隔86cmで、クラス最大となる13.3インチパーソナルモニターや6方向に調整可能なヘッドレストを装着。また、A380にはレッグレストを上げることで、ベッドのように利用できるカウチシートも設定されている。
柄が織り込まれたファブリックによりカジュアルな雰囲気を演出。最前列以外はフットレストが備わる。
〈橋賀’s EYE〉エコノミーはスペースが狭くなる傾向ですが、装備は日々進化しているので長時間フライトでも気になりません。
取材・文/村田尚之