食材を扱う場所であるため、キッチンやダイニングはいつでも清潔にしておきたいところだ。
しかし、花王株式会社により「住まいのどこにどのくらいの数の菌が付着しているか」を追究すべく行われた一般の90家庭を対象にした拭き取り検査によると、キッチン・ダイニングはトイレ床と同等レベル、もしくはそれ以上の菌汚染状態であること、また、食卓用台ふきんは、キッチン排水口とほぼ同じレベルで菌数が多いことが確認された。
さらに、冷蔵庫の野菜室とキッチン排水口からは、食中毒原因菌を含むことで衛生指標とされる菌群(腸内細菌科)が他の場所と比べて多く検出された。
以下では、同調査の詳細及び、住まいの菌実態に関するアンケート調査の結果を紹介していく。
菌意識の高さと除菌実態にギャップ
近年、生活者の衛生意識は高まっており、20~60代既婚女性を対象に調査が行われたところ、「住まいの菌が気になる」と89%の方が回答し、10年前に比べ1.5倍に増加していた、(2018年7月花王調べ)
「家の中で菌が気になる場所」として、まな板やキッチンの調理台といった食品を扱う場所は約7割、トイレは約6割の人が挙げており、家の中の広範囲にわたっていた。
特に、小さい子ども(未就学児)がいる家庭では、多くの箇所において、より菌意識が高い傾向がみられる。とりわけ、食卓、ダイニング床など、小さい子どもの手が触れる場所については、調査対象者全体と比べて約 10%も高い結果となった。
さらに、それぞれの場所を除菌しているかどうかを確認する調査が行われたところ、菌が気になっている割合と実際に除菌している割合の差が大きいところが多くみられた(図1)。
「除菌していない理由」としては、「菌を気にしてもキリがない」「面倒」の他に、「やり方がわからない」「どんな洗剤が有効かわからない」といった声も挙げられた(表1)
菌数・菌叢解析からみる菌汚染実態 ~住まいの菌実態調査~
家庭内のどこにどのくらいの数の菌が付着しているかを調べるため、拭き取り検査が実施された。
その結果、キッチンスポンジ(掃除用)はほとんどの家庭で菌数が多く、台ふきんはキッチンの排水口とほぼ同レベル、調理台や食卓、ダイニングの床は、トイレの床と同レベルの菌汚染状態であることが確認された。
また、キッチンの排水口だけでなく、約3~7℃に保たれている冷蔵庫の野菜室からも、食中毒原因菌を含むことで衛生指標菌とされる菌群(腸内細菌科)が他の場所に比べて多く検出された(図2)。
野菜室の菌の種類が詳細に解析されたところ、腸内細菌科は、土壌や植物に生息することが知られる菌種と一緒に検出される傾向が見られ、このことから、腸内細菌科は土に由来する可能性が考えられた。
除菌のコツ:除菌表示のある製品で、まんべんなく拭く
住まいの菌実態調査をもとに、菌数が少ない家庭、多い家庭について、普段、除菌のためにどのようなお手入れをしているのか調査が行われた。その結果、除菌行動に異なる傾向がみられた。
食卓のお手入れについては、「除菌したい」という意識は共通だが、菌数が少ない家庭は、除菌表示のあるスプレーや使い捨てシートを使用している家庭が多く、拭き方も全体をしっかり拭き掃除しているのに対し、菌数が多い家庭では、台ふきんで水拭きをしている家庭が多く、アルコールスプレーを使っていても拭き方にムラがあるなどの違いがみられた。
除菌のコツは、除菌表示のある製品を選び、拭き残しがないように手のひら全体を使い、まんべんなく拭くことだといえる。
また、食材や手を介して菌が口に入る可能性のある場所である、食卓や調理台、衛生指標菌が高頻度で検出された冷蔵庫の野菜室は、意識して除菌する必要があると考えられる。
【調査概要】
・住まいの菌実態(菌数・菌叢)調査
調査期間:2017年6月、2018年9~10月
調査方法:アンケート調査と拭き取り検査
調査対象:首都圏・近畿圏在住の家庭
対象者数:2017年 46人、2018年 90人
検査場所:調理台、キッチン蛇口(付け根・取っ手)、シンク排水口ふち、冷蔵庫(取っ手・生ものエリア・野菜室)、台ふきん、キッチンスポンジ(掃除用)、食卓、ダイニングチェア、ダイニング床、ソファ、PC キーボード、スマートフォン、トイレ床、他
・掃除方法に関する調査
調査期間:2019年4~5月
調査方法:家庭訪問インタビュー
調査対象:2018年「住まいの菌実態調査」
対象家庭 対象者数:10人
出典元:花王株式会社
構成/こじへい