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未来の地球を救うスーパーフードに!今、世界で「昆虫食」が注目される理由

2019.09.29

秋はバッタの季節です。もちろん、食材としても超おすすめ。

「ゲテ食」から「未來食」に!? ここ数年で昆虫食が市民権をゲット

環境や需要の変化に伴い、いろいろな食べ物が増えてきた。健康志向の高まりから発生したジャンルでは、植物由来の原料を肉のように仕立てたという「代替肉」や、すっかり巷に定着した「糖質制限食品」などがある。環境問題から発生した新顔といえば、優れた栄養面に注目されている「昆虫」や「藻類」だろう。今回はこの中から、「昆虫食」にスポットをあてていきたい。

昆虫食はここ数年で、急激に市民権が高まってきた。日本では古くよりイナゴやハチノコなどが食べられてきたが、食の欧米化に伴い食卓に上る機会はどんどん減り、いつの間にか「ニッチな郷土食」扱いに……。虫が忌み嫌われる風潮がそれをさらに後押ししてか、「ゲテ食」「飢餓食(飢えない限り、虫なんて食わない!の意)」といった超ネガティブなイメージが根付くところまで、地に落ちてしまった。10年ほど前では、TV番組に昆虫食が登場した日には200%罰ゲーム扱い。しかも深夜枠(今でもそんな風潮は残っているが)。

ところが2013年に、世界的転換点が訪れた。そしてここ数年ですっかり「未來の地球を救うスーパーフード」とまで、もてはやされて始めているのだ。最近の個人的なビッグニュースは、渋谷の再開発に伴い今年11月に再オープンする渋谷PARCOに昆虫料理を扱う店が入ること。かつてはファッション文化の発信地だった渋谷PARCO。あれだけディスられてた昆虫食がスタイリッシュな空間で供されることになるとは、愛好家としてちょっと感無量。

さて、そこに至った背景や、現在の日本における昆虫食シーン、さらにそこから生まれるさまざまな疑問について。昆虫食のあれこれを、数本に分けてお届けしていきましょう。ところでそれを語る私は、一応昆虫食の書籍を上梓しているものの、学者でも研究者でもなくぶっちゃけただの雑文書きポジション(強いていうなら「愛好家」)? 専門的な見識からの解説というよりは、「昆虫食ってナニー?」というビギナーのための浅く広いネタであることを、あらかじめお伝えしておきます。「明日の役に立たない、マメ知識」程度のものですが、そこはよしなに。

国連の報告書で盛り上がった「昆虫食のススメ」

さて「昆虫食なう」を知るにあたって押さえておくべきことは、国連食糧農業機関(FAO)が2013年に出した報告書「食用昆虫~食料・飼料安全保障の将来展望」。昆虫食検定なるものがあったら、ココ、絶対に出るポイントですね。昆虫食をたしなむ人にとっては「耳タコ」な話しとなりますが、まずはここから始めて(もしくはおさらいして)いこう。

FAOが報告書を出して以降、日本で出版された昆虫食本の数々。新書やレシピ本、子供向けコミックスまでと幅色いラインナップだ。図々しく、拙著も並べさせていただいた。

遠くない未来である2030年、地球上の人口は90億人近くに達すると見込まれている(ちなみに現在は75億人越え)。それに起因する食糧不足を解決する可能性のある食材が、昆虫だというのが、報告書のメインテーマだ。今のままでは、動物性タンパク質が不足する。そこでこれまで先進国が注目してこなかった昆虫に、白羽の矢が立てられたのだ。実はそれまでも、FAOは伝統的昆虫食文化が素晴らしいことに注目してきたが(2010年の報告書「Edible forest insects Human bites back」)、2013年の報告書ではそこからさらに未来へ話を進め、これまで昆虫を食べてこなかった先進国もぜひ食べようではないか、というのだ。

その理由として、次のようなことが説明されている。

タイの露店で販売されている、昔ながらの昆虫食。コオロギやバンブーワームが山盛りだ。油で炒める調理法が主流。撮影/高松裕希

・世界では、2111種以上の昆虫が食用として消費されている(食用の実績!)。
・昆虫の多くは必須アミノ酸をバランスよく含む良質なタンパク質だけでなく、不飽和脂肪酸やカルシウム、鉄、亜鉛類も多く含まれている(栄養価はお墨付き)。
・これまで先進国が消費してきたタンパク質を支えてきたのは「家畜肉」。ところがそれらのゲップや糞から大量の「温室効果ガス」が発生し、地球温暖化を促進させている。その点昆虫は、比較的温室効果ガスが少ない(環境に優しい)。
・牛肉1キロに生産には8キロの飼料が必要だが、コオロギの場合は2キロでまかなえる(飼料変換率の高さ)。
・土地がなくても、採取や養殖ができる(食糧生産のための用地不足問題も解消)。

しかも偏見を捨てて食べてみれば、実は美味しい! というのもキモ。だいたいこんなポイントが、さまざまなメディアで盛んに伝えられてきた。昆虫食に特別な関心を持つ人でなくとも、耳にはさんだことがあるのでは?

虫が商機! と動き出した世界

そしてこの報告書の登場を受け、さまざまな動きが発生。2015年には昆虫食を専門に扱う学術誌がオランダで出版。2018年には欧州連合(EU)がNovel Food(新規食品)に昆虫のカテゴリーを追加。アジアとは異なり、虫を食べる文化がほとんどなかったヨーロッパ圏が虫を食べ物と認めたのは、結構なビッグニュースなんである。そしてそれを商機ととらえたスタートアップ企業が続々登場し、今世界的に勢いづいているのだ。とは言え、日本ではまだ昆虫食品(特に養殖昆虫)に関する法律や、安全基準などのガイドラインができていないのが少々残念なところ。昆虫食のセミナーやイベントが飛躍的増えたのですがね。

これが、今昆虫食が盛り上がりつつある背景だ。しかし昆虫食語るうえでの注意点は「虫さえ食べれば全てが解決!」とか、「虫は機能性も高いスーパーフード!」など単純にあおらないことである。多くの専門家からは、まだまだ山積みの様々な課題が指摘されているし、もともとアジア全域で根付いていた食文化をリセットしたかのように「新時代の食である!」と新しいやり方ばかりに目を向けると、それはそれで問題が生まれるであろうから。ぶっちゃけ昆虫食は地球を救う! とまでは言い切れないのが現状だろう。

今回はひとまず、こんな超基本的なお話まで。次回より「オリンピックと虫」や「自販機と虫」など、さまざまな切り口で昆虫食の話題をお届けしていきたいが、どれも「環境のために虫を食べるべきである」なんて活動家のようにふるまうつもりはないので、どうぞ気軽に読んでいただければと思います。

文/ムシモアゼルギリコ(フリーライター)

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