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0.17秒に1個売れている「チョコモナカジャンボ」がいつも〝パリパリ〟なワケ

2019.08.31

■阿部純子のトレンド探検隊

47年の歴史を持つロングセラー商品

1972年に誕生し、現在では0.17秒に1個売れている森永のロングセラー「チョコモナカジャンボ」 。年々増加する外国人観光客にも大人気で、「なぜこんなにパリパリしているのか」「食感に感動した」「母国で買うことはできないか」といった声が寄せられている。

「チョコモナカジャンボ」といえば、なんといってもパリパリの食感。和菓子をヒントにしたモナカアイスは日本ならではの商品だが、冷えたアイスクリームを包むため皮がしんなりとしてしまうのが難点。しかしチョコモナカジャンボはなぜあんなに皮がパリパリとしているのか。

パリパリの秘密のひとつは、時間経過によりアイスの水分がモナカに移行し吸湿されるのを防ぐ「チョココーティング技術」。チョコの膜でアイスからモナカへの水分移行を防ぎ、パリパリを持続する。

もうひとつが、アイス業界初の「鮮度管理の徹底」。経時変化による食感低下を最小限に抑えるため、作り置きをせず製造から5日程度で出荷。売上拡大のための大量受注はあえてNGとし、中間流通在庫を削減して売れた分だけ製造している。「チョコモナカジャンボ」のパリパリへの追求は47年の歴史の中で培われてきた。1972年、板チョコをイメージした形状のモナカの内側に、チョコスプレーをしてバニラアイスを詰めたチョコモナカジャンボの前身「チョコモナカ」を発売。

1980年にはセンターにチョコソースを入れて、モナカの山を8個から12個に増やした「チョコモナカデラックス」にリニューアル。1996年にはモナカのサイズを1.5倍の18山に、センターをチョコソースから板チョコ状のパキっとしたチョコに変更し「チョコモナカジャンボ」に改名。この時からパリパリへの追求が始まった。

パリパリの秘密を探るべく、チョコモナカジャンボ製造工場へ!

「チョコモナカジャンボ」を製造している神奈川県大和市の森永エンゼルデザートを訪れた。「チョコモナカジャンボ」は国内2か所で生産されているが、大和市の工場では全国で販売される3分の2量を生産。1日最大100万個ほど製造している。 案内していただいたのは森永エンゼルデザート製造部の藤井健也部長。藤井さんが入社したのは「チョコモナカジャンボ」としてリスタートした1996年より後だが、入社当時はまだ低迷が続いていたという。

「2000年に入ってから研究所と工場、営業を含めて何をしたら売れるかを考え、改良を進めた。パリパリ感を維持するチョコレートスプレーによるコーティング、さらに口どけの良いバニラアイスと同じ口どけの良さがあるチョコレートコーティングを開発して、中央の板チョコも食べたときにチョコだけが口に残らない味わいに設計。クリームの質を上げればグレードの高いバニラアイスになるが、モナカやチョコレートを引き立てるバニラアイスでなくてはいけないので、バニラだけに特化せず全体のバランスに気を遣っている。

こうした品質改良や塗布装置の改造、製造出荷5日の鮮度向上などで積み上げてきた結果、18年連続で前年よりも売上が伸びている」(藤井さん)

チョコモナカジャンボの秘密1・内側のチョココーティング

 今回は特別な許可を得て製造現場に入らせていただいた。工場内の温度は22℃。冬でも20℃ほどを維持しているとのことで、予想していたような冷凍庫のような温度ではなかった。

「チョコモナカジャンボ」の中身であるバニラクリームは約60%が水分。アイスの中にあるたった1gの水でもモナカを湿らせてしまうため、パリパリ感を出すにはクリームの水分をいかにモナカに移行させないかがキモになる。吸湿を防ぐために開発されたのが、モナカの内側にチョコスプレーをかける「チョココーティング」。チョコモナカジャンボのパリパリ感を維持するために、一番重要な工程になるという。

チョコスプレーは水分を移動させないように特別に配合されたもの。薄くモナカ全面に縁の部分にまでまんべんなくかけながら、側面からはみ出ないように調整している。機械の先端の部分に圧力をかけて拡散させる形でスプレーをしているが、季節、天候によってチョコの粘度に変化があるため、チョコの状態によって毎日、圧力や高さを変えるなど列ごとに調整してスプレーのかけ方を変化させている。

 次はチョコスプレーしたモナカの上にバニラクリームをのせる工程で2回に分けて充填する。まず下側半分のバニラクリームをのせたあと、センターチョコを上から垂らしていく。このチョコは固まりやすく設計されており、クリームの上にのせるとすぐに固まって板チョコ状に。

チョコモナカジャンボの秘密2・モナカの山までバニラアイスがびっしり

上側のバニラクリーム充填では、モナカの山部分までぎっしりと詰め込むため、クリームも山型にして充填する。下側のクリームも同様で、これによりどこで割ってもクリームがびっしりと入っている「チョコモナカジャンボ」になる。

「パリパリ感と共に、クリームがまんべんなく入っていることも満足感が得られるポイント。クリームを入れ過ぎるとはみ出してしまうし、少ないとモナカの中に空洞ができて、皮がパリパリになり過ぎ、包装や物流の過程でちょっとした衝撃でも割れてしまう。そのあたりを見極めた量を入れるのは作業者の技量にかかっている。この形になったのも20年近くやってきた成果による」(藤井さん)

 上下のモナカを合わせて機械で押して完成。まだこの段階ではソフトクリームほどのやわらかさなので、包装した後に1日冷凍庫で固める。

 機械の横では、手作業でモナカを補充している作業員の方が。ロボットで自動的に補充していると思ったので手作業だったのは驚いた。

「1列に50枚ほど補充しているが、和菓子のモナカとは違い、チョコモナカジャンボはサクサクになるような配合で焼いたものなのでモナカ自体が割れやすい。力を入れすぎると簡単に割れてしまうし、力を抜き過ぎるとバラバラと崩れてしまうので、補充するときの力加減が難しく会得するまで3週間ほどかかる。モナカはちょっとした振動でも割れてしまうので、大量生産する中でそこが一番気を遣う」(藤井さん)

チョコモナカジャンボの秘密3・割れを防ぐため製品に触れずに包装

2階にはバニラクリームやチョコレートの素材が保管されている冷蔵タンクが並ぶエリアと、1階で完成した製品を包装するラインがある。モナカ自体がサクサクなので機械で触れると崩れてしまうため、製品に触れないで包装する専用の機械を導入。固定して包装するのではなく、流れてくるモナカのスピードをセンサーで検知して、包装する機械が動いたり止まったりする。

これによりモナカ間のピッチが違って流れてきても、フィルムを包む装置と熱を加えてカットする装置が連動しながら、モナカの動きに合わせて調整できる。 エックス線で内部を検査する機械、金属を検知する機械、規格内の重量かどうかを測る装置もある。ふんわりとしたアイスクリームの食感を作るため、バニラクリームは空気を入れるので、空気の量度が変わることで重量に差が出てくるためだ。

これらの品質保証検査を経てから、人の手で箱詰めする。箱の中で動かないようにきっちり詰めるため、機械では力を加え過ぎてモナカを割ってしまう可能性もあるので、手作業で20個ずつ箱に詰めている。箱詰めされた製品は冷凍させて翌日に出荷、2~3日後には店頭に並ぶ。「本来アイスは消費期限がなく作り置きができる製品だが、チョコモナカジャンボは売れた分だけ製造して5日間分しか在庫を持たない。アイス工場としては類を見ない作り置きしない商品なので、天候によって工場の稼働がかなり左右される。今年は7月が雨続きで生産量を減らしていたが、急激に暑くなってフル生産に入ったため、そうしたオペレーションが実はとても苦労するところでもある。

チョコモナカジャンボに関しては、フレーバー展開はせずにチョコモナカ中心でやっている。バニラモナカを出したときも躊躇したくらいだった。フレーバーを増やすとメインが売れなくなるし、次々といろいろな味を出さなければいけないので、主力品はチョコモナカだと信じて売り続けている」(藤井さん)

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