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「東京モーターショー」はなぜ、こんなことになってしまったのか?

2019.08.27

東京ビッグサイトは日本を代表するモーターショーの会場としてふさわしいか?

 別にモーターショーに行かなくても必要な情報は手に入るし、実車を見たかったら、フェラーリ独自のイベントに参加すれば乗ることだってできてしまう。ボルボやフェラーリなどに限らず、自動車メーカーがモーターショーへの出展を取り止めることは珍しくはなくなった。トヨタをはじめとする日本の自動車メーカー各社も欧米のモーターショーからすでに撤退し初めているくらいだ。

 つまり、クルマの販売促進の手段としてのモーターショーの効力が全世界的に弱まってきたということは断言できるだろう。ユーザー側から見ても、かつて、モーターショーはふだんなかなか眼にしたり、触れることの難しいクルマにまとめて近寄れる唯一の場だった。

 しかし、東京モーターショーだけでなく中国のフェラーリに象徴されているように、見たいクルマがモーターショーに展示されなくなってしまっては足も向かない。前々回の東京モーターショーの一般公開日を見に行ったことがあった。数日前のプレスデーを取材していたが、会場が東京ビッグサイトに移ってからの一般公開日は初めてだったので、訪れてみたのだ。

 ビックリした。プレスデーと大違いだったからである。あまりの混雑で展示車に近寄ることもできないし、近寄れてもじっくりと眺めたり、ドアを開けて車内を覗くこともできない。入場料を取るなんて詐欺ではないか。

 幕張メッセの場合は、渡り廊下の上から全体の様子を俯瞰することができたが、それに較べると東京ビッグサイトは西館から東館へ、さらには小部屋から小部屋を移動するだけでダイナミック感に欠けていた。第一級のモーターショーというのは擬似的に世界のクルマを一望できるところに醍醐味があるのに、東京ビッグサイトにはそれがない。日本を代表するモーターショーの会場としてふさわしくないことは、筆者は当初より指摘してきた。
 それを差し引いても、現状のままでは東京モーターショーの凋落ぶりを抜本的に解決するのは難しいだろう。撤退した輸入車インポーターの担当者たちを取材してきたが、答えは皆、以下のように共通するものだった。

「出展料金が高く“あれはダメ。コレは禁止”といった規制が細かく、厳しい」

「欧米やアジア圏のモーターショーで可能な展示やブース設営などが不可能なことが多く、そのくせ料金だけは高い」

「規制が細かく厳しく、禁止事項が多い。その理由がまったく合理的でない」

「お役所体質の悪い見本そのもの。“規則は規則だから”と改善や見直しをまったく受け付けない」

 たしかに、海外のモーターショーの展示は華やかなだけでなく、新しい展示や表現にトライしているからこちらもワクワクしてくる。来場者の気持ちをいかにして掴み、満足させようと呻吟したであろうことが伝わってくる。新しい驚きの連続なのだ。悲しいかな、東京モーターショーではそれが非常に希薄だ。

 予定調和と思考停止。東京モーターショーの運営の多くを手掛けている大手広告代理店の人々と話したこともある。皆、マジメに取り組み、海外のモーターショーを視察したりして、真剣だった。しかし、来場者に楽しんでもらおうという意識は伝わってこなかった。黙っていても2年に一度必ずやって来る仕事をつつがなくこなすという姿勢しか感じられなかった。

 今年の東京モーターショーには間に合わないけれども、2021年(があるならば)は抜本的に改めて出直すべきだと思う。既存型のモーターショーが“オワコン”と化しつつあるのは世界の潮流なのだから、世の中の新しい動向を柔軟に取り込みながら違うメンバーで企画運営してみたらどうだろうか。“モーターショー”と称していなくても、新しいかたちのモーターショーとして成功を収めているイベントがすでに現れてきているのだから。

■関連情報
https://www.tokyo-motorshow.com/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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