目次
医療保険制度とは
日本には、病気やケガに備え、一定の保険料を納める『医療保険制度』があり、全ての国民の加入が義務付けられています。
医療保険の目的と役割
病院にかかったとき、レセプトや請求書に『2割負担』『3割負担』と記載されているのを目にしたことはないでしょうか?日本には『国民医療保険』という制度があります。
万が一の病気やケガに備え、一定の保険料を『医療保険者(市区町村・健康保険組合など)』に納めると、保険者から『保険証』が交付されます。
診察時に保険証を提示すると、保険者はかかった医療費の一部の支払いで済み、医療保険が残りの費用を負担してくれる仕組みが『国民医療保険(医療保険)』です。
医療保険は、国民に健やかで安定した生活を保障する社会保障の一つで、高額の医療費による貧困の予防や生活の安定を目的としています。
年金保険や介護保険も同様で、社会全体で費用を負担して一人一人の負担を減らすのが狙いです。
国民は無職でも健康保険への加入が必須
国民保険にはさまざまな種類があり、主に職業によって加入先が異なります。
例えば、サラリーマンが加入する保険は『被用者保険(協会けんぽ・組合健保・共済組合)』、公務員や私立学校教職員は『共済組合』、船員とその家族は『船員保険』、自営業者は市区町村が運営する『国民健康保険』などがあります。
では、被扶養者以外の無職者や雇用先が複数あるフリーターはどうなるのでしょうか?
日本では『国民皆保険』といって、全ての人が保険に加入する義務があります。フリーターや無職者は自営業者と同じ『国民健康保険』に加入しなければなりません。
健康保険と民間医療保険との違い
公的な医療保険(公的保険)のほかに『民間医療保険(民間保険)』に加入する人も増えています。民間保険は民間の営利または非営利団体によって運営されており、加入は『任意』です。
『加入条件および審査』がある点も公的保険との大きな違いでしょう。公的保険は収入などによって保険料が変わりますが、民間医療保険は内容(オプションや給付額)によって掛け金が決定されます。
窓口で保険料が軽減される公的保険に対し、民間保険は申請により保険金を受け取る仕組みです。
退職後の手続きを忘れずに
会社を退職し、自営業やフリーランスになる際は『被用者保険』から『国民健康保険』への切り替えが必要になります。退職後は手続きを忘れずに行いましょう。
自分で変更手続きが必要
退職後は、保険が自動的に切り替わるわけではないため、市町村などの窓口で自分で変更手続きを済ませる必要があります。
家族の扶養にならない場合は、退職前の会社の健康保険に入る『任意継続被保険者』か『国民健康保険』のどちらかへの加入となり、それぞれ手続き方法が異なります。
任意継続被保険者は加入期間が2年までなので、いずれは国民健康保険への切り替えが必要になるでしょう。
保険料は前年の所得で計算される
国民健康保険に加入した場合、保険料は『前年の所得』を基に計算されます。(所得割額)基準は市町村ごとに異なりますが、前年度にフルで働き、収入が多かった場合は、その分保険料も高くなる可能性があるでしょう。
例えば、会社を辞めてから、フリーランスに転身し、仕事が軌道に乗らない状態だと、保険料の負担が重くのしかかってくることになります。
国民健康保険料が高い理由
国民健康保険に切り替え後、保険料の多さに驚く人は少なくありません。なぜ、健康保険はこれほど高額になるのでしょうか?収入が激減し「保険料が払えないかも…」というときの対処法も覚えておきましょう。
企業の健康保険は会社が半額を負担している
企業に勤めるサラリーマンの場合、健康保険料は会社と本人が半分ずつ負担する労使折半です。毎月の給与から天引きされている額は、本来の保険料の半分の額ということになります。
会社を辞めて国民健康保険に切り替えると、保険料の全額を自分で負担しなければなりません。
退職後は、国民健康保険または、会社の保険に引き続き加入する『任意継続』が選べます。
任意継続は、保険料を会社に負担してもらえるわけではありませんが、国民健康保険よりも負担が軽くなるケースがあるため、内容を確認した方がよいでしょう。
所得のある人の負担が大きい構造
国民健康保険料の算出には、所得を基にした『所得割額』と、加入者全員が一定の金額を支払う『平均割額』、世帯あたりの国保加入者の人数に応じて均等に負担する『均等割』の三つの計算方法があります。
所得がない人の場合は『平均額割』と『均等割』の二つのみが用いられますが、所得のある人は、三つの課税方式が用いられるため、負担がより大きくなるでしょう。
「えっ、こんなに高いの?」定年後の支払いで慌てないために覚えておきたい国民健康保険の計算方法
保険料を抑える方法は?
前述した『所得割額』は、前年の所得金額に応じて負担する金額で、高所得者ほど負担が多くなります。前年度から収入が激減した場合、「保険料が高額すぎて支払えない」という事態も起こりかねません。
保険料を抑える方法としては以下の方法があります。
- 家族の健康保険の被扶養者になる
- 前の会社の健康保険の任意継続制度を利用する
もし、配偶者が会社勤務をしていれば、家族の被扶養者になって保険料を節約するのも一つの手です。被扶養者は無料で健康保険の給付が受けられます。(年収が130万円未満の場合)
会社勤めをしていて辞めた人は『任意継続制度』を利用することも可能です。保険料は勤務時の2倍ですが、任意継続保険料には、納める保険額の限度があるため、所得が高い人ほど納める保険料が安く済む可能性があるでしょう。
任意継続できる条件や期間があるため、退職後はできるだけ早く手続きの確認を行うのが賢明です。
保険料が払えない場合の手続き
「高い保険料を支払いたくない」といった理由は認められませんが、前年よりも所得が激減した場合や、災害や病気などで保険料が支払えない場合は、保険料の減免制度が利用できます。
まずは住んでいる自治体の窓口に相談
市町村が主体となる国民健康保険には、保険料の『減免制度』が設けられています。市町村の窓口で申請し、審査に通れば、保険料の一部または全額が免除されるというものです。
対象になるのは、失業・病気・災害・介護・出産などのやむを得ない事情により保険料が支払えなくなった人です。申請には、罹災証明書や預金通帳、家賃や公共料金の領収書などが必要で、申請すれば必ず減免されるとは限りません。
保険料の支払いに困難を感じたときは早めに相談して対策を立てるのがよいでしょう。なお、病気などで本人が手続きにいけない場合は、代理人を立てることも可能です。
納期限の7日前までに手続きが必要
国民健康保険の減免申請を受けるときは、減免を受ける健康保険料の納期限の7日前までに手続きをするか、納期限までに必要書類を添付して申請する必要があります。
減免されるのは申請した以降の保険料で、基本的には保険料をさかのぼって減免することができません。しかし、やむを得ない事情があったと自治体が認めた場合は、例外的に受理されることがあります。
申請期限やそのほかのルールについては自治体ごとによって違うため、必ず確認しましょう。
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文/編集部