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ボルボのステーションワゴン「V60 T6 ツインエンジン AWD インスクリプション」の完成度を検証

2019.08.17

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 ボルボのステーションワゴン「V60」に、2.0L、ターボ&スーパーチャージド4気筒エンジンとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド版「V60 T6 ツインエンジン AWD」が追加された。レザーシートをはじめとする豊富な装備を持つ「インスクリプション」で、都内および長野県中部の山間部を往復する500kmあまりを走ってみた。

機械として優れているか? ★★★★☆4.5(★5つが満点)

 プラグインハイブリッド車なので、エンジンとモーターを状況に応じて組み合わせたり、一方だけで走ったりする。電気の力で加速をアシストしたり、反対に減速時に回生ブレーキによって充電することができる。

 だいぶ見慣れたとはいえ、最近のボルボの「iPad」を縦に装備したようなセンターモニター画面レイアウトは依然として新鮮で、見やすい。このタイプのボルボに初めてだった同乗者はそれにも驚いたが、もっと驚いたのがセンターコンソールの高さだった。シフトレバーやパワートレインの始動スイッチ、コンソールボックスなどが連なる位置が高いと言うのである。

 僕は慣れてしまったが、言われてみると確かに高い。この部分にはバッテリーが収納されている。クルマの中心に縦方向にバッテリーが積まれているから、トランクの下や床に敷き詰める電動車とは違ってトランク容量や後席スペースを損なっていない。

 しかし、センターコンソールボックスの収容スペースは極薄だ。駐車中に外から見られたくないものを収納しておく、グローブボックス以外の場所がもうひとつ欲しいところだ。エンジンが前輪を、モーターが後輪を駆動する4輪駆動だが、前車軸と後車軸をつなぐプロペラシャフトは存在せず、そのスペースにバッテリーが収まっているというわけだ。この考え方は、他のボルボ各車にも共通している。

 走り始めると、エンジンとモーターが協調しながらタイヤを駆動しているのがよくわかる。特に、発進時のモーターによるスムーズかつ力強い加速が素晴らしい。アイドリングストップでエンジンが停止するクルマが増えている中、発進に最大トルクを発生するという特性を持ったモーターを使う快適性は無視できない。ハイブリッドのパワートレインの最大のメリットではないだろうか。筆者は、日頃、アイドリングストップからの再始動時にエンジンの振動と音が大きなクルマに乗っているのでありがた味を余計に強く感じる。

 このクルマには4つの走行モードが備わっていて、ふだんは「Hybrid」モードでエンジンとモーターを適宜組み合わせたり、モーターだけで走ったりする、効率を優先したモードだ。正面のメーターパネルの右側のパワーインジケーターにエンジンが回転しているのか、回生モードで充電しているのか、あるいはモーターだけで走れる範囲などが示される。同じ情報はセンターモニターでも表示させることができるが、こちらの方がわかりやすい。

「Pure」という「エコ運転」モードではモーターだけで走ることができる。バッテリーだけで48.2km走れる。実際に、早朝に住宅地の奥に住む知人を迎えに行く時に重宝した。大通りから住宅地に入る時にセンターコンソールのDRIVE MODEスイッチを回転させ、モニター画面に表示された。

 窓を閉めていると車内はもともと静かなのだけれども、Pureモードを選んだことによってエンジンが始動しなくなるので、静寂を掻き乱すエンジンの音を出さないで済む。そうっと知人と彼の荷物を載せ、Pureモードのまま大通りに戻る。このまま走り続けても、モーターだけでもスピードを125km/hまで上げることができるのだが、いつか電気が尽きてしまう。

 Hybridモードに戻し、一般道から高速道路に乗った。エンジンが始動してもメーター表示を見ないと体感しにくい。モーターによる加速力の増加分の境目もわかりにくい。つまり、モーターによるアシストはごく自然にしか感じられない。

 ただ、アクセルオフによる回生ブレーキが作動して充電している時の減速具合が一定に感じられず、これは慣れが必要だろう。Powerモードを選ぶと、エンジン回転数が増え、8速ATも同じギアを続けたがる傾向に変わる。

 高速道路ではPowerを選ばなくても、Hybridモードで十分に事足りた。静かで滑らかなモーターによるアシストとエンジンパワーのコンビネーションが見事で、これで不満に感じることはまずないだろう。

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