男性の大腸がん予防に「ヨーグルト」が有益?
健康に良い食品として知られるヨーグルトは、男性の大腸がん予防につながる可能性があるようだ。
米ハーバード大学医学大学院教授のAndrew Chan氏らが行った研究で、ヨーグルトを週に2サービング以上摂取する男性では、摂取しない男性に比べて大腸がんの前がん病変ができるリスクが26%低いことが明らかになった。
一方、女性ではこのような関連は認められなかったという。研究の詳細は「Gut」6月17日オンライン版に掲載された。
この研究は、米国の男性医療従事者を追跡した調査(HPFS)および女性看護師健康調査(NHS)の参加者を対象としたもの。
1986年から2012年の間に大腸内視鏡検査を受けた男性3万2,606人と女性5万5,743人を対象に、4年ごとに実施した食物摂取頻度調査票の結果からヨーグルトの摂取量を評価し、大腸腺腫(adenoma)形成との関連を調べた。
なお、「腺腫」は大腸ポリープの多くを占め、がん化しやすい大腸がんの前駆病変とされている。
研究期間中に男性では5,811人、女性では8,116人で大腸腺腫が発見された。解析の結果、ヨーグルトを週に2サービング以上食べた男性では、食べなかった男性に比べて、がん化する可能性が高いタイプの腺腫が形成されるリスクが26%低かった。
これらの関連は直腸よりも結腸で顕著であった。また、非腫瘍性のポリープが形成されるリスクに関しても、ヨーグルトを週に2サービング以上食べていた男性で19%低かった。一方で、女性では、これらの関連は認められないことも明らかになったという。
Chan氏らは、今回の研究結果から、ヨーグルトに含まれる「ラクトバチルス・ブルガリクス」「ストレプトコッカス・サーモフィルス」と呼ばれる乳酸菌が、がんの原因となる腸内の化学物質の低減に有益である可能性が示唆されたとしている。
また、ヨーグルトには腸内の酸化を抑える働きがあり、善玉菌が棲みつくのに適した環境を整えるほか、炎症を抑えることでがんリスクの低減につながる可能性が考えられるという。
この研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院で炎症性腸疾患(IBD)を専門とするArun Swaminath氏は「女性において、ヨーグルトの摂取と大腸腺腫の形成との関連が認められなかった理由は不明だ」と指摘。
また、生きたまま腸まで届き、腸内環境を整えるのに有益な微生物である「プロバイオティクス」を豊富に含むかどうかで効果に差が生じるか否かも明らかになっていないとしている。
ただ、今回の研究は、ヨーグルトを食べると大腸がんが予防できることを示したものではない。
Chan氏らは「この結果は別の集団で検証する必要があるほか、ヨーグルトが腸内細菌叢に与える影響のメカニズムについて、さらに研究を重ねていく必要がある」と述べている。
一方、Swaminath氏は「いずれにせよ、普段の食事にヨーグルトを取り入れることは簡単にできるはずだ」と述べ、「腸内細菌のバランスを整えるために、肉料理をヨーグルトに置き換えてもよい」と助言している。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://gut.bmj.com/content/early/2019/05/22/gutjnl-2019-318374
構成/DIME編集部