ダンス音楽フェスのストロボ光がてんかん発作の原因に
エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)フェスティバルの会場で、ある20歳の若者が初めててんかん発作を起こして意識を失った―。こんな症例はまれではないとする研究結果を、アムステルダム自由大学医療センター(オランダ)のNewel Salet氏らが「BMJ Open」6月11日オンライン版に発表した。
強いストロボライトを発する夜間のEDMフェスに参加した観客では、日中のフェスに参加した観客に比べて、ストロボの光が原因でてんかんを引き起こす危険性が3.5倍に上ることが分かったという。
Salet氏らは今回、2015年にオランダで開催された28のEDMフェスに参加した観客のデータを収集。
計40万343人の観客を、ストロボライトを使用した夜間のフェスに参加した24万1,543人と、ライトが使用されなかった日中のフェスに参加した15万8,800人に分けて、てんかん発作の頻度を比較した。
なお、意識消失や筋肉のけいれん、咬舌(舌を噛むこと)、尿失禁といった症状をてんかん発作の徴候と定義した。
フェス会場では、計2,776回の医療的な処置が行われていた。また、計39人がてんかん発作を起こし、うち30人は夜間のフェスに参加した観客だった。
分析の結果、夜間のフェスに参加した観客では、日中のフェスに参加した観客に比べて、てんかん発作リスクが3.5倍に上っていた。
この研究では、てんかん発作リスクの増大との関連が指摘される脱法ドラッグ「エクスタシー」の使用による影響も分析した。
しかし、てんかん発作を起こした症例では、夜間と日中のフェスの観客の間でエクスタシーを使用していた割合に差はみられず、発作を誘発する唯一の原因とは断定されなかったという。
Salet氏は「ストロボライトだけが原因でてんかん発作が誘発されたのか、睡眠不足や物質乱用などが関与したのかにかかわらず、特に夜間のEDMフェス会場では、相当数の観客がてんかん発作を起こしている可能性がある」と述べている。
ただし、今回の研究結果はこれらの関連を示したにすぎない。また、Salet氏は「今回確認されたてんかん発作の症例数は、実際よりも過小評価されている可能性がある」と指摘している。
強い光による刺激で誘発されるてんかんは、「光過敏性てんかん」と呼ばれる。Salet氏は、ストロボなどの強い光に反応しやすい体質の人は、EDMフェスへの参加は見合わせるべきだと呼び掛けている。
どうしても参加するなら、十分な睡眠を取り、薬物を摂取しないようにするほか、ステージ付近は避け、発作の前兆を感じたらすぐにその場を離れるようにと助言している。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://bmjopen.bmj.com/content/9/6/e023442
構成/編集部